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アンドレ・ジッド(21) その創作の特徴7

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今回でいつの間にかアンドレ・ジッド(1869~1951)紹介も20回目となりました。ジッドは30~40年前まではよく読まれた作家だったので、文学全集のジッド集や各社からの文庫版などネット通販では捨て値からプレミアまでさまざまに出回っています。ただし数が多いためバラで集めると送料が本体価を上回ってしまうので、ほぼ網羅的な選集では新潮社「新潮世界文学」のジッド1、2の28、29巻が計1400頁の大冊で解説・年譜も完備しており、古書価なら二冊合わせて1500~2000円程度で入手できます。初版刊行は昭和45年(1970年)ですが上製本で比較的最近まで版を重ねており、永く愛蔵に耐える本でしょう。

第15回でリストにまとめたジッドの創作全23編は、慶應義塾出版会から若林真氏の個人全訳で平成12年に刊行された「アンドレ・ジッド代表作選」に網羅されています。平成12年は2000年で、1951年の新潮社版全集(創作以外も網羅)と1957年の角川書店版選集以来まとまったジッド作品集は前記の「新潮世界文学」二巻本くらいで途絶えていましたから、この「代表作選」は大胆な企画でした。ただし全五巻セット分売不可で定価2万7千円、古書相場でもせいぜい千円引きでは、これはすでにジッドの愛読者のためか、または図書館向けの出版でしょう。若林氏訳は若々しく流麗で読みやすく、ほど良くオーソドックスで、これを各社が文庫新版に採用すればいいのに、と思います。

今年五月からは全五巻を予定して筑摩書房から「アンドレ・ジッド集成」が刊行され始めました。二宮正之氏全訳で、若林氏よりさらに若いフランス文学者による新たなジッド像が期待されますが、「代表作選」の五巻本より浩瀚な五巻が予定されるものの、散文創作はともかく戯曲、批評や自伝、エッセイ、ルポルタージュからは部分的な収録でしょう。それに同社は高価で刊行ペースも遅い難があります。

「新潮世界文学・ジッド」の収録作品は1.に『アンドレ・ワルテルの手記』『パリュード』『地の糧』『背徳者』『狭き門』『イザベル』『法王庁の抜穴』、2.に『田園交響楽』『一粒の麦もし死なずば』『贋金つかい』『女の学校』『ロベール』『未完の告白』となります。自伝『一粒の麦』は重要なので、創作外としてもこれと『コリドン』を落とした「代表作選」は十分とは言えないのです。

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