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Channel: 人生は野菜スープ(または毎晩午前0時更新の男)
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健康自慢(断章)

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と、いきなり血液検査結果報告書を並べてなにを言いたいかというと、就労不能な精神疾患で福祉のお世話になりながら三食自炊の自宅療養生活を続けている人間が、精神疾患や思考力・運動能力の低下はあるとしても、毎日勤勉に作文を書いているのと同様に、健康維持だけならどうにかなっているという不思議を喜びたいのだ。

統合失調症にせよ双極性障害にせよ脳の病気であって百人中数人の割合で罹患する。あとは程度の問題で、統合失調症の方はかなり明確に発症する(発症しても適切な治療で日常生活を送れる人も多い)が双極性障害はかなりややこしく、なんらかの心因性障害(たいがいは鬱病や強迫性障害)の兆候を起して通院を続けているうちに、突然躁鬱特有の症状が現れて、そこでようやく双極性障害と判明する場合が多い。

(ここで言明したいのは今でも世にはびこる精神疾患への偏見で、原因を人格や生活態度、信心に帰して非難する人が今日でも多い。実際には精神疾患は成人病と変りなく、糖尿や高血圧に高血脂、高尿酸や消化器系、整形・眼科・歯科系の疾病を人格や信心に結びつけるような人こそ人格に問題があるか、単に無知かつ無恥かだろう)…さて、

入退院を繰り返していた時期に、初めの頃はなんで入院患者は九割以上が統合失調症で、鬱病や双極性障害は残り一割にも満たないのか疑問だった。特に専門的ではない一般向けの精神医学書やパンフレットなどを読んでも統合失調症と双極性障害の罹患率はさほど開きはないはずなのに、入院率でははっきり差が生じているように見えた。
だがやがて事情が飲み込めてきた。双極性障害というのはごく短い期間発症し、それが治まれば次の発症までの潜伏期間(「寛解」と呼ばれる)が長い。一時の感情の荒れとして、患者本人も家族や友人・知人も病気と認識せずにいる潜在層が相当いると思われる。

武田泰淳の大長編「富士」は戦時下の精神病院を舞台にした戦後文学の傑作だが(埴谷雄高の「死霊」への対抗作と言われる)この小説の設定、戦時下では精神障害者が強制隔離されたのは史実なのかどうか、これまで接した精神医学分野に従事している方々に訊いても、明確な回答は得られなかった。隔離というよりは強制収容で、人権意識を前提とすれば唯事ではない。

今回は話を広げすぎて肝心な健康自慢にたどり着かなくなった。次回に続く。

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