「叛逆」は、とにかくとんでもない作品だった。正編「まどか」がつきつめて見事に完結させた物語世界をあっさり粉砕したばかりかそれに替るなにかを与えてくれるそぶりもなく観客を突き放してしまう内容で、正編同様説明的な会話やシーンはほとんどない。正編も最低二度は観ないと登場人物の言動の真意や映像表現の意味が「わからない」作品だったが、「叛逆」では正編視聴者に「わかる」と思わせておいてそれが次々と覆えされていく。部分部分の断片的な印象は強いのだが全体では忘れかけた悪夢のようにやりきれない不消化感がわだかまる。これほど評価が難しい作品はめったにないだろう。作品自体に破綻はなく、正編同様面白さは抜群と認めざるを得ないからだ。
コミカライズ版はアニメーション本編で視聴者には理解困難だった細部をきっちりと解き明かしてくれる。ただし単独に楽しめるかというと、少なくとも正編を観て「まどか」の世界観設定、登場人物たちの性格や能力を熟知していなければならないが、アニメーション新編、そのコミカライズも正編の内容の反復説明をあえて略したのは潔く、作品の密度を高めている。
だがアニメーションの難解さがコミカライズという静止画で細部こそ明瞭になったとはいえ(説明ではなく絵で「見せる」ことでは、このコミカライズは大成功している)、「叛逆」という作品の異形性もコミックスでもやはり解明されずに再現された結果になった印象が残る。