映画人としてのマルクス兄弟の現役期間は存在感の大きさの割には短く、'29年の『ココナッツ』から'33年の『吾輩はカモである』までのパラマウントでの5作、'35年の『オペラは踊る』から'41年の『マルクス兄弟デパート騒動』の5作、'46年の独立プロによるユナイテッド・アーティスツ配給のチーム解散引退作『マルクス捕物帖』の計11作で、準マルクス兄弟映画として'39年にRKOでヒット舞台劇(非マルクス兄弟作品)の映画化『ルーム・サーヴィス』に、ハーポ主演映画にグルーチョとチコがゲスト出演したカーテンコール的作品『ラヴ・ハッピー』が独立プロ製作、ユナイテッド・アーティスツ配給で'49年にあり、グルーチョは'47年から'52年に3作の単独主演作品がありますがその後はラジオ、テレビのパーソナリティに移りました。今回マルクス兄弟映画がどれほど近年でも親しまれているかを、目安のために全米映画協会(AFI)が毎年テーマ別に行っている映画ベスト100リストの2000年度実施の「アメリカ喜劇映画ベスト100」を記事末に付しましたが、喜劇映画ベスト100が名作映画ベスト100とはだいぶ基準が違うにしても、同列に並べるのは何ですが'60年代末から'80年代までのアルトマン、ボグダノヴィッチ、ウディ・アレン、メル・ブルックス、ザッカー兄弟&エイブラハム、ジョン・ランディスらどこか抑鬱的または極度に狂騒的、しばしばその両方であるような20世紀後期の喜劇映画は他の誰よりもマルクス兄弟直系であって、映画人としてはマルクス兄弟より偉大なチャップリン、ロイド、キートンは現代映画への影響力ではマルクス兄弟には段違いに及ばない、という驚くべきか、それともサイレントとトーキーの決定的断絶に原因を求めるべきか、だからといってトーキー以降でもマルクス兄弟ほど際立った存在はいないのです。またマルクス兄弟の映画は黒人、ユダヤ人、イタリアやアイルランド、東欧、ロシア、アラブ系移民にまでいたる少数民族系アメリカ人にも人気が高く、あのジョン・コルトレーンもマルクス兄弟の大ファンでマルクス兄弟映画の深夜放送のある晩はいつもはクラブで4~5時間演奏してくるのをテレビ放映の時間までに帰宅できるよう済ませて帰ったそうで、コルトレーンはハーポのハープ演奏のLPを愛聴し、再婚したピアニストの夫人をメンバーに迎えた時にハーポのLPを教本に夫人にハープ演奏を独学させています(コルトレーン歿後に未亡人アリス・コルトレーンのアルバムでハープ演奏が聴けます)。残酷で無慈悲な世界をおちょくりまくって生き延びていくマルクス兄弟の受難喜劇は多数派白人大衆を笑わせたばかりでなく少数民族系アメリカ人の胸にも響いたので、ユダヤ系移民一家出身のマルクス兄弟の映画に流れる酷薄な現実感と悪夢的感覚、激しい闘争心はやはりユダヤ系移民であるチャップリンがあえて抑制し、ロイドやキートンには本来的には稀薄なものでした。マルクス兄弟映画に反社会的感覚、差別的な要素が強いとしたらそれはマルクス兄弟たち自身が社会から受けていたものなので、パラマウント時代のマルクス兄弟映画の尖鋭性はそうした紙一重のものだったため、監督にレオ・マッケリーを得た一世一代の大傑作『吾輩はカモである』は無遠慮さがすぎて見事に興行的大失敗作になり、マルクス兄弟はパラマウントとの契約を打ち切られることになったのです。
●7月24日(火)
『御冗談でショ』Horse Feathers (監督ノーマン・Z・マクロード、パラマウント'32)*64min, B/W; 本国公開1932年8月19日; http://www.youtube.com/playlist?list=PLAF3B6275045B9F08
○あらすじ(DVDジャケット解説より) マルクス兄弟の大傑作学園コメディ。大学の総長に就任したグルーチョ博士はやりたい放題。グルーチョ総長の下に大まじめな顔をして教壇でルンバを踊り、指を鳴らし、ジャズを唄う博士達が続出した。ある時、息子ゼッポの頼みを聞き入れ、フットボールチームを作るが……。
本国アメリカ公開からわずか3か月後の昭和7年(1932年)11月に日本公開された本作は、例によって輸入試写段階でキネマ旬報の「近着外国映画紹介」に解説・あらすじが掲載されていますから、これもまた貴重な歴史的文献として今回もご紹介させていただきます。
[ 解説 ]「いんちき商売」「けだもの組合」と同じくマルクス・ブラザース一座の主演映画である。「けだもの組合」を原作脚色し「ココナッツ」を脚色したバート・カルマー及びハリー・ルビーが「いんちき商売」の原作脚色者S・J・ペレルマンと協力してストーリー及び脚本を書き下ろし、「青春来る」「いんちき商売」のノーマン・Z・マクロードがメガフォンを握り、「海賊」「恋愛即興詩」のレイ・ジューンが撮影した。助演者の顔ぶれは「いんちき商売」「その夜」のセルマ・トッド、「失われた抱擁」「ストリート・シーン」のデイヴィッド・ランドー等。
[ あらすじ ] グルーチョは大学の総長さまワグスタッフ教授でガウンと帽子を着用に及び、お歴々の先生達と共に教壇に現われる。所でこの総長の経歴といえば前の総長が休職に及んでグルーチョ博士歓迎の弁を述べるとタチマチそれを利用して彼自身がその後釜に座ってしまったまでの事。それ以来、この大学は新しいグルーチョ総長の下に大まじめな顔をして教壇でルンバを踊り、指を鳴らし、ジャズを唄う博士達が続出した。当年20歳の彼の息子ゼッポは一年生に入学早々、二人の女学生、コニー(セルマ・トッド)という美人の後家さん女学生とペギー(フロライン・マッキニー)とに恋されるがたちまちコニーのことでペギーと喧嘩別れしてしまう。ゼッポは父博士に、大学にはフットボール・チームがなければいけないと力説してバロヴェルリ(チコ・マルクス)のやっている酒場の職業選手を二人推薦するので彼等は早速選手と契約したが、酒場に出向いてそれが実はフットボーツのフの字も知らない犬殺しのピンキー(ハーポ・マルクス)と、酒の密売者のバロヴェルリなることを発見する。その間、敵は本場のすごい職業選手を手に入れた。さて、ハーポとチコはもちろん大学に入学したが、ここで授ける高尚な学問も、この二人にかかってはたちまち珍学問に変えられてしまう。その中にグルーチョ博士は、コニーがゼッポをだましていて本当はジェニングス(デイヴィッド・ランドー)という博奕打ちのデコボコ野郎と恋仲だという事を発見、おまけにこやつはコニーを通じてゼッポからフットボールのサインを盗んで敵方に売ろうとしていた事が判る。試合の当日、博士はハーポとチコに命じて敵の花形選手二人を奪ってしまおうとしたが肝心のハーポとチコがさらわれて一室に閉じ込められ、逃げ口を探している中に試合は始まり、辛うじて逃げ出して競技場に駆けつけた時には味方は散々に負かされてもはや終わりに近い。危うい所に駆けつけた二人はグルーチョ博士を先頭にあらゆる珍奇をつくしたファインプレイにより試合はゼッポのタッチダウンで味方の勝利となり同時にペギーの愛もかち得た。その夜、大学では大きな篝り火をたいて戦勝を祝ったがハーポはかがり火位では小さいと言って大学に火をつける。その時ジェニングスが大学の三階に残っていると報告されるとグルーチョ博士は葉巻をくわえて燃え上がる火焔の中に入る。がたちまち葉巻を持って引き返して来て「廊下で煙草は厳禁だ」、でまた火の中に入ってゆく。再び現われるとジェニングスの代わりにゼッポの卒業証書を持って来た。そしてジェニングスは焼死するかも知れないと云う。そしてまたゆっくりと煙草を喫い直したのである。
――キネマ旬報の紹介は間違いではありませんが、本当はこんなに中身が詰まったプロットではありません。いかれた学長が支配するいかれた大学でふざけまくったいんちきフットボール試合が行われ、何だかんだで大学が全焼してみんなが大喜びして終わる、というだけの話です。煎じつめると喜劇映画監督マクロードと皮肉の効いたユーモア作家のペレルマンが仕組んだ映画の中でマルクス兄弟が暴れまくるとこうなる、というのがこの作品で、本作はマクロードとペレルマンの監督・脚本コンビの前作『いんちき商売』と対になる作品です。アメリカ人の市民道徳では教育は尊いものであり、それにも増して協調性や社会的道徳性、組織的能力性を問われるのがスポーツで、『ロイドの人気者』'25はスポーツ弱者の大学生ロイドがスポーツ強者になってみせる点で望ましい市民的価値観に沿っており、『キートンの大学生』'27ではスポーツ弱者と思われた大学生キートンが恋人救出のためだけにはあらゆるスポーツに要求される運動能力を発揮する、という形でロイドが賞揚していたようなスポーツマンシップを裏返してみせたものでした。マルクス兄弟の本作では、もうスポーツというのはいかさまギャンブルと同様な愚者の馬鹿騒ぎでしかなく、そもそも大学というものの存在、大学スポーツ自体を世にも無価値な馬鹿馬鹿しいものとして描いています。当時のアメリカの大学進学率は第1次世界大戦後に急速に伸びて、'20年代には大学生活自体が自家用車の普及と並んで国民的習俗として定着しつつありましたが、それはあくまで中産階級層以上のアメリカ市民社会でのことであり、映画観客の大多数が大学など行ったこともなければ自家用車など持ってもいなかったのです。映画スターになったマルクス兄弟は運転手つき自家用車は手に入れたかもしれませんがそれは芸によって成り上がったので、ユダヤ系芸人一家出身のマルクス兄弟はまともに学校生活すら送ったことはなかったでしょうし、映画観客の大多数も個々の家庭の事情によって高等教育まで受けることができた方が稀だったはずです。10代半ばまでには喧嘩や泥棒をして育ち、10代後半からは日雇いも同様の労働条件で薄給に甘んじて小さな社会に生きるか、法すれすれであぶく銭をかせぎ時には入獄と出所をくり返しながら居住を転々とするか、マルクス兄弟の映画がアピールしたのはそういう映画観客たちにだったはずです。'20年代には勤勉さや意欲が状況を変えてくれる、とぎりぎりに夢見ることができたのが経済恐慌の起こった'29年、マルクス兄弟映画デビューの年には崩れていて、世界がでたらめでいんちきならばさらにその上手を行くぺてん師のグルーチョ、チコ、ハーポは現実に痛めつけられた人びとにとってはヒーローであり、偶像であっただろうことは想像に難くありません。本作をマルクス兄弟の映画として観ると、手練れの喜劇映画監督マクロードの監督作品としてよりも、皮肉な発送が持ち味とは言え洗練されたニューヨーク在住のインテリ作家ペレルマン(苗字はユダヤ系の出自を想像させますが)の脚本作品としてよりも、やはりこれはマルクス兄弟の映画で、そこが映画としての完成度のためマクロードの監督・ペレルマンの脚本によってマルクス兄弟の野卑なパワーがやや押さえこまれていた観のある前作『いんちき商売』より本作が勝ると思われる点です。ともあれマルクス兄弟舞台劇の直接の映画化だった『ココナッツ』『けだもの組合』から映画オリジナルの監督・脚本の力量で映画らしく充実した作品になり批評・興行成績とも好調に伸びたマルクス兄弟映画に、パラマウントは次作で抜群の腕前とセンスを誇る監督とパラマウントでのマルクス兄弟映画最大の製作予算をかけた作品に乗り出します。それが興行的惨敗と、後世には喜劇映画史上ベスト10入りの定番作品となる運命をもたらした次作『吾輩はカモである』になるのです。
●7月25日(水)
『我輩はカモである』Duck Soup (監督レオ・マッケリー、パラマウント'33)*68min, B/W; 本国公開1933年11月17日; https://www.youtube.com/playlist?list=PLwpkiM_llaC13T7ywYsp57sc-JK3PRadX
○あらすじ(DVDジャケット解説より) 財政難に苦しむフリードニア共和国は、ディスデル夫人から200万ドルの資金を調達するためにルーファス・T・ファイアフライを宰相に任命…。。架空の国を舞台に、政治家たちの権力争いと近代戦争の愚行をナンセンスなギャグの応酬で笑い飛ばし、『チャップリンの独裁者』(41)などの反戦コメディ映画のはしりとなったマルクス兄弟の最高傑作。
本作は、昭和9年(1934年)1月に日本公開に先立って、キネマ旬報の「近着外国映画紹介」で以下のように紹介されています。
[ 解説 ] 「御冗談でしョ」に次ぐマルクス4兄弟主演笑劇で、「けだもの組合」「御冗談でしョ」を共同で原作脚色し、なお後者を作詞作曲したバート・カルマーとハリー・ルビーがやはり共同で原作脚色作詞作曲にあたり、「カンターの闘牛師」「恋愛即興詩」のレオ・マッケリーが監督に任じ、「ビール万歳」「競馬天国」のヘンリィ・シャープが撮影した。助演は「ココナッツ」「けだもの組合」のマーガレット・デュモン、「南海の白影」「海魔」のラクェル・トレス、「夜ごと来る女」のルイス・カルハーン、エドガー・ケネディ等である。
[ あらすじ ] フリードニア共和国は財政難に陥りティズデイル夫人(マーガレット・デュモン)に2000万ドルの調達を依頼したが夫人はルーファス・ティー・ファイアフライ(グルーチョ・マルクス)が独裁者に任命されなくては貸すことができぬと断った。かくしてファイアフライが宰相に任命された。隣国シルヴェニアの大使トレンティノ(ルイス・カルハーン)はフリードニアを自国の手中に収めようと計画し、踊り子のヴィーラ(ラクウェル・トレス)にファイアフライの誘惑を頼むが、ファイアフライはティーズデイル夫人に思い召しあるので、誘惑に応じない。トレンティノはチコリニ(チコ・マルクス)とピンキイ(ハーポ・マルクス)の2人をスパイにしてファイアフライの行動を監視させていたが、チコリニはファイアフライから陸軍大臣に任命されてしまった。トレンティノは自分がティーズデイル夫人と結婚して、フリードニアの実権を握ろうとしたが、ファイアフライは彼を侮辱して戦争を誘発する。彼は戦争の計画書をティーズディル夫人に預ける。これを知ったヴィーラはチコリニとピンキイにそれを盗ませようと計る。2人はファイアフライに変装して夫人の邸に忍び込んだが、ビンキイが金庫と思ってラジオのダイアルを回したので、まんまと失敗した。ついに宣戦が布告された。ファイアフライは国民を激励して出征したが、夫人、チコリニ、ピンキイと共に敵軍に囲まれた。しかし彼らは巧みに敵将トレンティノを凹ませ、大勝利を得ることができた。
――というのが日本初公開時にキネマ旬報誌に掲載された解説・あらすじですが、実は本作は監督レオ・マッケリーの監督作として昨年の9月に感想文を書いています。以下転載します。「実物をご覧になるとあ然としますが、実はこのあらすじはほとんど意味をなしておらず、映画全編がストーリーともプロットとも関わりないマルクス兄弟のギャグの器になっているだけ、という大胆不敵も極まりない作品になっています。マルクス兄弟は1929年にパラマウントから『ココナッツ』でデビューし、年1作で『けだもの組合』『いんちき商売』『御冗談でショ』とヒット作が続き本作は5作目ですが(監督は毎作交替)、今回ばかりはあまりに破壊的な内容に興行的に失敗作となりパラマウントとの契約も打ち切られ、次作はMGMに移籍し1年おいたサム・ウッド監督の『オペラ座は踊る』になりました。1967年、オタワ映画保存協会(カナダ)による世界40か国の批評家アンケート投票の<映画史コメディ映画ベストテン>では1位『黄金狂時代』'25、2位『キートン将軍』'26、3位『オペラは踊る』'35、4位『ぼくの伯父さんの休暇』'52、5位(同点2作)『我輩はカモである』'33・『モダン・タイムス』'36、7位(同点2作)『ル・ミリオン』'31・『マダムと泥棒』'55、9位『イタリア麦の帽子』'27、10位『ロイドの要心無用』'23とマルクス兄弟作品では『我輩は~』『オペラは~』の2作の評価が群を抜いて高いものの作風は対照的で、サム・ウッドらしく整然として大味な『オペラ』に対して『カモ』は映画としてはほとんど破綻しており、ローレル&ハーディの破壊芸(マッケリー監督作ではありませんが、アカデミー賞短編コメディ賞受賞作『極楽ピアノ騒動』'32が代表的)が物理的破壊を見せる映画ならパラマウント時代のマルクス兄弟は映画そのものを破壊しているような映画でした。MGM移籍後のマルクス兄弟映画は窮地に陥った善男善女の主人公カップルをマルクス兄弟が助ける、という勧善懲悪コメディに路線変更させられますがMGM移籍後の5作と他社での単発契約作3作も人気が高く、テレビ普及後のアメリカでは深夜映画の定番だったそうで、マルクス兄弟映画の深夜放映がある晩はマルクス兄弟の大ファンのジョン・コルトレーンはクラブ出演を短縮してテレビを観るため帰宅した、というエピソードもあります。マルクス兄弟はユダヤ系移民のコメディアンでしたがユダヤ系の観客のみならず黒人、アイリッシュ、イタリアンなど少数民族系移民の観客に絶大な人気がありました。淀川長治氏は「あれは舞台劇」とマルクス兄弟映画を評価しませんでしたが舞台劇というのは的を射ていて、この兄弟チーム(実際の兄弟)は実はチャップリンやロイド、キートンたち'20年代のスターよりも年長で、チャップリンらが青年時代に舞台のコメディアンからサイレント期の映画外国に進出したのに対し、マルクス兄弟は舞台劇時代が長くトーキー化を迎えた映画界に40代になってデビューしたのです。最初の2作『ココナッツ』『けだもの組合』はマルクス兄弟の舞台劇のヒット作をそのまま映画セットで撮影したものでした。内容はありふれた社交界コメディにヒゲとメガネで皮肉な舌先三寸の詐欺師グルーチョ、陽気で間抜けな偽イタリア人ペテン師でピアノの名手チコ、何でも取り出せるコートを着た年齢不詳の唖者で敵味方の区別なく破壊の限りを尽くす予測不可能で好色なハープ名人の道化師ハーポ、端役で二枚目なだけのゼッポの4兄弟が、ゼッポ以外の3人の得意想妙なチームワークでドラマを滅茶苦茶にして終わるミュージカルとコメディとバーレスク(見世物)のごった煮です。第3作からは映画オリジナル脚本になり『いんちき商売』は豪華客船もの、『御冗談でショ』はフットボールもの(!)のマルクス兄弟流ぶち壊し映画でしたが、本作ではついに同年成立したばかりのナチス政権にヒントを得ていち早く架空のヨーロッパの独裁軍事国家をマルクス兄弟が茶化しまくる、『最後の億萬長者』'34(ルネ・クレール)、『チャップリンの独裁者』'40、『生きるべきか死ぬべきか』'42(エルンスト・ルビッチ)より早くてやばいファシズム喜劇の先鋒になりました。「キネマ旬報」の作品紹介は一応ストーリーはこの通りですが、見所はストーリーと全然関係なく乱れ撃ちされるグルーチョとチコとハーポの得意芸のギャグの連発にあります。グルーチョが独裁者でチコとハーポが何も考えていない二重スパイ、など冗談でもよくこんな企画が通ったな、と呆気にとられるしかなく、マルクス兄弟映画の常連上流階級マダム役マーガレット・デュモン、敵国大使役ルイス・カルハーン、街頭の屋台のピーナッツ売りを副業とするチコとハーポの宿敵のソーダ売り屋台のエドガー・ケネディなどキャストも最小限にして充実(フリードニア国の士官ゼッポは全然存在感なし。ゼッポは本作を最後に引退します)。そして(チャップリンの初期短編に先例はありますが)グルーチョに化けたチコとハーポがグルーチョと対決する寝室の鏡のシークエンス!『オペラは踊る』にも船の客室の一室に次々と人がすし詰めになる有名なシークエンスがありますが、アイディアは同等でも演出のセンスでマッケリーとウッドの腕前の差がはっきりとわかります。本作のような怪物的傑作はマッケリーにとっても空前絶後だったようで、興行的失敗もその一因だったでしょうがマルクス兄弟映画でも本作はパラマウント時代の秀作群からも隔絶していると言ってよく、こういう作品はマッケリーにとってもマルクス兄弟にとっても一期一会の奇跡だったということになりそうです。現行版68分(オリジナルからミュージカル・メドレーの黒人差別的なパートを2分カット)、たった68分に詰め込まれたギャグの密度だけでもほぼ同じ長さのチャップリンの『黄金狂時代』に匹敵し、見方によっては越え、サイレント喜劇の頂点が『黄金狂時代』ならトーキーでは『我輩はカモである』以外にはないでしょう。ほとんどマルクス兄弟とマッケリーの実力以上の傑作になっているとすら言えそうな作品です」。今回感想文を書き直してもほとんど同じことになりそうなのでいくつかの点をつけ足すにとどめますが、マルクス兄弟の他の作品と違って本作の監督マッケリーはギャグを含まないシーンは一切映画の中に入れませんでした。チコのピアノ、ハーポのハープ演奏シーンすら入らないマルクス兄弟映画は本作だけです。グルーチョが「War !」と開戦宣言すると怒涛のごとく出兵、陸海空軍の軍隊出撃の実写映像がモンタージュされ、アフリカ象やシマウマやキリンの暴走映像が続きます。谷岡ヤスジや山上たつひこが後にマンガで発想するようなこのモンタージュの映像ギャグを1933年の映画観客がどれだけ理解できたでしょうか。本作はマッケリー監督作品としても、他のマルクス兄弟映画とすら隔絶しています。作り手たちですらよくわからないうちに出来上がってしまった映画かもしれないのです。
*
付・全米映画協会(AFI)選・アメリカ喜劇映画ベスト100
1. お熱いのがお好き 1959 監督=ビリー・ワイルダー 主演=ジャック・レモン、トニー・カーティス、マリリン・モンロー
2. トッツィー 1982 監督=シドニー・ポラック 主演=ダスティン・ホフマン、ジェシカ・ラング
3. 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか 1964 監督=スタンリー・キューブリック 主演=ピーター・セラーズ、ジョージ・C・スコット
4. アニー・ホール 1977 監督=ウディ・アレン 主演=ウディ・アレン、ダイアン・キートン
5. 我輩はカモである 1933 監督=レオ・マッケリー 主演=マルクス兄弟
6. ブレージングサドル 1974 監督=メル・ブルックス 主演=クリーヴォン・リトル、ジーン・ワイルダー
7. M★A★S★H マッシュ 1970 監督=ロバート・アルトマン 主演=ドナルド・サザーランド
8. 或る夜の出来事 1934 監督=フランク・キャプラ 主演=クラーク・ゲーブル、クローデット・コルベール
9. 卒業 1967 監督=マイク・ニコルズ 主演=ダスティン・ホフマン、キャサリン・ロス、アン・バンクロフト
10. フライングハイ 1980 監督=ジェリー・ザッカー、ジム・エイブラハムズ、デヴィッド・ザッカー 主演=ロバート・ヘイズ、ジュリー・ハガティ、レスリー・ニールセン
11. プロデューサーズ 1968 監督=メル・ブルックス 主演=ゼロ・モステル、ジーン・ワイルダー
12. オペラは踊る 1935 監督=サム・ウッド 主演=マルクス兄弟
13. ヤング・フランケンシュタイン 1974 監督=メル・ブルックス 主演=ジーン・ワイルダー、ピーター・ボイル
14. 赤ちゃん教育 1938 監督=ハワード・ホークス 主演=キャサリン・ヘプバーン、ケーリー・グラント
15. フィラデルフィア物語 1940 監督=ジョージ・キューカー 主演=キャサリン・ヘプバーン、ケーリー・グラント、ジェームズ・ステュアート
16. 雨に唄えば 1952 監督=ジーン・ケリー 主演=ジーン・ケリー、ドナルド・オコナー、デビー・レイノルズ
17. おかしな二人 1968 監督=ジーン・サックス 主演=ジャック・レモン、ウォルター・マッソー
18. キートンの大列車追跡 1927 バスター・キートン、クライド・ブラックマン 主演=バスター・キートン
19. ヒズ・ガール・フライデー 1940 監督=ハワード・ホークス 主演=ケーリー・グラント、ロザリンド・ラッセル
20. アパートの鍵貸します 1960 監督=ビリー・ワイルダー 主演=ジャック・レモン、シャーリー・マクレーン
21. ワンダとダイヤと優しい奴ら 1988 監督=チャールズ・クライトン 主演=ジョン・クリーズ、ジェイミー・リー・カーティス、ケヴィン・クライン
22. アダム氏とマダム 1949 監督=ジョージ・キューカー 主演=スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘプバーン
23. 恋人たちの予感 1989 監督=ロブ・ライナー 主演=ビリー・クリスタル、メグ・ライアン
24. ボーン・イエスタデイ 1950 監督=ジョージ・キューカー 主演=ウィリアム・ホールデン、ジュディ・ホリデイ
25. 黄金狂時代 1925 監督=チャールズ・チャップリン 主演=チャールズ・チャップリン
26. チャンス 1979 監督=ハル・アシュビー 主演=ピーター・セラーズ、シャーリー・マクレーン
27. メリーに首ったけ 1998 監督=ファレリー兄弟 主演=ベン・スティラー、キャメロン・ディアス
28. ゴーストバスターズ 1984 監督=アイヴァン・ライトマン 主演=ビル・マーレイ、ダン・エイクロイド、ハロルド・ライミス
29. スパイナル・タップ 1984 監督=ロブ・ライナー 主演=クリストファー・ゲスト
30. 毒薬と老嬢 1944 監督=フランク・キャプラ 主演=ケーリー・グラント、ジョセフィン・ハル
31. 赤ちゃん泥棒 1987 監督=ジョエル・コーエン 主演=ニコラス・ケイジ、ホリー・ハンター
32. 影なき男 1934 監督=W・S・ヴァン・ダイク 主演=ウィリアム・パウエル、マーナ・ロイ
33. モダン・タイムス 1936 監督=チャールズ・チャップリン 主演=チャールズ・チャップリン
34. 恋はデジャ・ブ 1993 監督=ハロルド・ライミス 主演=ビル・マーレイ、アンディ・マクダウェル
35. ハーヴェイ 1950 監督=ヘンリー・コスター 主演=ジェームズ・ステュアート、ジョセフィン・ハル
36. アニマル・ハウス 1978 監督=ジョン・ランディス 主演=ジョン・ベルーシ
37. 独裁者 1940 監督=チャールズ・チャップリン 主演=チャールズ・チャップリン
38. 街の灯 1931 監督=チャールズ・チャップリン 主演=チャールズ・チャップリン
39. サリヴァンの旅 1941 監督=プレストン・スタージェス 主演=ジョエル・マクリー、ヴェロニカ・レイク
40. おかしなおかしなおかしな世界 1963 監督=スタンリー・クレイマー 主演=スペンサー・トレイシー、ミルトン・バール
41. 月の輝く夜に 1987 監督=ノーマン・ジュイソン 主演=シェール、ニコラス・ケイジ
42. ビッグ 1988 監督=ペニー・マーシャル 主演=トム・ハンクス
43. アメリカン・グラフィティ 1973 監督=ジョージ・ルーカス 主演=リチャード・ドレイファス
44. いとしの殿方 1936 監督=グレゴリー・ラ・カーヴァ 主演=ウィリアム・パウエル、キャロル・ロンバード
45. ハロルドとモード 少年は虹を渡る 1972 監督=ハル・アシュビー 主演=ルース・ゴードン
46. マンハッタン 1979 監督=ウディ・アレン 主演=ウディ・アレン、ダイアン・キートン、メリル・ストリープ
47. シャンプー 1975 監督=ハル・アシュビー 主演=ウォーレン・ベイティ、ジュリー・クリスティ
48. 暗闇でドッキリ 1964 監督=ブレイク・エドワーズ 主演=ピーター・セラーズ
49. 生きるべきか死ぬべきか 1942 監督=エルンスト・ルビッチ 主演=キャロル・ロンバード、ジャック・ベニー
50. キャット・バルー 1965 監督=エリオット・シルヴァースタイン 主演=ジェーン・フォンダ、リー・マーヴィン
51. 七年目の浮気 1955 監督=ビリー・ワイルダー 主演=マリリン・モンロー、トム・イーウェル
52. ニノチカ 1939 監督=エルンスト・ルビッチ 主演=グレタ・ガルボ、メルヴィン・ダグラス
53. ミスター・アーサー 1981 監督=スティーヴ・ゴードン 主演=ダドリー・ムーア、ライザ・ミネリ、ジョン・ギールグッド
54. モーガンズ・クリークの奇跡 1944 監督=プレストン・スタージェス 主演=エディ・ブラッケン、ベティ・ハットン
55. レディ・イヴ 1941 監督=プレストン・スタージェス 主演=バーバラ・スタンウィック、ヘンリー・フォンダ
56. 凸凹フランケンシュタインの巻 1948 監督=チャールズ・T・バートン 主演=バッド・アボット、ルウ・コステロ
57. ダイナー 1982 監督=バリー・レヴィンソン 主演=スティーヴ・グッテンバーグ、ミッキー・ローク、ケヴィン・ベーコン
58. かぼちゃ大当たり 1934 監督=ノーマン・Z・マクロード 主演=W・C・フィールズ
59. マルクス一番乗り 1937 監督=サム・ウッド 主演=マルクス兄弟
60. 天国漫歩 1937 監督=ノーマン・Z・マクロード 主演=ケーリー・グラント、コンスタンス・ベネット
61. おかしなおかしな大追跡 1972 監督=ピーター・ボグダノヴィッチ 主演=バーバラ・ストライザンド、ライアン・オニール
62. キートンの探偵学入門 1924 監督=バスター・キートン 主演=バスター・キートン
63. ビバリーヒルズ・コップ 1984 監督=マーティン・ブレスト 主演=エディ・マーフィ
64. ブロードキャスト・ニュース 1987 監督=ジェームズ・L・ブルックス 主演=ホリー・ハンター、ウィリアム・ハート
65. 御冗談でショ 1932 監督=ノーマン・Z・マクロード 主演=マルクス兄弟
66. 泥棒野郎 1969 監督=ウディ・アレン 主演=ウディ・アレン
67. ミセス・ダウト 1993 監督=クリス・コロンバス 主演=ロビン・ウィリアムズ、サリー・フィールド
68. 新婚道中記 1937 監督=レオ・マッケリー 主演=ケーリー・グラント、アイリーン・ダン
69. ウディ・アレンのバナナ 1971 監督=ウディ・アレン 主演=ウディ・アレン、ルイーズ・ラサー
70. オペラハット 1936 監督=フランク・キャプラ 主演=ケーリー・グラント、ジーン・アーサー
71. ボールズ・ボールズ 1980 監督=ハロルド・ライミス 主演=チェビー・チェイス、ビル・マーレイ
72. ウチの亭主と夢の宿 1948 監督=ヘンリー・C・ポッター 主演=ケーリー・グラント、マーナ・ロイ
73. いんちき商売 1931 監督=ノーマン・Z・マクロード 主演=マルクス兄弟
74. 9時から5時まで 1980 監督=コリン・ヒギンズ 主演=ジェーン・フォンダ、リリー・トムリン、ドリー・パートン
75. わたしは別よ 1933 監督=ローウェル・シャーマン 主演=ケーリー・グラント、メイ・ウエスト
76. ビクター/ビクトリア 1982 監督=ブレイク・エドワーズ 主演=ジュリー・アンドリュース、ジェームズ・ガーナー
77. パームビーチ・ストーリー 1942 監督=プレストン・スタージェス 主演=ジョエル・マクリー、クローデット・コルベール
78. モロッコへの道 1942 監督=デヴィッド・バトラー 主演=ボブ・ホープ、ビング・クロスビー、ドロシー・ラムーア
79. ロイドの人気者 1925 監督=サム・テイラー、フレッド・ニューメイヤー 主演=ハロルド・ロイド
80. スリーパー 1973 監督=ウディ・アレン 主演=ウディ・アレン、ダイアン・キートン
81. 海底王キートン 1924 監督=バスター・キートン、ドナルド・クリスプ 主演=バスター・キートン
82. プライベート・ベンジャミン 1980 監督=ハワード・ジーフ 主演=ゴールディ・ホーン、アイリーン・ブレナン
83. 花嫁の父 1950 監督=ヴィンセント・ミネリ 主演=スペンサー・トレイシー、ジョーン・ベネット、エリザベス・テイラー
84. ゴー!ゴー!アメリカ 我ら放浪族 1985 監督=アルバート・ブルックス 主演=アルバート・ブルックス、ジュリー・ハガティ
85. 晩餐八時 1933 監督=ジョージ・キューカー 主演=ジョン・バリモア
86. シティ・スリッカーズ 1991 監督=ロン・アンダーウッド 主演=ビリー・クリスタル、ブルーノ・カービー、ダニエル・スターン
87. 初体験/リッジモント・ハイ 1982 監督=エイミー・ヘッカーリング 主演=ショーン・ペン、ジェニファー・ジェイソン・リー、フィービー・ケイツ
88. ビートルジュース 1988 監督=ティム・バートン 主演=マイケル・キートン、アレック・ボールドウィン、ジーナ・デイヴィス
89. 天国から落ちた男 1979 監督=カール・ライナー 主演=スティーヴ・マーティン、バーナデット・ピーターズ
90. 女性No.1 1942 監督=ジョージ・スティーヴンス 主演=スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘプバーン
91. ふたり自身 1972 監督=エレイン・メイ 主演=チャールズ・グローディン、シビル・シェパード
92. 教授と美女 1941 監督=ハワード・ホークス 主演=ゲイリー・クーパー、バーバラ・スタンウィック
93. ファーゴ 1996 監督=ジョエル・コーエン 主演=フランシス・マクドーマンド
94. メイム叔母さん 1958 監督=モートン・ダコスタ 主演=ロザリンド・ラッセル
95. 大陸横断超特急 1976 監督=アーサー・ヒラー 主演=ジーン・ワイルダー、ジル・クレイバーグ
96. 極楽発展倶楽部 1933 監督=ウィリアム・A・サイター 主演=スタン・ローレル、オリヴァー・ハーディ
97. さよならゲーム 1988 監督=ロン・シェルトン 主演=ケヴィン・コスナー、スーザン・サランドン、ティム・ロビンス
98. ダニー・ケイの黒い狐 1956 監督=メルヴィン・フランク、ノーマン・パナマ 主演=ダニー・ケイ
99. 底抜け大学教授 1963 監督=ジェリー・ルイス 主演=ジェリー・ルイス、ステラ・スティーヴンス
100. グッドモーニング, ベトナム 1987 監督=バリー・レヴィンソン 主演=ロビン・ウィリアムズ、フォレスト・ウィテカー
●7月24日(火)
『御冗談でショ』Horse Feathers (監督ノーマン・Z・マクロード、パラマウント'32)*64min, B/W; 本国公開1932年8月19日; http://www.youtube.com/playlist?list=PLAF3B6275045B9F08
○あらすじ(DVDジャケット解説より) マルクス兄弟の大傑作学園コメディ。大学の総長に就任したグルーチョ博士はやりたい放題。グルーチョ総長の下に大まじめな顔をして教壇でルンバを踊り、指を鳴らし、ジャズを唄う博士達が続出した。ある時、息子ゼッポの頼みを聞き入れ、フットボールチームを作るが……。
本国アメリカ公開からわずか3か月後の昭和7年(1932年)11月に日本公開された本作は、例によって輸入試写段階でキネマ旬報の「近着外国映画紹介」に解説・あらすじが掲載されていますから、これもまた貴重な歴史的文献として今回もご紹介させていただきます。
[ 解説 ]「いんちき商売」「けだもの組合」と同じくマルクス・ブラザース一座の主演映画である。「けだもの組合」を原作脚色し「ココナッツ」を脚色したバート・カルマー及びハリー・ルビーが「いんちき商売」の原作脚色者S・J・ペレルマンと協力してストーリー及び脚本を書き下ろし、「青春来る」「いんちき商売」のノーマン・Z・マクロードがメガフォンを握り、「海賊」「恋愛即興詩」のレイ・ジューンが撮影した。助演者の顔ぶれは「いんちき商売」「その夜」のセルマ・トッド、「失われた抱擁」「ストリート・シーン」のデイヴィッド・ランドー等。
[ あらすじ ] グルーチョは大学の総長さまワグスタッフ教授でガウンと帽子を着用に及び、お歴々の先生達と共に教壇に現われる。所でこの総長の経歴といえば前の総長が休職に及んでグルーチョ博士歓迎の弁を述べるとタチマチそれを利用して彼自身がその後釜に座ってしまったまでの事。それ以来、この大学は新しいグルーチョ総長の下に大まじめな顔をして教壇でルンバを踊り、指を鳴らし、ジャズを唄う博士達が続出した。当年20歳の彼の息子ゼッポは一年生に入学早々、二人の女学生、コニー(セルマ・トッド)という美人の後家さん女学生とペギー(フロライン・マッキニー)とに恋されるがたちまちコニーのことでペギーと喧嘩別れしてしまう。ゼッポは父博士に、大学にはフットボール・チームがなければいけないと力説してバロヴェルリ(チコ・マルクス)のやっている酒場の職業選手を二人推薦するので彼等は早速選手と契約したが、酒場に出向いてそれが実はフットボーツのフの字も知らない犬殺しのピンキー(ハーポ・マルクス)と、酒の密売者のバロヴェルリなることを発見する。その間、敵は本場のすごい職業選手を手に入れた。さて、ハーポとチコはもちろん大学に入学したが、ここで授ける高尚な学問も、この二人にかかってはたちまち珍学問に変えられてしまう。その中にグルーチョ博士は、コニーがゼッポをだましていて本当はジェニングス(デイヴィッド・ランドー)という博奕打ちのデコボコ野郎と恋仲だという事を発見、おまけにこやつはコニーを通じてゼッポからフットボールのサインを盗んで敵方に売ろうとしていた事が判る。試合の当日、博士はハーポとチコに命じて敵の花形選手二人を奪ってしまおうとしたが肝心のハーポとチコがさらわれて一室に閉じ込められ、逃げ口を探している中に試合は始まり、辛うじて逃げ出して競技場に駆けつけた時には味方は散々に負かされてもはや終わりに近い。危うい所に駆けつけた二人はグルーチョ博士を先頭にあらゆる珍奇をつくしたファインプレイにより試合はゼッポのタッチダウンで味方の勝利となり同時にペギーの愛もかち得た。その夜、大学では大きな篝り火をたいて戦勝を祝ったがハーポはかがり火位では小さいと言って大学に火をつける。その時ジェニングスが大学の三階に残っていると報告されるとグルーチョ博士は葉巻をくわえて燃え上がる火焔の中に入る。がたちまち葉巻を持って引き返して来て「廊下で煙草は厳禁だ」、でまた火の中に入ってゆく。再び現われるとジェニングスの代わりにゼッポの卒業証書を持って来た。そしてジェニングスは焼死するかも知れないと云う。そしてまたゆっくりと煙草を喫い直したのである。
――キネマ旬報の紹介は間違いではありませんが、本当はこんなに中身が詰まったプロットではありません。いかれた学長が支配するいかれた大学でふざけまくったいんちきフットボール試合が行われ、何だかんだで大学が全焼してみんなが大喜びして終わる、というだけの話です。煎じつめると喜劇映画監督マクロードと皮肉の効いたユーモア作家のペレルマンが仕組んだ映画の中でマルクス兄弟が暴れまくるとこうなる、というのがこの作品で、本作はマクロードとペレルマンの監督・脚本コンビの前作『いんちき商売』と対になる作品です。アメリカ人の市民道徳では教育は尊いものであり、それにも増して協調性や社会的道徳性、組織的能力性を問われるのがスポーツで、『ロイドの人気者』'25はスポーツ弱者の大学生ロイドがスポーツ強者になってみせる点で望ましい市民的価値観に沿っており、『キートンの大学生』'27ではスポーツ弱者と思われた大学生キートンが恋人救出のためだけにはあらゆるスポーツに要求される運動能力を発揮する、という形でロイドが賞揚していたようなスポーツマンシップを裏返してみせたものでした。マルクス兄弟の本作では、もうスポーツというのはいかさまギャンブルと同様な愚者の馬鹿騒ぎでしかなく、そもそも大学というものの存在、大学スポーツ自体を世にも無価値な馬鹿馬鹿しいものとして描いています。当時のアメリカの大学進学率は第1次世界大戦後に急速に伸びて、'20年代には大学生活自体が自家用車の普及と並んで国民的習俗として定着しつつありましたが、それはあくまで中産階級層以上のアメリカ市民社会でのことであり、映画観客の大多数が大学など行ったこともなければ自家用車など持ってもいなかったのです。映画スターになったマルクス兄弟は運転手つき自家用車は手に入れたかもしれませんがそれは芸によって成り上がったので、ユダヤ系芸人一家出身のマルクス兄弟はまともに学校生活すら送ったことはなかったでしょうし、映画観客の大多数も個々の家庭の事情によって高等教育まで受けることができた方が稀だったはずです。10代半ばまでには喧嘩や泥棒をして育ち、10代後半からは日雇いも同様の労働条件で薄給に甘んじて小さな社会に生きるか、法すれすれであぶく銭をかせぎ時には入獄と出所をくり返しながら居住を転々とするか、マルクス兄弟の映画がアピールしたのはそういう映画観客たちにだったはずです。'20年代には勤勉さや意欲が状況を変えてくれる、とぎりぎりに夢見ることができたのが経済恐慌の起こった'29年、マルクス兄弟映画デビューの年には崩れていて、世界がでたらめでいんちきならばさらにその上手を行くぺてん師のグルーチョ、チコ、ハーポは現実に痛めつけられた人びとにとってはヒーローであり、偶像であっただろうことは想像に難くありません。本作をマルクス兄弟の映画として観ると、手練れの喜劇映画監督マクロードの監督作品としてよりも、皮肉な発送が持ち味とは言え洗練されたニューヨーク在住のインテリ作家ペレルマン(苗字はユダヤ系の出自を想像させますが)の脚本作品としてよりも、やはりこれはマルクス兄弟の映画で、そこが映画としての完成度のためマクロードの監督・ペレルマンの脚本によってマルクス兄弟の野卑なパワーがやや押さえこまれていた観のある前作『いんちき商売』より本作が勝ると思われる点です。ともあれマルクス兄弟舞台劇の直接の映画化だった『ココナッツ』『けだもの組合』から映画オリジナルの監督・脚本の力量で映画らしく充実した作品になり批評・興行成績とも好調に伸びたマルクス兄弟映画に、パラマウントは次作で抜群の腕前とセンスを誇る監督とパラマウントでのマルクス兄弟映画最大の製作予算をかけた作品に乗り出します。それが興行的惨敗と、後世には喜劇映画史上ベスト10入りの定番作品となる運命をもたらした次作『吾輩はカモである』になるのです。
●7月25日(水)
『我輩はカモである』Duck Soup (監督レオ・マッケリー、パラマウント'33)*68min, B/W; 本国公開1933年11月17日; https://www.youtube.com/playlist?list=PLwpkiM_llaC13T7ywYsp57sc-JK3PRadX
○あらすじ(DVDジャケット解説より) 財政難に苦しむフリードニア共和国は、ディスデル夫人から200万ドルの資金を調達するためにルーファス・T・ファイアフライを宰相に任命…。。架空の国を舞台に、政治家たちの権力争いと近代戦争の愚行をナンセンスなギャグの応酬で笑い飛ばし、『チャップリンの独裁者』(41)などの反戦コメディ映画のはしりとなったマルクス兄弟の最高傑作。
本作は、昭和9年(1934年)1月に日本公開に先立って、キネマ旬報の「近着外国映画紹介」で以下のように紹介されています。
[ 解説 ] 「御冗談でしョ」に次ぐマルクス4兄弟主演笑劇で、「けだもの組合」「御冗談でしョ」を共同で原作脚色し、なお後者を作詞作曲したバート・カルマーとハリー・ルビーがやはり共同で原作脚色作詞作曲にあたり、「カンターの闘牛師」「恋愛即興詩」のレオ・マッケリーが監督に任じ、「ビール万歳」「競馬天国」のヘンリィ・シャープが撮影した。助演は「ココナッツ」「けだもの組合」のマーガレット・デュモン、「南海の白影」「海魔」のラクェル・トレス、「夜ごと来る女」のルイス・カルハーン、エドガー・ケネディ等である。
[ あらすじ ] フリードニア共和国は財政難に陥りティズデイル夫人(マーガレット・デュモン)に2000万ドルの調達を依頼したが夫人はルーファス・ティー・ファイアフライ(グルーチョ・マルクス)が独裁者に任命されなくては貸すことができぬと断った。かくしてファイアフライが宰相に任命された。隣国シルヴェニアの大使トレンティノ(ルイス・カルハーン)はフリードニアを自国の手中に収めようと計画し、踊り子のヴィーラ(ラクウェル・トレス)にファイアフライの誘惑を頼むが、ファイアフライはティーズデイル夫人に思い召しあるので、誘惑に応じない。トレンティノはチコリニ(チコ・マルクス)とピンキイ(ハーポ・マルクス)の2人をスパイにしてファイアフライの行動を監視させていたが、チコリニはファイアフライから陸軍大臣に任命されてしまった。トレンティノは自分がティーズデイル夫人と結婚して、フリードニアの実権を握ろうとしたが、ファイアフライは彼を侮辱して戦争を誘発する。彼は戦争の計画書をティーズディル夫人に預ける。これを知ったヴィーラはチコリニとピンキイにそれを盗ませようと計る。2人はファイアフライに変装して夫人の邸に忍び込んだが、ビンキイが金庫と思ってラジオのダイアルを回したので、まんまと失敗した。ついに宣戦が布告された。ファイアフライは国民を激励して出征したが、夫人、チコリニ、ピンキイと共に敵軍に囲まれた。しかし彼らは巧みに敵将トレンティノを凹ませ、大勝利を得ることができた。
――というのが日本初公開時にキネマ旬報誌に掲載された解説・あらすじですが、実は本作は監督レオ・マッケリーの監督作として昨年の9月に感想文を書いています。以下転載します。「実物をご覧になるとあ然としますが、実はこのあらすじはほとんど意味をなしておらず、映画全編がストーリーともプロットとも関わりないマルクス兄弟のギャグの器になっているだけ、という大胆不敵も極まりない作品になっています。マルクス兄弟は1929年にパラマウントから『ココナッツ』でデビューし、年1作で『けだもの組合』『いんちき商売』『御冗談でショ』とヒット作が続き本作は5作目ですが(監督は毎作交替)、今回ばかりはあまりに破壊的な内容に興行的に失敗作となりパラマウントとの契約も打ち切られ、次作はMGMに移籍し1年おいたサム・ウッド監督の『オペラ座は踊る』になりました。1967年、オタワ映画保存協会(カナダ)による世界40か国の批評家アンケート投票の<映画史コメディ映画ベストテン>では1位『黄金狂時代』'25、2位『キートン将軍』'26、3位『オペラは踊る』'35、4位『ぼくの伯父さんの休暇』'52、5位(同点2作)『我輩はカモである』'33・『モダン・タイムス』'36、7位(同点2作)『ル・ミリオン』'31・『マダムと泥棒』'55、9位『イタリア麦の帽子』'27、10位『ロイドの要心無用』'23とマルクス兄弟作品では『我輩は~』『オペラは~』の2作の評価が群を抜いて高いものの作風は対照的で、サム・ウッドらしく整然として大味な『オペラ』に対して『カモ』は映画としてはほとんど破綻しており、ローレル&ハーディの破壊芸(マッケリー監督作ではありませんが、アカデミー賞短編コメディ賞受賞作『極楽ピアノ騒動』'32が代表的)が物理的破壊を見せる映画ならパラマウント時代のマルクス兄弟は映画そのものを破壊しているような映画でした。MGM移籍後のマルクス兄弟映画は窮地に陥った善男善女の主人公カップルをマルクス兄弟が助ける、という勧善懲悪コメディに路線変更させられますがMGM移籍後の5作と他社での単発契約作3作も人気が高く、テレビ普及後のアメリカでは深夜映画の定番だったそうで、マルクス兄弟映画の深夜放映がある晩はマルクス兄弟の大ファンのジョン・コルトレーンはクラブ出演を短縮してテレビを観るため帰宅した、というエピソードもあります。マルクス兄弟はユダヤ系移民のコメディアンでしたがユダヤ系の観客のみならず黒人、アイリッシュ、イタリアンなど少数民族系移民の観客に絶大な人気がありました。淀川長治氏は「あれは舞台劇」とマルクス兄弟映画を評価しませんでしたが舞台劇というのは的を射ていて、この兄弟チーム(実際の兄弟)は実はチャップリンやロイド、キートンたち'20年代のスターよりも年長で、チャップリンらが青年時代に舞台のコメディアンからサイレント期の映画外国に進出したのに対し、マルクス兄弟は舞台劇時代が長くトーキー化を迎えた映画界に40代になってデビューしたのです。最初の2作『ココナッツ』『けだもの組合』はマルクス兄弟の舞台劇のヒット作をそのまま映画セットで撮影したものでした。内容はありふれた社交界コメディにヒゲとメガネで皮肉な舌先三寸の詐欺師グルーチョ、陽気で間抜けな偽イタリア人ペテン師でピアノの名手チコ、何でも取り出せるコートを着た年齢不詳の唖者で敵味方の区別なく破壊の限りを尽くす予測不可能で好色なハープ名人の道化師ハーポ、端役で二枚目なだけのゼッポの4兄弟が、ゼッポ以外の3人の得意想妙なチームワークでドラマを滅茶苦茶にして終わるミュージカルとコメディとバーレスク(見世物)のごった煮です。第3作からは映画オリジナル脚本になり『いんちき商売』は豪華客船もの、『御冗談でショ』はフットボールもの(!)のマルクス兄弟流ぶち壊し映画でしたが、本作ではついに同年成立したばかりのナチス政権にヒントを得ていち早く架空のヨーロッパの独裁軍事国家をマルクス兄弟が茶化しまくる、『最後の億萬長者』'34(ルネ・クレール)、『チャップリンの独裁者』'40、『生きるべきか死ぬべきか』'42(エルンスト・ルビッチ)より早くてやばいファシズム喜劇の先鋒になりました。「キネマ旬報」の作品紹介は一応ストーリーはこの通りですが、見所はストーリーと全然関係なく乱れ撃ちされるグルーチョとチコとハーポの得意芸のギャグの連発にあります。グルーチョが独裁者でチコとハーポが何も考えていない二重スパイ、など冗談でもよくこんな企画が通ったな、と呆気にとられるしかなく、マルクス兄弟映画の常連上流階級マダム役マーガレット・デュモン、敵国大使役ルイス・カルハーン、街頭の屋台のピーナッツ売りを副業とするチコとハーポの宿敵のソーダ売り屋台のエドガー・ケネディなどキャストも最小限にして充実(フリードニア国の士官ゼッポは全然存在感なし。ゼッポは本作を最後に引退します)。そして(チャップリンの初期短編に先例はありますが)グルーチョに化けたチコとハーポがグルーチョと対決する寝室の鏡のシークエンス!『オペラは踊る』にも船の客室の一室に次々と人がすし詰めになる有名なシークエンスがありますが、アイディアは同等でも演出のセンスでマッケリーとウッドの腕前の差がはっきりとわかります。本作のような怪物的傑作はマッケリーにとっても空前絶後だったようで、興行的失敗もその一因だったでしょうがマルクス兄弟映画でも本作はパラマウント時代の秀作群からも隔絶していると言ってよく、こういう作品はマッケリーにとってもマルクス兄弟にとっても一期一会の奇跡だったということになりそうです。現行版68分(オリジナルからミュージカル・メドレーの黒人差別的なパートを2分カット)、たった68分に詰め込まれたギャグの密度だけでもほぼ同じ長さのチャップリンの『黄金狂時代』に匹敵し、見方によっては越え、サイレント喜劇の頂点が『黄金狂時代』ならトーキーでは『我輩はカモである』以外にはないでしょう。ほとんどマルクス兄弟とマッケリーの実力以上の傑作になっているとすら言えそうな作品です」。今回感想文を書き直してもほとんど同じことになりそうなのでいくつかの点をつけ足すにとどめますが、マルクス兄弟の他の作品と違って本作の監督マッケリーはギャグを含まないシーンは一切映画の中に入れませんでした。チコのピアノ、ハーポのハープ演奏シーンすら入らないマルクス兄弟映画は本作だけです。グルーチョが「War !」と開戦宣言すると怒涛のごとく出兵、陸海空軍の軍隊出撃の実写映像がモンタージュされ、アフリカ象やシマウマやキリンの暴走映像が続きます。谷岡ヤスジや山上たつひこが後にマンガで発想するようなこのモンタージュの映像ギャグを1933年の映画観客がどれだけ理解できたでしょうか。本作はマッケリー監督作品としても、他のマルクス兄弟映画とすら隔絶しています。作り手たちですらよくわからないうちに出来上がってしまった映画かもしれないのです。
*
付・全米映画協会(AFI)選・アメリカ喜劇映画ベスト100
1. お熱いのがお好き 1959 監督=ビリー・ワイルダー 主演=ジャック・レモン、トニー・カーティス、マリリン・モンロー
2. トッツィー 1982 監督=シドニー・ポラック 主演=ダスティン・ホフマン、ジェシカ・ラング
3. 博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか 1964 監督=スタンリー・キューブリック 主演=ピーター・セラーズ、ジョージ・C・スコット
4. アニー・ホール 1977 監督=ウディ・アレン 主演=ウディ・アレン、ダイアン・キートン
5. 我輩はカモである 1933 監督=レオ・マッケリー 主演=マルクス兄弟
6. ブレージングサドル 1974 監督=メル・ブルックス 主演=クリーヴォン・リトル、ジーン・ワイルダー
7. M★A★S★H マッシュ 1970 監督=ロバート・アルトマン 主演=ドナルド・サザーランド
8. 或る夜の出来事 1934 監督=フランク・キャプラ 主演=クラーク・ゲーブル、クローデット・コルベール
9. 卒業 1967 監督=マイク・ニコルズ 主演=ダスティン・ホフマン、キャサリン・ロス、アン・バンクロフト
10. フライングハイ 1980 監督=ジェリー・ザッカー、ジム・エイブラハムズ、デヴィッド・ザッカー 主演=ロバート・ヘイズ、ジュリー・ハガティ、レスリー・ニールセン
11. プロデューサーズ 1968 監督=メル・ブルックス 主演=ゼロ・モステル、ジーン・ワイルダー
12. オペラは踊る 1935 監督=サム・ウッド 主演=マルクス兄弟
13. ヤング・フランケンシュタイン 1974 監督=メル・ブルックス 主演=ジーン・ワイルダー、ピーター・ボイル
14. 赤ちゃん教育 1938 監督=ハワード・ホークス 主演=キャサリン・ヘプバーン、ケーリー・グラント
15. フィラデルフィア物語 1940 監督=ジョージ・キューカー 主演=キャサリン・ヘプバーン、ケーリー・グラント、ジェームズ・ステュアート
16. 雨に唄えば 1952 監督=ジーン・ケリー 主演=ジーン・ケリー、ドナルド・オコナー、デビー・レイノルズ
17. おかしな二人 1968 監督=ジーン・サックス 主演=ジャック・レモン、ウォルター・マッソー
18. キートンの大列車追跡 1927 バスター・キートン、クライド・ブラックマン 主演=バスター・キートン
19. ヒズ・ガール・フライデー 1940 監督=ハワード・ホークス 主演=ケーリー・グラント、ロザリンド・ラッセル
20. アパートの鍵貸します 1960 監督=ビリー・ワイルダー 主演=ジャック・レモン、シャーリー・マクレーン
21. ワンダとダイヤと優しい奴ら 1988 監督=チャールズ・クライトン 主演=ジョン・クリーズ、ジェイミー・リー・カーティス、ケヴィン・クライン
22. アダム氏とマダム 1949 監督=ジョージ・キューカー 主演=スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘプバーン
23. 恋人たちの予感 1989 監督=ロブ・ライナー 主演=ビリー・クリスタル、メグ・ライアン
24. ボーン・イエスタデイ 1950 監督=ジョージ・キューカー 主演=ウィリアム・ホールデン、ジュディ・ホリデイ
25. 黄金狂時代 1925 監督=チャールズ・チャップリン 主演=チャールズ・チャップリン
26. チャンス 1979 監督=ハル・アシュビー 主演=ピーター・セラーズ、シャーリー・マクレーン
27. メリーに首ったけ 1998 監督=ファレリー兄弟 主演=ベン・スティラー、キャメロン・ディアス
28. ゴーストバスターズ 1984 監督=アイヴァン・ライトマン 主演=ビル・マーレイ、ダン・エイクロイド、ハロルド・ライミス
29. スパイナル・タップ 1984 監督=ロブ・ライナー 主演=クリストファー・ゲスト
30. 毒薬と老嬢 1944 監督=フランク・キャプラ 主演=ケーリー・グラント、ジョセフィン・ハル
31. 赤ちゃん泥棒 1987 監督=ジョエル・コーエン 主演=ニコラス・ケイジ、ホリー・ハンター
32. 影なき男 1934 監督=W・S・ヴァン・ダイク 主演=ウィリアム・パウエル、マーナ・ロイ
33. モダン・タイムス 1936 監督=チャールズ・チャップリン 主演=チャールズ・チャップリン
34. 恋はデジャ・ブ 1993 監督=ハロルド・ライミス 主演=ビル・マーレイ、アンディ・マクダウェル
35. ハーヴェイ 1950 監督=ヘンリー・コスター 主演=ジェームズ・ステュアート、ジョセフィン・ハル
36. アニマル・ハウス 1978 監督=ジョン・ランディス 主演=ジョン・ベルーシ
37. 独裁者 1940 監督=チャールズ・チャップリン 主演=チャールズ・チャップリン
38. 街の灯 1931 監督=チャールズ・チャップリン 主演=チャールズ・チャップリン
39. サリヴァンの旅 1941 監督=プレストン・スタージェス 主演=ジョエル・マクリー、ヴェロニカ・レイク
40. おかしなおかしなおかしな世界 1963 監督=スタンリー・クレイマー 主演=スペンサー・トレイシー、ミルトン・バール
41. 月の輝く夜に 1987 監督=ノーマン・ジュイソン 主演=シェール、ニコラス・ケイジ
42. ビッグ 1988 監督=ペニー・マーシャル 主演=トム・ハンクス
43. アメリカン・グラフィティ 1973 監督=ジョージ・ルーカス 主演=リチャード・ドレイファス
44. いとしの殿方 1936 監督=グレゴリー・ラ・カーヴァ 主演=ウィリアム・パウエル、キャロル・ロンバード
45. ハロルドとモード 少年は虹を渡る 1972 監督=ハル・アシュビー 主演=ルース・ゴードン
46. マンハッタン 1979 監督=ウディ・アレン 主演=ウディ・アレン、ダイアン・キートン、メリル・ストリープ
47. シャンプー 1975 監督=ハル・アシュビー 主演=ウォーレン・ベイティ、ジュリー・クリスティ
48. 暗闇でドッキリ 1964 監督=ブレイク・エドワーズ 主演=ピーター・セラーズ
49. 生きるべきか死ぬべきか 1942 監督=エルンスト・ルビッチ 主演=キャロル・ロンバード、ジャック・ベニー
50. キャット・バルー 1965 監督=エリオット・シルヴァースタイン 主演=ジェーン・フォンダ、リー・マーヴィン
51. 七年目の浮気 1955 監督=ビリー・ワイルダー 主演=マリリン・モンロー、トム・イーウェル
52. ニノチカ 1939 監督=エルンスト・ルビッチ 主演=グレタ・ガルボ、メルヴィン・ダグラス
53. ミスター・アーサー 1981 監督=スティーヴ・ゴードン 主演=ダドリー・ムーア、ライザ・ミネリ、ジョン・ギールグッド
54. モーガンズ・クリークの奇跡 1944 監督=プレストン・スタージェス 主演=エディ・ブラッケン、ベティ・ハットン
55. レディ・イヴ 1941 監督=プレストン・スタージェス 主演=バーバラ・スタンウィック、ヘンリー・フォンダ
56. 凸凹フランケンシュタインの巻 1948 監督=チャールズ・T・バートン 主演=バッド・アボット、ルウ・コステロ
57. ダイナー 1982 監督=バリー・レヴィンソン 主演=スティーヴ・グッテンバーグ、ミッキー・ローク、ケヴィン・ベーコン
58. かぼちゃ大当たり 1934 監督=ノーマン・Z・マクロード 主演=W・C・フィールズ
59. マルクス一番乗り 1937 監督=サム・ウッド 主演=マルクス兄弟
60. 天国漫歩 1937 監督=ノーマン・Z・マクロード 主演=ケーリー・グラント、コンスタンス・ベネット
61. おかしなおかしな大追跡 1972 監督=ピーター・ボグダノヴィッチ 主演=バーバラ・ストライザンド、ライアン・オニール
62. キートンの探偵学入門 1924 監督=バスター・キートン 主演=バスター・キートン
63. ビバリーヒルズ・コップ 1984 監督=マーティン・ブレスト 主演=エディ・マーフィ
64. ブロードキャスト・ニュース 1987 監督=ジェームズ・L・ブルックス 主演=ホリー・ハンター、ウィリアム・ハート
65. 御冗談でショ 1932 監督=ノーマン・Z・マクロード 主演=マルクス兄弟
66. 泥棒野郎 1969 監督=ウディ・アレン 主演=ウディ・アレン
67. ミセス・ダウト 1993 監督=クリス・コロンバス 主演=ロビン・ウィリアムズ、サリー・フィールド
68. 新婚道中記 1937 監督=レオ・マッケリー 主演=ケーリー・グラント、アイリーン・ダン
69. ウディ・アレンのバナナ 1971 監督=ウディ・アレン 主演=ウディ・アレン、ルイーズ・ラサー
70. オペラハット 1936 監督=フランク・キャプラ 主演=ケーリー・グラント、ジーン・アーサー
71. ボールズ・ボールズ 1980 監督=ハロルド・ライミス 主演=チェビー・チェイス、ビル・マーレイ
72. ウチの亭主と夢の宿 1948 監督=ヘンリー・C・ポッター 主演=ケーリー・グラント、マーナ・ロイ
73. いんちき商売 1931 監督=ノーマン・Z・マクロード 主演=マルクス兄弟
74. 9時から5時まで 1980 監督=コリン・ヒギンズ 主演=ジェーン・フォンダ、リリー・トムリン、ドリー・パートン
75. わたしは別よ 1933 監督=ローウェル・シャーマン 主演=ケーリー・グラント、メイ・ウエスト
76. ビクター/ビクトリア 1982 監督=ブレイク・エドワーズ 主演=ジュリー・アンドリュース、ジェームズ・ガーナー
77. パームビーチ・ストーリー 1942 監督=プレストン・スタージェス 主演=ジョエル・マクリー、クローデット・コルベール
78. モロッコへの道 1942 監督=デヴィッド・バトラー 主演=ボブ・ホープ、ビング・クロスビー、ドロシー・ラムーア
79. ロイドの人気者 1925 監督=サム・テイラー、フレッド・ニューメイヤー 主演=ハロルド・ロイド
80. スリーパー 1973 監督=ウディ・アレン 主演=ウディ・アレン、ダイアン・キートン
81. 海底王キートン 1924 監督=バスター・キートン、ドナルド・クリスプ 主演=バスター・キートン
82. プライベート・ベンジャミン 1980 監督=ハワード・ジーフ 主演=ゴールディ・ホーン、アイリーン・ブレナン
83. 花嫁の父 1950 監督=ヴィンセント・ミネリ 主演=スペンサー・トレイシー、ジョーン・ベネット、エリザベス・テイラー
84. ゴー!ゴー!アメリカ 我ら放浪族 1985 監督=アルバート・ブルックス 主演=アルバート・ブルックス、ジュリー・ハガティ
85. 晩餐八時 1933 監督=ジョージ・キューカー 主演=ジョン・バリモア
86. シティ・スリッカーズ 1991 監督=ロン・アンダーウッド 主演=ビリー・クリスタル、ブルーノ・カービー、ダニエル・スターン
87. 初体験/リッジモント・ハイ 1982 監督=エイミー・ヘッカーリング 主演=ショーン・ペン、ジェニファー・ジェイソン・リー、フィービー・ケイツ
88. ビートルジュース 1988 監督=ティム・バートン 主演=マイケル・キートン、アレック・ボールドウィン、ジーナ・デイヴィス
89. 天国から落ちた男 1979 監督=カール・ライナー 主演=スティーヴ・マーティン、バーナデット・ピーターズ
90. 女性No.1 1942 監督=ジョージ・スティーヴンス 主演=スペンサー・トレイシー、キャサリン・ヘプバーン
91. ふたり自身 1972 監督=エレイン・メイ 主演=チャールズ・グローディン、シビル・シェパード
92. 教授と美女 1941 監督=ハワード・ホークス 主演=ゲイリー・クーパー、バーバラ・スタンウィック
93. ファーゴ 1996 監督=ジョエル・コーエン 主演=フランシス・マクドーマンド
94. メイム叔母さん 1958 監督=モートン・ダコスタ 主演=ロザリンド・ラッセル
95. 大陸横断超特急 1976 監督=アーサー・ヒラー 主演=ジーン・ワイルダー、ジル・クレイバーグ
96. 極楽発展倶楽部 1933 監督=ウィリアム・A・サイター 主演=スタン・ローレル、オリヴァー・ハーディ
97. さよならゲーム 1988 監督=ロン・シェルトン 主演=ケヴィン・コスナー、スーザン・サランドン、ティム・ロビンス
98. ダニー・ケイの黒い狐 1956 監督=メルヴィン・フランク、ノーマン・パナマ 主演=ダニー・ケイ
99. 底抜け大学教授 1963 監督=ジェリー・ルイス 主演=ジェリー・ルイス、ステラ・スティーヴンス
100. グッドモーニング, ベトナム 1987 監督=バリー・レヴィンソン 主演=ロビン・ウィリアムズ、フォレスト・ウィテカー