多言無用の名曲。1937年にリチャード・ロジャースとロレンツ・ハートにより作詞・作曲され、ミュージカル『ベイブス・イン・アームス』で発表されてチャーリー・パーカー(1955年没)もラテン・リズムでレパートリーにしていましたが、シナトラの名唱で決定的なスタンダード曲になりました。無数のヴァージョンがありますが、ここは奇を衒わずチェット・ベイカーがヴォーカルに専念したテイク、それに先立ちジェリー・マリガン・カルテットでトランペットを聴かせてくれるテイクを上げましょう。
そしてもちろんマイルス・デイヴィスの'50年代~'60年代に渡って重要なバラード・レパートリーでもあった曲です。ジョン・コルトレーンを含む'50年代クインテットのテイク(ただしこの曲ではコルトレーンは休み)、ハービー・ハンコックら若手メンバーに代わった'60年代クインテットのテイク(ライヴ盤とテレビ放映映像の2通り)上げます。シナトラ、チェット、マイルスを上げれば他はビル・エヴァンスとジム・ホールのピアノ&ギター・デュエット版くらいしか上げようがないではありませんか。
Recorded at Van Gelder Studio, Hackensack, October 26, 1956
[ Miles Davis Quintet]
Miles Davis - trumpet
John Coltrane - tenor saxophone
Red Garland - piano
Paul Chambers - bass
Philly Jo Jones - drums
Recorded live at the Philharmonic Hall of Lincoln Center, NYC, February 12, 1964
[ Miles Davis Quintet]
Miles Davis - trumpet
George Coleman - tenor saxophone
Herbie Hancock - piano
Ron Carter - bass
Tony Williams - drums
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Miles Davis Quintet - My Funny Valentine (Italian TV Broadcast) : https://youtu.be/QKEfyXPt91U - 12:02
Recorded live at Theatro dell'Arte, Milano, Italy, October 11, 1964
[ Miles Davis Quintet]
Miles Davis - trumpet
Wayne Shorter - tenor saxophone
Herbie Hancock - piano
Ron Carter - bass
Tony Williams - drums
この後は蛇足ながらご参考までに。チャーリー・パーカー(1920年8月生まれ)は1955年3月に心臓発作で急逝し、最晩年の'54年にはスタジオ録音は唯一『Charlie Parker Plays Cole Porter』(3月に4曲、12月に2曲録音)があるだけで人気も凋落、3人目の夫人とも別れて住所不定の生活を送り体調も悪く演奏も不調に陥ったまま世を去ります。辛うじて関係者が記録録音していたライヴ録音に2種類の「My Funny Valentine」があります。もっと早い時期にこれよりは調子の良いライヴ音源がありますが('53年6月ボストンなど)、ご紹介できるリンクは古くから知られるこの2種になります。弟子に当たるマイルス、チェットの素晴らしい演奏の後にこれを聴くのはあまりにつらいのですが、パーカーの残した演奏なら避けては通れません。一つはスタン・ケントン楽団のコンサートに客演した2月25日の録音、あと一つはそのちょうど7か月後、初期MJQからミルト・ジャクソンを除いたジョン・ルイス・トリオをバックにした、アドリブすら吹いていない9月25日の演奏です。後者は残されたほとんど最後のライヴ録音で、(ピアノがオフで聴きとれないのが輪をかけていますが)7か月間でもずいぶん調子を崩してしまったのがわかる演奏ですし、その上この後半年で不帰の人になってしまうのです。
Recorded live at Civic Auditorium, Portland, February 25, 1954
Recorded live at Carnegie Hall, New York City, September 25, 1954