Recorded at Town Hall, NYC, December 22, 1973
Released by ESP Records ESP 3033, 1993
All composed and arranged by Sun Ra.
(Tracklist)
1. Kohoutek Intro : http://youtu.be/Olcz2NaQrNw - 1:10
2. Astro Black : http://youtu.be/8JqGnV0Rtv8 - 1:50
3. Discipline 27 (Part 1) : http://youtu.be/7i3mXcNUxkY- 9:32
4. Enlightenment : http://youtu.be/m35GeoBLPG4 - 2:02
5. Unknown Kohoutek (Love In Outer Space) : http://youtu.be/vq29Kjg9tT0 - 7:16
6. Variations Of Kohoutek Themes : http://youtu.be/HqSC2U0RRME - 5:12
7. Discipline 27 (Part 2) : http://youtu.be/0otElfdsBwM - 3:03
8. Journey Through The Outer Darkness : http://youtu.be/2xDtxrVtKWk - 9:25
9. Outer Space E.M. (Emergency) : http://youtu.be/iE9YnAQDGJ4 - 7:48
10. Space Is The Place : http://youtu.be/THJopYdjr5w - 7:56
[ Sun Ra & His Arkestra ]
< possibly collective personnel >
Sun Ra - piano, space organ
Akh Tal Ebah - trumpet, flugelhorn, vocal
Kwame Hadi (Lamont McClamb) - trumpet
Marshall Allen, Danny Davis - alto saxophone, flute
John Gilmore - tenor saxophone, vocal
Danny Thompson - baritone saxophone, flute, vocal
Pat Patrick - baritone saxophone, electric bass, vocal
Eloe Omoe - bass clarinet, flute
Ronnie Boykins - bass
Lex Humphries, Clifford Jarvis - drums
Atakatun (Stanley Morgan), Odun (Russell Branch) - percussion
June Tyson, Ruth Wright, Cheryl Banks, Judith Holton - Space Ethnic Voices
本作はサン・ラ60年代の記念碑的アルバムになった『The Heliocentric Worlds of Sun Ra』1965、『Nothing Is』1966を制作・リリースしたインディー・レーベルのESPレコーズが録音してリリースを予定していながら、財政上の理由のためレーベルの活動休止(1974年)により未発売になっていたものです。ESPは'90年代に活動を再開、新作録音こそありませんがバックカタログ、未発表アルバムや編集前のオリジナル・ライヴ・テープがごっそりあり、ライセンス販売の形で世界各国のレーベルと提携してどしどし自社保有の音源をCD化していきました。2000年代にはサン・ラの『Nothing Is』ノーカット・未発表テイク増補版、『Vol.1』と『Vol.2』だけだった『The Heliocentric Worlds~』の『Vol.3』の発掘リリースがありますが、真っ先にESPがサン・ラの未発表音源から発掘リリースしたのはこの『Concert for the Comet Kohoutek』です。1993年、つまりサン・ラの歿年(5月30日逝去)で、前年にはサン・ラは車椅子生活になり、'89年~'90年にはすでにステージ上で意識を失ったり集中治療室入りも珍しくなくなっていたので、追悼アルバムが世界各国のレーベルから一斉に発売されたのはタイミングを測ったとも言えます。
それではまるで待っていたかのようですが、サン・ラは生前ぎりぎりまで新作をリリースしていましたから、スタジオ/ライヴ問わず未発表音源があってもサン・ラの生前では新作とバッティングしてしまう失礼がありました。二重に失礼になるのはどうしても充実した全盛期の未発表音源と較べれば近作はドキュメント的意義が先立ってしまうことで、80歳近い老齢で現役のサン・ラに正式ライセンスの未発表音源の発表を願い出るのは酷というものでしょう。すでにリサーチされ発表することもできた未発表音源がサン・ラ歿後に最初の集中的リリース・ラッシュを迎えたのもそうした事情で、サン・ラ歿後に最年長で最長在籍年数のマーシャル・アレンがリーダーを引き継ぎサン・ラ・アーケストラが存続するのも決定事項でしたし、旧作の発表がライヴ活動の集客力の維持につながるならアーケストラにとっても歓迎すべきことです。一部のアルバムを除けばサン・ラのアルバムは入手が難しいものがほとんどだったので、CDの普及によって旧作が一斉発売されたのも慶賀すべきことでした。
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(Original ESP "Concert for the Comet Kohoutek" CD Liner Cover)
ESPのアーティストが大半を占めたタウン・ホールのフェスティヴァルはフリー・ジャズ・ムーヴメントのほとんど最後の祭典になりました。同レーベルはサン・ラ以外のアーティストのライヴ・レコーディングも行っていたと思われますが、年末に行われたこのコンサートが明けて翌年にはレーベルが休止してしまったので文字通り後の祭りです。しかしサン・ラに限って言えばこれは絶好調のアーケストラで、同時期マイルス・デイヴィスもそうしていたような(両者とも1966年頃にはすでにそうなっていましたが)1回のライヴ全体を1曲として演奏するアプローチがとられています。インプロヴィゼーション主体のジャズではこれは極めて高度な即応力とメンバー間の一体感が要求されることで、クインテットか多くてもセプテットのマイルスのバンドならともかく、送迎バスが満席になるほどの大編成のサン・ラ・アーケストラでは大変で、通常のビッグバンドのように楽譜に沿って進行しているのではないのです。本作のライヴは72年のツアー以来の「Space Is The Place」を核としたセットリストで、本拠地ニューヨークでのコンサートですからレギュラー・メンバーはもちろん担当楽器がダブってもファミリー総動員で臨んでいると思われ、曲のつなぎにはかなり危なっかしい局面もあります。そこは百戦錬磨のバンドですから切り抜けてみせますが、アーケストラの大編成を録音するにはマイク不足だったらしく所々脱落しているパートもあるように聞こえます。サン・ラ自身のキーボードも所々聴こえなくなりますが、'73年クリスマス前夜のサン・ラ・アーケストラのライヴの疑似体験にはこのラジオ中継並みの音質(というよりミックス) でも不足はないでしょう。選曲と演奏ではこのライヴは70年代アーケストラ最高のものの一つに数えられます。ちなみに新曲とアルバム・タイトルのコホーテクとはこの年の年末に地球に接近した彗星のことだそうです。