ハリウッド黄金時代の映画監督は得意不得意こそあれジャンルを問わず何でも作る監督が多かったのですが、ホークスの場合も前回のスクリューボール・コメディ作品『二十世紀特急』'35に続く作品が暗黒街西部劇の『バーバリー・コースト』、その次が航空映画の『無限の青空』Ceiling Zero('36)、続いて第1次世界大戦映画の『永遠の戦場』、さらに親子二代に渡る僻地開発映画の『大自然の凱歌』と来ますから多岐に渡る題材に取り組む姿勢は実にエネルギッシュなものでした。しかもホークスの場合はフリーの自己のプロダクションで作品製作をメジャー映画会社から請け負っていたので、映画会社からの企画が社内の専属監督に振られるのが一般的だった当時、ホークス自身が映画会社に売り込んだ企画を実現させていたのです。後にはもっとホークスは得意分野の作品に企画を絞るようになりますが、この時期はとにかく何でも撮ってやろうというチャレンジ精神が旺盛だったのでしょう。多少狙いが外れた作品でも不出来というほどではなく、一作一作が趣向を変えて楽しませてくれる点ではどの作品も見所があるのがホークスの映画です。今回の3本は代表作とはまず言えない、題材の扱いと出来ばえともに難のあるものですが、それでも「映画を観たなあ」と満足感を与えてくれるだけの見応えがあります。ホークス作品中でも後回しにされがちな作品ですが、むしろこうした作品の存在にホークス映画の奥行きがあるというのはこじつけに過ぎるでしょうか。
●10月7日(土)
『バーバリー・コースト』Barbary Coast (ユナイト'35)*90mins, B/W; 日本公開昭和11年9月(1936/9)
製作会社 ユナイテッド・アーチスツ映画
配給 ユナイテッド・アーチスツ映画
[ 解説 ] 「虚栄の市(1935)」「世界一の金持ち娘」のミリアム・ホプキンスのサミュエル・ゴールドウィン・プロにおける第1回主演作品で、「俺は善人だ」「笑う巨人」のエドワード・G・ロビンソンと「白い友情」「世界一の金持ち娘」のジョエル・マクリーが共演する。監督は「特急二十世紀」「今日限りの命」のハワード・ホークスが任じ、脚本は「生きているモレア」「情熱なき犯罪」のベン・ヘクトとチャールズ・マッカーサーが協力して書き卸したもの。撮影は「台風」「宝島(1934)」のレイ・ジューンの担当。助演者は「Gウーマン」のブライアン・ドンレヴィ、劇作家・俳優のフランク・クレイヴン、「暁の爆撃」のクライド・クック、「轟く大地」のハリー・ケイリー、ウォルター・ブレナン等である。
[ あらすじ ] 1849年、カリフォルニア黄金狂時代の事である。メアリー・ラトレッジ(ミリアム・ホプキンス)は金を掘り当てた成金のダン・モーガンと結婚する為に、遥々ニューヨークから船でサンフランシスコにやってきた。上陸第一歩、彼女はダンが暗黒街バーバリー・コーストの賭博場ベラドンナで全財産を失い、場主のルイ・シャマリ(エドワード・G・ロビンソン)に殺された事を聞いた。新聞社を始めるために彼女と同船して来たコブ大佐(フランク・クレイヴン)は、ニューヨークへ帰る旅費を貸そうと言ったが、メアリーはそれを断った。そしてシャマリと契約してベラドンナのインチキ仕掛の賭博台の1つを受け持つ事となった。彼女の美貌と嬌笑は砂金の袋を持つ男達を吸い寄せて無一文にさせた。コブ大佐はバーバリー・コーストの悪徳シャマリの暴虐を攻撃する記事を載せた新聞「クラリオン」の第1号を印刷した。即座にシャマリは乾分と共に印刷機破壊にやってきたが、駆けつけたメアリーの願いで印刷機だけは無事なるを得た。シャマリの求愛を退けるのにくさくさしたメアリーはある日ひとり遠乗りにでて、雨に遭い、雨宿りしてジェームズ・カーマイケル(ジョエル・マクリー)という青年に逢った。彼は彼女と同郷のニューヨークっ子で、砂金袋を幾つか持って故郷へ帰る途中だった。霧で船が出帆せぬのでカーマイケルはその夜ベラドンナに立ち寄った。牧場に寄付していると言ったメアリーが賭博台の客引きであると知った彼は失望した。そして麻睡薬入りの酒を飲まされイカサマ賭博で所持金をことごとく巻き上げられた。翌日から彼はベラドンナの下男となってニューヨークへ帰る旅費を稼ぐ事となった。メアリーはシャマリがメアリーが雨宿りした時一緒になった男を探して殺すと言っているので、カーマイケルに今一度勝負を挑み、彼に数万金を勝たせた。彼女を愛している彼は彼女を連れて、小船に乗って逃れようとしたが、シャマリ等に捕らえられ傷ついた。メアリーはカーマイケルを無事にニューヨークへ帰してくれれば、すべてを捧げると泣いてシャマリに訴えた。シャマリはメアリーの嘆願を容れた一方コブ大佐がシャマリの輩下に殺された事から、シャマリ逮捕の自警団が組織され、一行は波止場までシャマリを追ってきた。賭博師のシャマリは自己の運命を悟りメアリーをカーマイケルの元へ追い返し、潔く自警団に引き立てられて行ったのである。
●10月8日(日)
『永遠の戦場』The Road to Glory (フォックス'36)*101mins, B/W; 日本公開昭和12年1月(1937/1)
製作会社 20世紀フォックス映画
配給 20世紀フォックス
[ 解説 ] 「噫無情」「アンナ・カレニナ」のフレドリック・マーチ、「虎鮫島脱獄」「ロビンフッドの復讐」のワーナー・バクスター、「噫初戀」「小連隊長」のライオネル・バリモアが主演する映画で、「愛の弾丸」のジョエル・セイヤーと「暴風の処女」の原作者ウィリアム・フォークナーとが協力して書き卸した脚本により「無限の青空」「バーバリー・コースト」のハワード・ホークスが監督に當たり、「この三人」「當り屋勘太」のグレッド・トーランドが撮影した。助演者は「空飛ぶ音楽」「極楽槍騎兵」のジューン・ラングを初め、「二国旗の下に」のグレゴリー・ラトフ、「五ツ児誕生」のジョン・クェーレン「何が彼をそうさせたか」のポール・スタントン、「意気な紐育っ子」のヴィクター・キリアン等という顔ぶれである。
[ あらすじ ] ポール・ラ・ロォシュ大尉(ワーナー・バクスター)にはモニク(ジューン・ラング)という恋人があり、2人は世界大戦が済むまで婚約していた。しかし運命の神の戯れから大尉の部下デネェ中尉(フレドリック・マーチ)は、ふとした機会で相知ったモニクを、大尉の婚約者と知らず恋をしていた。やがて世界大戦の運命を決すべき一大決戦が近づいた。討死の覚悟を決めた大尉はデネェ中尉にモニクの写真を渡し、自分が死んだら形見として彼女に渡すよう依頼した。大尉とモニクの仲を知ったデネェは、恋を断念しようと決心した。やがて彼等の属する第5中隊の補充兵は陸續として到着した。その中に白髪を染めたモラン(ライオネル・バリモア)と名乗る一老ラッパ手がいた。彼はラ・ロォシュ大尉の父親であった。大尉はこの老兵を不合格として後方に送還しようとしたが、老兵士はあくまで伜と行を共にせんと言い張った。激しい戦いの野に大尉の率いる第5中隊は、最前線に立って奮闘し多くの勇士は國の為に次々と死んで行った。デネェ中尉はモラン老兵士その他数名を率いて敵前で観測所に電話架設の決死的冒険を敢行した。その時モランは中尉をドイツ兵と錯覚し手榴弾で負傷を負わせた。このためモランは遂に後方へ送還される事となった。中尉も腕の負傷で病院へ送られそこでモニクに再会した。モニクは心の中を中尉に訴えている時、ラ・ロォシュ大尉はモランに手をひかれて這入って来た。激戦の果て、大尉は目が見えなくなったのだ。そこへ司令部から伝令が到着した。中尉は代わってそれを読んだ。「砲兵の援護砲火の着弾距離を通知せよ」モランは大尉の手を取って立った。「よし、俺がお前の眼になってやるぞ」かくてラ・ロォシュ親子は敵の猛射を潜って観測所に至り、味方の着弾距離を報告し完全に任務を遂行した。モランは最後の名残に進軍喇叭を吹かしてくれと大尉に頼んだ。やがて戦場に勇ましく響き渡ったが、その刹那巨弾は観測所に命中し、ラ・ロォシュ父子は潔く戦場の花と散ったのである。
●10月9日(月)
『大自然の凱歌』Come and Get It (共同監督ウィリアム・ワイラー) (ユナイト'36)*99min, B/W; 日本公開昭和13年5月(1938/5/5)・アカデミー賞助演男優賞受賞(ウォルター・ブレナン)
製作会社 ユナイテッド・アーチスツ映画
配給 ユナイテッド・アーチスツ
[ 解説 ] 「黄金(1936)」「罪と罰」のエドワード・アーノルドが主演する映画で、エドナ・ファーバー作の小説を「支那海」のジュールス・ファースマンが「乙女よ嘆くな」のジェーン・マーフィンと協力して脚色し、「バーバリー・コースト」「永遠の職場」のハワード・ホークスと「この三人」「お人好しの仙女」のウィリアム・ワイラーが半々宛監督したものである。助演者は「この三人」のジョエル・マクリー、「愉快なリズム」のフランセス・ファーマー、「バーバリー・コースト」のウォーター・プレナン、庭球選手だったフランク・シーリズ、ゴールド・ウインの新星アンドリア・リーズ、「黒騎士」のマディー・クリスチャンス、「学生怪死事件」のメアリー・ナッシュ等で、撮影は「この三人」のグレッグ・トーランド及び「リリオム」のルドルフ・マテが担当した。
[ あらすじ ] 雪深いカナダ国境近くのウィスコンシンの木材伐採場で、荒くれ男たちの賄いをしていた母親が死ぬと、幼いバーニイ少年は孤児となってしまった。しかし幸いにも伐採場主ヒュウィット(チャールズ・ハルトン)の情で、少年は他の場所にある製紙工場の事務所で働くようになった。それから20年の歳月が流れた。頑強な若者に成長したバーニイ(エドワード・アーノルド)は、親友スワン(ウォルター・ブレナン)を訪問し、また材木伐出しを監督するため、懐かしい元の伐採場に帰って行った。伐出しが無事に終わった祝いに、彼はスワンと一緒にある酒場へ行ったが。そこの美しい歌姫ロッタ(フランセス・ファーマー)に会い、2人は恋する仲となった。しかしバーニイは父母の遺言でかねて婚約のあったヒュウィットの一人娘エミイ・ルイズ(メアリー・ナッシュ)と結婚した。これはまた彼の将来にとっても有利な結婚だったのである。それを聞くとロッタは同じ日にスワンと結婚した。こうして更に25年が経過した1907年、バーニイはヒュウィットの死後その後を継ぎ、広大な木材伐採場と大製紙工場の所有主となり、その地方きっての富豪となった。妻との間に2人の子があり、兄をリチャード(ジョエル・マクリー)と呼び、妹をエヴィー(アンドリア・リーズ)といった。ある時バーニイは山林へ猟に行き、親友スワンとレストランで働くその姪のケイリー(マディ・クリスチャンス)及び彼の娘ロッタ(フランセス・ファーマー、二役)に会った。娘ロッタは母親ロッタに生き写しの乙女で、バーニイは彼女を見ると昔の思いでをかき立てられ、スワン一家を連れ帰って様々親切に世話をしてやるのであった。何時となくバーニイがロッタを囲っているという噂が人に口に上がるようになり、妻のエミイ・ルイズは心を悩ましていた。しかしロッタは彼を親切な小父さんと思うだけで彼女の心はリチャードのものとなっていた。また一方娘エヴィーは母親の決めた男との結婚を拒み、兄のとりなしで愛するトニイ(フランク・シーリズ)と夫婦になることになった。いろんな噂がバーニイ一家を不幸にするのを見て、スワンは家族を連れ再びもとの住居に帰ろうとする。これを知ったバーニイは妻を離婚してもロッタを引き止めようとしたが、貞淑な妻の涙を見てはさすがに心も折れるのであった。エヴィーとトニイの婚礼の夜、バーニイはロッタとリチャードの恋を知り、父と子は1人の女を争って向かい会ったが、ロッタが息子に老人をいたわるように頼むのを聞くと、今更のごとく自分の年を考え、妻や子供たちの幸福を祈る心に帰ったのである。
●10月7日(土)
『バーバリー・コースト』Barbary Coast (ユナイト'35)*90mins, B/W; 日本公開昭和11年9月(1936/9)
製作会社 ユナイテッド・アーチスツ映画
配給 ユナイテッド・アーチスツ映画
[ 解説 ] 「虚栄の市(1935)」「世界一の金持ち娘」のミリアム・ホプキンスのサミュエル・ゴールドウィン・プロにおける第1回主演作品で、「俺は善人だ」「笑う巨人」のエドワード・G・ロビンソンと「白い友情」「世界一の金持ち娘」のジョエル・マクリーが共演する。監督は「特急二十世紀」「今日限りの命」のハワード・ホークスが任じ、脚本は「生きているモレア」「情熱なき犯罪」のベン・ヘクトとチャールズ・マッカーサーが協力して書き卸したもの。撮影は「台風」「宝島(1934)」のレイ・ジューンの担当。助演者は「Gウーマン」のブライアン・ドンレヴィ、劇作家・俳優のフランク・クレイヴン、「暁の爆撃」のクライド・クック、「轟く大地」のハリー・ケイリー、ウォルター・ブレナン等である。
[ あらすじ ] 1849年、カリフォルニア黄金狂時代の事である。メアリー・ラトレッジ(ミリアム・ホプキンス)は金を掘り当てた成金のダン・モーガンと結婚する為に、遥々ニューヨークから船でサンフランシスコにやってきた。上陸第一歩、彼女はダンが暗黒街バーバリー・コーストの賭博場ベラドンナで全財産を失い、場主のルイ・シャマリ(エドワード・G・ロビンソン)に殺された事を聞いた。新聞社を始めるために彼女と同船して来たコブ大佐(フランク・クレイヴン)は、ニューヨークへ帰る旅費を貸そうと言ったが、メアリーはそれを断った。そしてシャマリと契約してベラドンナのインチキ仕掛の賭博台の1つを受け持つ事となった。彼女の美貌と嬌笑は砂金の袋を持つ男達を吸い寄せて無一文にさせた。コブ大佐はバーバリー・コーストの悪徳シャマリの暴虐を攻撃する記事を載せた新聞「クラリオン」の第1号を印刷した。即座にシャマリは乾分と共に印刷機破壊にやってきたが、駆けつけたメアリーの願いで印刷機だけは無事なるを得た。シャマリの求愛を退けるのにくさくさしたメアリーはある日ひとり遠乗りにでて、雨に遭い、雨宿りしてジェームズ・カーマイケル(ジョエル・マクリー)という青年に逢った。彼は彼女と同郷のニューヨークっ子で、砂金袋を幾つか持って故郷へ帰る途中だった。霧で船が出帆せぬのでカーマイケルはその夜ベラドンナに立ち寄った。牧場に寄付していると言ったメアリーが賭博台の客引きであると知った彼は失望した。そして麻睡薬入りの酒を飲まされイカサマ賭博で所持金をことごとく巻き上げられた。翌日から彼はベラドンナの下男となってニューヨークへ帰る旅費を稼ぐ事となった。メアリーはシャマリがメアリーが雨宿りした時一緒になった男を探して殺すと言っているので、カーマイケルに今一度勝負を挑み、彼に数万金を勝たせた。彼女を愛している彼は彼女を連れて、小船に乗って逃れようとしたが、シャマリ等に捕らえられ傷ついた。メアリーはカーマイケルを無事にニューヨークへ帰してくれれば、すべてを捧げると泣いてシャマリに訴えた。シャマリはメアリーの嘆願を容れた一方コブ大佐がシャマリの輩下に殺された事から、シャマリ逮捕の自警団が組織され、一行は波止場までシャマリを追ってきた。賭博師のシャマリは自己の運命を悟りメアリーをカーマイケルの元へ追い返し、潔く自警団に引き立てられて行ったのである。
●10月8日(日)
『永遠の戦場』The Road to Glory (フォックス'36)*101mins, B/W; 日本公開昭和12年1月(1937/1)
製作会社 20世紀フォックス映画
配給 20世紀フォックス
[ 解説 ] 「噫無情」「アンナ・カレニナ」のフレドリック・マーチ、「虎鮫島脱獄」「ロビンフッドの復讐」のワーナー・バクスター、「噫初戀」「小連隊長」のライオネル・バリモアが主演する映画で、「愛の弾丸」のジョエル・セイヤーと「暴風の処女」の原作者ウィリアム・フォークナーとが協力して書き卸した脚本により「無限の青空」「バーバリー・コースト」のハワード・ホークスが監督に當たり、「この三人」「當り屋勘太」のグレッド・トーランドが撮影した。助演者は「空飛ぶ音楽」「極楽槍騎兵」のジューン・ラングを初め、「二国旗の下に」のグレゴリー・ラトフ、「五ツ児誕生」のジョン・クェーレン「何が彼をそうさせたか」のポール・スタントン、「意気な紐育っ子」のヴィクター・キリアン等という顔ぶれである。
[ あらすじ ] ポール・ラ・ロォシュ大尉(ワーナー・バクスター)にはモニク(ジューン・ラング)という恋人があり、2人は世界大戦が済むまで婚約していた。しかし運命の神の戯れから大尉の部下デネェ中尉(フレドリック・マーチ)は、ふとした機会で相知ったモニクを、大尉の婚約者と知らず恋をしていた。やがて世界大戦の運命を決すべき一大決戦が近づいた。討死の覚悟を決めた大尉はデネェ中尉にモニクの写真を渡し、自分が死んだら形見として彼女に渡すよう依頼した。大尉とモニクの仲を知ったデネェは、恋を断念しようと決心した。やがて彼等の属する第5中隊の補充兵は陸續として到着した。その中に白髪を染めたモラン(ライオネル・バリモア)と名乗る一老ラッパ手がいた。彼はラ・ロォシュ大尉の父親であった。大尉はこの老兵を不合格として後方に送還しようとしたが、老兵士はあくまで伜と行を共にせんと言い張った。激しい戦いの野に大尉の率いる第5中隊は、最前線に立って奮闘し多くの勇士は國の為に次々と死んで行った。デネェ中尉はモラン老兵士その他数名を率いて敵前で観測所に電話架設の決死的冒険を敢行した。その時モランは中尉をドイツ兵と錯覚し手榴弾で負傷を負わせた。このためモランは遂に後方へ送還される事となった。中尉も腕の負傷で病院へ送られそこでモニクに再会した。モニクは心の中を中尉に訴えている時、ラ・ロォシュ大尉はモランに手をひかれて這入って来た。激戦の果て、大尉は目が見えなくなったのだ。そこへ司令部から伝令が到着した。中尉は代わってそれを読んだ。「砲兵の援護砲火の着弾距離を通知せよ」モランは大尉の手を取って立った。「よし、俺がお前の眼になってやるぞ」かくてラ・ロォシュ親子は敵の猛射を潜って観測所に至り、味方の着弾距離を報告し完全に任務を遂行した。モランは最後の名残に進軍喇叭を吹かしてくれと大尉に頼んだ。やがて戦場に勇ましく響き渡ったが、その刹那巨弾は観測所に命中し、ラ・ロォシュ父子は潔く戦場の花と散ったのである。
●10月9日(月)
『大自然の凱歌』Come and Get It (共同監督ウィリアム・ワイラー) (ユナイト'36)*99min, B/W; 日本公開昭和13年5月(1938/5/5)・アカデミー賞助演男優賞受賞(ウォルター・ブレナン)
製作会社 ユナイテッド・アーチスツ映画
配給 ユナイテッド・アーチスツ
[ 解説 ] 「黄金(1936)」「罪と罰」のエドワード・アーノルドが主演する映画で、エドナ・ファーバー作の小説を「支那海」のジュールス・ファースマンが「乙女よ嘆くな」のジェーン・マーフィンと協力して脚色し、「バーバリー・コースト」「永遠の職場」のハワード・ホークスと「この三人」「お人好しの仙女」のウィリアム・ワイラーが半々宛監督したものである。助演者は「この三人」のジョエル・マクリー、「愉快なリズム」のフランセス・ファーマー、「バーバリー・コースト」のウォーター・プレナン、庭球選手だったフランク・シーリズ、ゴールド・ウインの新星アンドリア・リーズ、「黒騎士」のマディー・クリスチャンス、「学生怪死事件」のメアリー・ナッシュ等で、撮影は「この三人」のグレッグ・トーランド及び「リリオム」のルドルフ・マテが担当した。
[ あらすじ ] 雪深いカナダ国境近くのウィスコンシンの木材伐採場で、荒くれ男たちの賄いをしていた母親が死ぬと、幼いバーニイ少年は孤児となってしまった。しかし幸いにも伐採場主ヒュウィット(チャールズ・ハルトン)の情で、少年は他の場所にある製紙工場の事務所で働くようになった。それから20年の歳月が流れた。頑強な若者に成長したバーニイ(エドワード・アーノルド)は、親友スワン(ウォルター・ブレナン)を訪問し、また材木伐出しを監督するため、懐かしい元の伐採場に帰って行った。伐出しが無事に終わった祝いに、彼はスワンと一緒にある酒場へ行ったが。そこの美しい歌姫ロッタ(フランセス・ファーマー)に会い、2人は恋する仲となった。しかしバーニイは父母の遺言でかねて婚約のあったヒュウィットの一人娘エミイ・ルイズ(メアリー・ナッシュ)と結婚した。これはまた彼の将来にとっても有利な結婚だったのである。それを聞くとロッタは同じ日にスワンと結婚した。こうして更に25年が経過した1907年、バーニイはヒュウィットの死後その後を継ぎ、広大な木材伐採場と大製紙工場の所有主となり、その地方きっての富豪となった。妻との間に2人の子があり、兄をリチャード(ジョエル・マクリー)と呼び、妹をエヴィー(アンドリア・リーズ)といった。ある時バーニイは山林へ猟に行き、親友スワンとレストランで働くその姪のケイリー(マディ・クリスチャンス)及び彼の娘ロッタ(フランセス・ファーマー、二役)に会った。娘ロッタは母親ロッタに生き写しの乙女で、バーニイは彼女を見ると昔の思いでをかき立てられ、スワン一家を連れ帰って様々親切に世話をしてやるのであった。何時となくバーニイがロッタを囲っているという噂が人に口に上がるようになり、妻のエミイ・ルイズは心を悩ましていた。しかしロッタは彼を親切な小父さんと思うだけで彼女の心はリチャードのものとなっていた。また一方娘エヴィーは母親の決めた男との結婚を拒み、兄のとりなしで愛するトニイ(フランク・シーリズ)と夫婦になることになった。いろんな噂がバーニイ一家を不幸にするのを見て、スワンは家族を連れ再びもとの住居に帰ろうとする。これを知ったバーニイは妻を離婚してもロッタを引き止めようとしたが、貞淑な妻の涙を見てはさすがに心も折れるのであった。エヴィーとトニイの婚礼の夜、バーニイはロッタとリチャードの恋を知り、父と子は1人の女を争って向かい会ったが、ロッタが息子に老人をいたわるように頼むのを聞くと、今更のごとく自分の年を考え、妻や子供たちの幸福を祈る心に帰ったのである。