ハワード・ホークスはとにかく作風が多彩かつ幅の広い監督で、今回も戦争ロマンス、革命家の伝記映画、スクリューボール・コメディ(恋愛ドタバタ喜劇)と両2年にまったく異なるジャンルと趣向の映画を作っています。ホークスはフリーの映画監督としてハワード・ホークス・プロダクションを構え、配給先のメジャー映画会社からプロデューサーを迎えて共同製作する映画作りをしており、企画の大半はホークス自身の発案によるものでした。作品によって映画会社側の意向が大きい場合とホークス自身の決定権が強い場合の度合いには違いがあり、今回の3作ならば『今日限りの命』は映画会社の意向が強く、『奇傑パンチョ』は映画会社と衝突しながらもホークスの本領が発揮された作品で(しかしクレジット上は第2班助監督のジャック・コンウェイの監督作にされてしまいます)、『特急二十世紀』はホークスの発言権が100パーセント貫かれた作品でしょう。なお今回の3作もアメリカ本国公開から間もなく日本公開されており、当時の「キネマ旬報」の「近着外国映画紹介」を引用させていただきました。例によって古風で味わい深い紹介文で、それ自体興味深く面白いものです。またホークス作品は日米開戦される『コンドル』'39までの戦前作品はほとんど日米同時公開されていながら戦前の日本での評価は『暗黒街の顔役』とせいぜい『コンドル』がアメリカ映画も当分観納めになるしと大ヒットして評判になった程度のようで、ホークス戦前の充実した作品群を思うと戦前の日本の映画観客・批評家好みではなかったのかな、と不思議な気がします。昭和9年に『特急二十世紀』を観た日本の観客はどう思っていたのでしょうか。
●10月4日(水)
『今日限りの命』Today We Live (MGM'33)*113mins, B/W; 日本公開昭和8年10月(1933/10)
製作会社 M・G・M映画
配給 MGM支社
[ 解説 ] 「グランド・ホテル」「雨」のジョーン・クローフォードと「戦場よさらば」「百万円貰ったら」のゲイリー・クーパーが主演する映画で、「暴風の処女」の作者ウィリアム・フォークナーが執筆した物語をエディス・フィッツジェラルドと「女秘書の秘密」のドワイト・テイラーが共同脚色し、「暗黒街の顔役(1932)」「虎鮫」のハワード・ホークスが監督に当たり、「散り行く花」「雨」のオリヴァー・T・マーシュが撮影した。助演者は「カンターの闘牛師」「マデロンの悲劇」のロバート・ヤング、ニューヨークシアター・ギルドから迎えられたフランチョット・トーン、「紐育の仇討」「百万円貰ったら」のロスコー・カーンス、「散り行く花」のルイズ・クロッサー・ヘイル、ロロー・ロイド、ヒルダ・ヴォーン等である。
[ あらすじ ] 英国の娘ダイアナ(ジョーン・クロフォード)は父が欧州大戦に出征した後は、未曾有の困難に質素な生活を送っていたが、遂に邸宅をも人に貸すことに決心した。彼女の大邸宅を借り受けたのは米国の有閑青年で、英国留学にやってきたボガード(ゲイリー・クーパー)であった。彼が借りるつもりで家を見にきた日、ダイアナのもとには父が名誉の戦死を遂げたとの知らせがあった。彼女は屋敷内の園丁の家に居を移したが、ボガードは彼女に興味を感じて、いろいろと慰めるのだった。ダイアナも憎めない明朗なアメリカ人気質のボガードに次第に心をひかれ、いつか互いに胸の内は明かさぬながらも慕い合う仲となった。折柄、かねて兵学校在学中だった兄のロニイ(フランチョット・トーン)と幼い頃からの恋人クロード(ロバート・ヤング)が相携えて国難に赴くこととなった。ダイアナは親しい人々が祖国のためにあるいは死し、あるいは新たに戦線に向かうのに自分だけが恋愛に耽ることは出来ないと感じ、ボガードには何事も語らず、看護婦を志願してフランス戦地へ向かった。幾何もなく米国も大戦に参加し、ボガードは飛行隊に加わった。ロニイとクロードは水雷艇に乗り組み、波荒き北海に活躍した。一方ボガードは爆撃機を操縦して盛んに敵の戦地を脅かしたが、不幸、機を大破して戦死の報が伝えられた。ダイアナはボガードを愛していたが、彼亡き後はクロードの愛を納めるべきことを決心して、戦地に於いて彼と自由結婚をしてしまった。が、ボガードが思いがけなく命を全うして帰って来たとき、2人は真相を知るや互いに驚きかつ悩んだ。愛するダイアナがすでにクロードのものとなっているので、悲痛の極ボガードは決死隊に加わり、敵艦爆破の大任を引き受けることになる。一方、激戦中散弾のために不幸失明したクロードは、この上彼女に重荷を負わせるには忍びず、且つは彼女がボガードを愛していることを知り、ロニイと共に目的の敵艦を水雷艇で撃沈すべく出掛けた。ボガードはこれを知るや彼等を救うべく、直ちに爆撃機を操縦して自ら護国の鬼と消えんと志したが、時はすでに遅かった。彼等は華々しい戦死を遂げてしまった。平和克復の暁、結婚をしたダイアナとボガードは2人の英雄を厳かに弔うのであった。
●10月5日(木)
ジャック・コンウェイ(ホークス匿名共同監督)『奇傑パンチョ』Viva Villa! (MGM'34)*112mins, B/W; 日本公開昭和10年2月(1935/2)・ヴェネツィア国際映画祭主演男優賞(ウォーレス・ビアリー)
製作会社 M・G・M映画
配給 MGM支社
[ 解説 ] 「バワリイ」「酔いどれ船」のウォーレス・ビアリーが主演する映画で、パンチョ・ヴィラの伝記小説を「生活の設計」のベン・ヘクトが脚色し「舌戦速射砲」「旅客機の怪盗」のジャック・コンウェイが監督し、ジェームズ・ウォング・ホウとチャールズ・G・クラークが共同撮影した。助演者は「バワリイ」のフェイ・レイ、「恐怖の四人」のレオ・カリーロ、「九番目の客」のドナルド・クック、「南風」のスチュアート・アーウィン、「クレオパトラ(1934)」のジョセフ・シルドクラウト、ジョージ・E・ストーン、キャサリン・デミル、ヘンリー・E・ウォルソール等である。
[ あらすじ ] 1880年代のメキシコ国民はディアス将軍の虐政の下に呻吟していた。パンチョ・ヴィラ(ウォーレス・ビアリー)はこの時代に農奴として産まれた。父は地主の鞭の下に悲惨な死をとげた。少年パンチョ(フィリップ・クーパー)の心に復讐の鬼が巣くった。チフワフワの山中に育った革命児パンチョは長ずるに及んでついに虐政に歯向かう原住民軍の恩師として雷名を響かせるに至った。パンチョは自ら義賊と称したが真面目な統率者を欺いた彼の部下の暴行はむしろ盗賊のそれに近く、官民共に彼を恐れた。そこに現れたのがメキシコの救世主と称される人傑フランシスコ・マデロ(ヘンリー・B・ウォルソール)であった。彼はパンチョをして彼の配下にさんずる事を命じ、パスカル将軍(ジョゼフ・シルドクラウト)の統率の下に規律ある軍隊の一員とならん事を求めた。パンチョはしぶしぶパスカル将軍の部下となったが決して大将の命には従わず自己流のがむしゃらな戦法で100戦100勝しついに首都メキシコ市を陥れた。大統領となったマデロは戦い終わった以上、パンチョの引退を勧めたが覇気満々のパンチョには我慢出来なかった。腹黒いパスカル将軍はマデロを退けて自分が大統領たらんとの野心を起こし、それにはマデロの腹心のパンチョが邪魔になるので些細な過失を口実についにパンチョを国外追放に処し、その間にマデロを暗殺して自ら政権を奪った。国外流浪の境遇にあって悲報を耳にしたパンチョの怒りは心頭に達した。彼は6人の部下を率いてその国に帰るや、パスカルに対する復讐の義軍はそうぜんとして彼の周囲に集まり、大軍は怒濤のごとき勢いをもって、首都メキシコにせまりついにパスカルを捕らえて復仇の目的を遂げた。国会は彼を大統領に推薦したがパンチョは自らその任に非ざる事を知り栄職を辞して帰郷の途上、彼に恨みを抱く1貴族の復讐の銃先に倒れた。1代の奇傑パンチョ・ヴィラは果てていったがその所に自由をあがなった新しいメキシコ国は生まれたのである。
●10月6日(金)
『特急二十世紀』Twentieth Century (コロムビア'34)*92min, B/W; 日本公開昭和9年11月(1934/11)/アメリカ国立フィルム登録簿登録作品(2011年度)
製作会社 コロムビア映画
[ 解説 ] 「トパーズ(1933)」「夜間飛行」のジョン・バリモアが主演する映画で「犯罪都市」「国際盗賊ホテル」を合作したチャールズ・マッカーサーとベン・ヘクトとがチャールズ・ミルホランドの協力を得て書卸した戯曲に基き、マクアーサー、ヘクトが映画用に脚色したものを「暗黒街の顔役」「今日限りの命」のハワード・ホークスが監督、「青空天国」「十三日の殺人」のジョー・オーガストが撮影した。バリモアの対手役は「ボレロ」「白い肉体」のキャロル・ロムバードを始めとして「青空天国」「或る夜の出来事」のウォルター・コノリー、「ある日曜日の午後」「或る夜の出来事」のロスコー・カーンス、「ケンネル殺人事件」のエチエンヌ・ジラルドオ、ラルフ・フォーブス、デール・フラー、等である。
[ あらすじ ] オスカー・ジャフィ(ジョン・バリモア)は一種異った世間を超脱した人間で狂った天才ともいう可き劇場の演出者だった。彼は無名からリリー・ガーランド(キャロル・ロンバード)という女優を見出して、腹心のウェッブ(ウォルター・コノリー)やオマレイ(ロスコー・カーンス)の反対を無視して、これをスターに仕立てたところ、これが忽ち大当りをしめた。で以後三ケ年というものジャフィ、リリーのコンビは次々と劇壇にヒットを送っていたが、運悪いことにはジャフィともあろう大人物が女優のリリーに恋をしてしまった。それからというものはジャフィの専制と嫉妬とは事々にリリーを束縛し彼女から人間的な生活を奪ってしまったので、リリーはある日、彼には無断で映画出演を契約しハリウッドへ去ってしまう。リリーに去られると共にジャフィを去ったのは彼の霊感で、その後に彼がシカゴで興行した時には散々に失敗し小屋代すら払えなくなった。で、彼は高飛び的に同市を逃げ出し、折柄の二十世紀特急に乗ってニューヨークへと旗を巻いて引返す事になった。一敗地に塗れたジャフィがモスクワで破れたナポレオンもどきに、しかし意気と雄弁だけは益々盛んになって行くと、途中の駅でこの列車に乗り込んで来たものがある。これがリリーとその恋人のジョージ(ラルフ・フォーブス)とで、リリーはニューヨークにいる嘗てのジャフィの股肱ジェーコブス(チャールズ・レヴィソン)の招きに応じてジェーコブスの芝居に出る為めであった。ジャフィはこれを見て当時売出しのリリーに再び己れの芝居に出演して貰う事が出来れば彼も九死一生の今の窮地を切り抜ける事が出来ると考えついた。で、ウェッブとオマレイの二人を督励して先ずジョージに嫉妬を起させて彼とリリーとの仲を割く。それにウェッブが某大会社の社長でクラーク(エチエンヌ・ジラルド)という人間に出会い、彼を説いてジャフィの芝居に大金を投じさせる事に成功した。で、一同万歳々々と叫んでいる途端にこのクラークというのが実は狂人であると知れる。それと共に一度ジャフィの下で働く気になったリリーもまた、急ちジャフィの申出をハネつけた。ジャフィはもう万事休す、といって大時代的に自殺を計った。そこへクラークはまた現われてジャフィは擦り傷を負う。だがこの擦り傷を致命傷によそい、ジャフィは大芝居を打ち彼の死出の旅の贈物としてリリーに彼の芝居に出演の署名をさせた。斯くて、万事はジャフィにとって芽出度く納まり、再び彼はリリーを手足の如くに動かして舞台稽古に取りかかる様になった。
●10月4日(水)
『今日限りの命』Today We Live (MGM'33)*113mins, B/W; 日本公開昭和8年10月(1933/10)
製作会社 M・G・M映画
配給 MGM支社
[ 解説 ] 「グランド・ホテル」「雨」のジョーン・クローフォードと「戦場よさらば」「百万円貰ったら」のゲイリー・クーパーが主演する映画で、「暴風の処女」の作者ウィリアム・フォークナーが執筆した物語をエディス・フィッツジェラルドと「女秘書の秘密」のドワイト・テイラーが共同脚色し、「暗黒街の顔役(1932)」「虎鮫」のハワード・ホークスが監督に当たり、「散り行く花」「雨」のオリヴァー・T・マーシュが撮影した。助演者は「カンターの闘牛師」「マデロンの悲劇」のロバート・ヤング、ニューヨークシアター・ギルドから迎えられたフランチョット・トーン、「紐育の仇討」「百万円貰ったら」のロスコー・カーンス、「散り行く花」のルイズ・クロッサー・ヘイル、ロロー・ロイド、ヒルダ・ヴォーン等である。
[ あらすじ ] 英国の娘ダイアナ(ジョーン・クロフォード)は父が欧州大戦に出征した後は、未曾有の困難に質素な生活を送っていたが、遂に邸宅をも人に貸すことに決心した。彼女の大邸宅を借り受けたのは米国の有閑青年で、英国留学にやってきたボガード(ゲイリー・クーパー)であった。彼が借りるつもりで家を見にきた日、ダイアナのもとには父が名誉の戦死を遂げたとの知らせがあった。彼女は屋敷内の園丁の家に居を移したが、ボガードは彼女に興味を感じて、いろいろと慰めるのだった。ダイアナも憎めない明朗なアメリカ人気質のボガードに次第に心をひかれ、いつか互いに胸の内は明かさぬながらも慕い合う仲となった。折柄、かねて兵学校在学中だった兄のロニイ(フランチョット・トーン)と幼い頃からの恋人クロード(ロバート・ヤング)が相携えて国難に赴くこととなった。ダイアナは親しい人々が祖国のためにあるいは死し、あるいは新たに戦線に向かうのに自分だけが恋愛に耽ることは出来ないと感じ、ボガードには何事も語らず、看護婦を志願してフランス戦地へ向かった。幾何もなく米国も大戦に参加し、ボガードは飛行隊に加わった。ロニイとクロードは水雷艇に乗り組み、波荒き北海に活躍した。一方ボガードは爆撃機を操縦して盛んに敵の戦地を脅かしたが、不幸、機を大破して戦死の報が伝えられた。ダイアナはボガードを愛していたが、彼亡き後はクロードの愛を納めるべきことを決心して、戦地に於いて彼と自由結婚をしてしまった。が、ボガードが思いがけなく命を全うして帰って来たとき、2人は真相を知るや互いに驚きかつ悩んだ。愛するダイアナがすでにクロードのものとなっているので、悲痛の極ボガードは決死隊に加わり、敵艦爆破の大任を引き受けることになる。一方、激戦中散弾のために不幸失明したクロードは、この上彼女に重荷を負わせるには忍びず、且つは彼女がボガードを愛していることを知り、ロニイと共に目的の敵艦を水雷艇で撃沈すべく出掛けた。ボガードはこれを知るや彼等を救うべく、直ちに爆撃機を操縦して自ら護国の鬼と消えんと志したが、時はすでに遅かった。彼等は華々しい戦死を遂げてしまった。平和克復の暁、結婚をしたダイアナとボガードは2人の英雄を厳かに弔うのであった。
●10月5日(木)
ジャック・コンウェイ(ホークス匿名共同監督)『奇傑パンチョ』Viva Villa! (MGM'34)*112mins, B/W; 日本公開昭和10年2月(1935/2)・ヴェネツィア国際映画祭主演男優賞(ウォーレス・ビアリー)
製作会社 M・G・M映画
配給 MGM支社
[ 解説 ] 「バワリイ」「酔いどれ船」のウォーレス・ビアリーが主演する映画で、パンチョ・ヴィラの伝記小説を「生活の設計」のベン・ヘクトが脚色し「舌戦速射砲」「旅客機の怪盗」のジャック・コンウェイが監督し、ジェームズ・ウォング・ホウとチャールズ・G・クラークが共同撮影した。助演者は「バワリイ」のフェイ・レイ、「恐怖の四人」のレオ・カリーロ、「九番目の客」のドナルド・クック、「南風」のスチュアート・アーウィン、「クレオパトラ(1934)」のジョセフ・シルドクラウト、ジョージ・E・ストーン、キャサリン・デミル、ヘンリー・E・ウォルソール等である。
[ あらすじ ] 1880年代のメキシコ国民はディアス将軍の虐政の下に呻吟していた。パンチョ・ヴィラ(ウォーレス・ビアリー)はこの時代に農奴として産まれた。父は地主の鞭の下に悲惨な死をとげた。少年パンチョ(フィリップ・クーパー)の心に復讐の鬼が巣くった。チフワフワの山中に育った革命児パンチョは長ずるに及んでついに虐政に歯向かう原住民軍の恩師として雷名を響かせるに至った。パンチョは自ら義賊と称したが真面目な統率者を欺いた彼の部下の暴行はむしろ盗賊のそれに近く、官民共に彼を恐れた。そこに現れたのがメキシコの救世主と称される人傑フランシスコ・マデロ(ヘンリー・B・ウォルソール)であった。彼はパンチョをして彼の配下にさんずる事を命じ、パスカル将軍(ジョゼフ・シルドクラウト)の統率の下に規律ある軍隊の一員とならん事を求めた。パンチョはしぶしぶパスカル将軍の部下となったが決して大将の命には従わず自己流のがむしゃらな戦法で100戦100勝しついに首都メキシコ市を陥れた。大統領となったマデロは戦い終わった以上、パンチョの引退を勧めたが覇気満々のパンチョには我慢出来なかった。腹黒いパスカル将軍はマデロを退けて自分が大統領たらんとの野心を起こし、それにはマデロの腹心のパンチョが邪魔になるので些細な過失を口実についにパンチョを国外追放に処し、その間にマデロを暗殺して自ら政権を奪った。国外流浪の境遇にあって悲報を耳にしたパンチョの怒りは心頭に達した。彼は6人の部下を率いてその国に帰るや、パスカルに対する復讐の義軍はそうぜんとして彼の周囲に集まり、大軍は怒濤のごとき勢いをもって、首都メキシコにせまりついにパスカルを捕らえて復仇の目的を遂げた。国会は彼を大統領に推薦したがパンチョは自らその任に非ざる事を知り栄職を辞して帰郷の途上、彼に恨みを抱く1貴族の復讐の銃先に倒れた。1代の奇傑パンチョ・ヴィラは果てていったがその所に自由をあがなった新しいメキシコ国は生まれたのである。
●10月6日(金)
『特急二十世紀』Twentieth Century (コロムビア'34)*92min, B/W; 日本公開昭和9年11月(1934/11)/アメリカ国立フィルム登録簿登録作品(2011年度)
製作会社 コロムビア映画
[ 解説 ] 「トパーズ(1933)」「夜間飛行」のジョン・バリモアが主演する映画で「犯罪都市」「国際盗賊ホテル」を合作したチャールズ・マッカーサーとベン・ヘクトとがチャールズ・ミルホランドの協力を得て書卸した戯曲に基き、マクアーサー、ヘクトが映画用に脚色したものを「暗黒街の顔役」「今日限りの命」のハワード・ホークスが監督、「青空天国」「十三日の殺人」のジョー・オーガストが撮影した。バリモアの対手役は「ボレロ」「白い肉体」のキャロル・ロムバードを始めとして「青空天国」「或る夜の出来事」のウォルター・コノリー、「ある日曜日の午後」「或る夜の出来事」のロスコー・カーンス、「ケンネル殺人事件」のエチエンヌ・ジラルドオ、ラルフ・フォーブス、デール・フラー、等である。
[ あらすじ ] オスカー・ジャフィ(ジョン・バリモア)は一種異った世間を超脱した人間で狂った天才ともいう可き劇場の演出者だった。彼は無名からリリー・ガーランド(キャロル・ロンバード)という女優を見出して、腹心のウェッブ(ウォルター・コノリー)やオマレイ(ロスコー・カーンス)の反対を無視して、これをスターに仕立てたところ、これが忽ち大当りをしめた。で以後三ケ年というものジャフィ、リリーのコンビは次々と劇壇にヒットを送っていたが、運悪いことにはジャフィともあろう大人物が女優のリリーに恋をしてしまった。それからというものはジャフィの専制と嫉妬とは事々にリリーを束縛し彼女から人間的な生活を奪ってしまったので、リリーはある日、彼には無断で映画出演を契約しハリウッドへ去ってしまう。リリーに去られると共にジャフィを去ったのは彼の霊感で、その後に彼がシカゴで興行した時には散々に失敗し小屋代すら払えなくなった。で、彼は高飛び的に同市を逃げ出し、折柄の二十世紀特急に乗ってニューヨークへと旗を巻いて引返す事になった。一敗地に塗れたジャフィがモスクワで破れたナポレオンもどきに、しかし意気と雄弁だけは益々盛んになって行くと、途中の駅でこの列車に乗り込んで来たものがある。これがリリーとその恋人のジョージ(ラルフ・フォーブス)とで、リリーはニューヨークにいる嘗てのジャフィの股肱ジェーコブス(チャールズ・レヴィソン)の招きに応じてジェーコブスの芝居に出る為めであった。ジャフィはこれを見て当時売出しのリリーに再び己れの芝居に出演して貰う事が出来れば彼も九死一生の今の窮地を切り抜ける事が出来ると考えついた。で、ウェッブとオマレイの二人を督励して先ずジョージに嫉妬を起させて彼とリリーとの仲を割く。それにウェッブが某大会社の社長でクラーク(エチエンヌ・ジラルド)という人間に出会い、彼を説いてジャフィの芝居に大金を投じさせる事に成功した。で、一同万歳々々と叫んでいる途端にこのクラークというのが実は狂人であると知れる。それと共に一度ジャフィの下で働く気になったリリーもまた、急ちジャフィの申出をハネつけた。ジャフィはもう万事休す、といって大時代的に自殺を計った。そこへクラークはまた現われてジャフィは擦り傷を負う。だがこの擦り傷を致命傷によそい、ジャフィは大芝居を打ち彼の死出の旅の贈物としてリリーに彼の芝居に出演の署名をさせた。斯くて、万事はジャフィにとって芽出度く納まり、再び彼はリリーを手足の如くに動かして舞台稽古に取りかかる様になった。