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Sun Ra - Secrets of the Sun (Saturn, 1965)

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Sun Ra and his Solar Arkestra - Secrets of the Sun (Saturn, 1965) Full Album : https://youtu.be/hef9I4EVb4s
Recorded by Tommy Hunter at the Choreographer's Workshop, New York (the Arkestra's rehearsal space) in 1962.
Released by El Saturn Records 9954, 1965
Composed and arranged by Sun Ra
(Side A)
A1. Friendly Galaxy - 4:35
A2. Solar Differentials - 6:28
A3. Space Aura - 5:26
(Side B)
B1. Love In Outer Space - 4:44
B2. Reflects Motion - 9:07
B3. Solar Symbols - 2:42
[ Sun Ra and his Solar Arkestra ]
Sun Ra - piano, harp, gong
Art Jenkins - voice(on A2)
Al Evans - flugelhorn(on A1)
Eddie Gale - trumpet(on A3)
Marshall Allen - flute, alto saxophone, percussion(on A1, A3 to B3)
John Gilmore - bass clarinet, tenor saxophone, percussion, voice
Pat Patrick - flute, baritone saxophone, bongos(on A1, A3, B1, B3)
Calvin Newborn - electric guitar(on A1)
Ronald Boykins - bass(on A1 to B2)
Tommy Hunter - percussion, drums(on A1, B2)
C. Scoby Stroman - drums(on A2, A3, B2)

 前作『Art Forms of Dimensions Tomorrow』とは実際は前後はつけられず、『Art Forms~』の全7曲中2曲が1961年の末録音が含まれているので便宜上先になるだけで、『Art Forms~』の主要曲5曲と本作『Secrets of the Sun』は1962年の無料練習場セッションからの同一時期の録音です。『Art Forms~』は1961年録音の曲も上出来で違和感がありませんでしたが、1962年録音で統一された本作はさらに強力でサン・ラ1960年代の最高傑作の1枚といえます。ただし無条件に代表作に推せないのは、現行CDでは音質に難がある上に小規模インディーズのAtavisiticから2008年に少ない枚数プレスされただけで市場にあまり出回らず、入手が困難であることによります。なぜそうなったのかは何となく推測がつかないでもありません。サン・ラのサターン・レーベル作品は1991年からEvidenceレーベルによって網羅的・体系的にCD化されていました。サターン・レーベル原盤のアルバムは1970年代にはメジャーのインパルス・レーベルで大半はLP再発されており、一部のアルバムでは同一曲のテイク違いがあることからも再発の際にインパルス用の新規リミックス音源が制作されていたと思われます。エヴィデンスからのCD化もインパルスとサターンの両音源から使用しています。ですが本作『Secrets of the Sun』はインパルスからの再発はなく、エヴィデンスからも再発されませんでした。アタヴィジティックからの初にして唯一のCD化は2008年にようやく実現し、17分の未発表曲「Flight To Mars」が加えられたことからもサターンからのセッション・テープが使用されたはずですが、オリジナル盤以来インパルス用マスターが作られなかったからか保管状態に問題があったようで音質の劣化が激しく、エヴィデンスがCD化を見送ったのも良好なマスターがなかったためと推定されるのです。サイト上の圧縮ファイル音質としてはあまり気になりませんが、オーディオ機器での再生にはきびしいCD化になっています。
 そうした残念な問題はありますが、本作はトミー・ハンターの録音エンジニアリングによる第2作であり、またサン・ラのパブリック・イメージとなる古代エジプトの土星人に扮したポートレイトが初めてジャケットを飾った記念すべきアルバムです。50代以上の日本人ならサン・ラの容貌にハナ肇を連想せずにはいられませんが(鼻翼の開き方や顔面の下半分が特に似ています)、ハナ肇も偉大なバンドリーダーにしてジャズマンでした(担当楽器は異なりますが)。今回も例によって全曲がサン・ラのオリジナル曲ですが、楽曲そのものが特殊な録音技術を生かした演奏を引き出すための作曲になっています。その点でもハンターがバンド所有のテープレコーダーで録音専属になった1962年録音は1961年末までの録音とは断絶しており、折衷的な選曲だった『Art Forms~』より1962年録音で固めた本作は、より徹底したコンセプトの下にアーケストラ従来の音楽性を融合させたスケールの大きなアルバムになりました。

(Original El Saturn "Secrets of the Sun" LP Liner Cover & Side A Label)

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 実はこのアルバムは未CD化の時期が長かったのでオリジナル・サターン盤からの盤起こしのブートレッグが出回り、リミックスでもデジタル・リマスターでもないすっぴんのコピー盤で多くの?サン・ラ・リスナーのニーズに応えていましたが、オリジナル・サターン盤でも音質は十分粗悪なものだったようです。サターンは会場手売りや通販で販売し一般の取次流通には乗らなかったそうで、マニアックなレコード店が直接発注した店頭販売以外は一般のレコード店にも置かれなかったといいます。ジャケットの貼り込みもメンバーのお手製、レーベル用紙もレコード工場で余り用紙を使って原価削減していたそうですから盤質も最低の再生塩化ヴィニール(ジャンク品レコードを溶解・再利用したもの)を使い、レコードに気泡が入っているのも珍しくありませんでした。かくもローファイの極みですが、この時期のサン・ラの音楽はひどいプレスのアルバムでも本質は伝わってくると思います。ただし人には「サン・ラ=音が悪い」という見本のようなアルバムはお勧めできないので保留しますが、1962年~1964年のアーケストラはたった1台の中古の民生用テープレコーダーでこの魔法のような音楽を作っていたのです。
 まず冒頭のA1「Friendly Galaxy」からして尋常でないベースのリフを中心にしており、明らかに16ビートの感覚で演奏されています。フルート、本作唯一のエレキギター(カルヴィン・ニューボーン)、ピアノソロがいずれも短くフィーチャーされ、ソロ・パートのないバス・クラリネットが雰囲気を出しますが、これはマイルス・デイヴィスのエレクトリック・ファンク宣言アルバム『Bitches Brew』1970そのものの使用法です。ソロ・パートの短さもファンク度を高めています。ベースの凄さはA2「Solar Differentials」でも変わらず、ベースとポリリズムをなすピアノの低音リフはレニー・トリスターノのソロ・ピアノ作品を連想させます。1950年代にもメンバーのコーラス入りの曲はありましたが、この曲でヴォーカリゼーションにゲストをいれたのは大成功で、ピアノ・トリオにパーカッションのみの楽曲編成が中盤にスリリングなパーカッション・アンサンブルになります。A3「Space Aura」はようやく2管クインテットらしい曲ですが、まったくブルースには聴こえないマイナー・ブルースでマーシャル・アレンのアルト、ジョン・ギルモアのテナーのかけ合いが聴きものです。いわゆるフリージャズではなく4ビートをやっているのに質感はまったく4ビートではなくなっています。B面に移ると、B1「Love In Outer Space」は6/8のリズムですがスタッカートのベース・リフにパーカッションがポリリズムで絡み、ジョン・ギルモアのバス・クラリネットは記譜不可能なヴァーバルなラインと音色になっています。ピアノが聞こえないのでサン・ラはパーカッションに回っていると思われます。本作随一の大作、B2「Reflects Motion」は個別の楽器が異なるリズム・アクセントでテーマ演奏しているため最初まったくバラバラに聴こえますが、テナー・ソロ(本作のサックスはほとんどギルモアで、アレン、パット・パトリックは主にフルートとパーカッションでアンサンブル要員になっており、逆に手の空いたメンバー総動員のパーカッション・アンサンブルは管楽器以上に音楽性を決定しています)が入ると一気にまとまりを見せます。B3「Solar Symbols」は『Art Forms~』の打楽器のリヴァーヴ・パーカッション曲「Cluster of Galaxies」「Solar Drums」の続編で、『Art Forms~』では冒頭で新生面をアピールするものでしたが、楽曲水準や演奏の塾度(コンセプトの焦点)がさらに向上した本作ではエピローグ的な位置に置かれています。1962年録音・1965年発売でこんなにベースがでかく、ドラムスは音割れして、ピアノは地の底のようなリヴァーヴがかかり、管楽器のソロは極端に断片化し、しかもパーカッションが全編鳴りまくっている主流ジャズのアルバムはありませんでした。そう、まだこの時点ではあくまでサン・ラは主流ジャズのアーティストで、たまたま主流ジャズには他にアーケストラのようなサウンドを出すバンドがいなかったのです。

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