ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ The Velvet Underground and Nico - A Symphony of Sound (DVD Issue/Full Movie, 1966) : https://youtu.be/yPT1CojA7no - 54:14
The Velvet Underground and Nico - A Symphony of Sound (Full Movie, 1966) : https://youtu.be/MBruudQ9bgE - 64:17
*
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ The Velvet Underground and Nico - A Symphony of Sound (Abridged, 1966) : https://youtu.be/_R-Ot18Vm3I - 14:48
Recorded live at Andy Warhol's Factory, January 1966
Photography Directed by Paul Morrissey
Film Directed by Andy Warhol
Music Improvised by The Velvet Underground and Nico
[ The Velvet Underground and Nico ]
Lou Reed - lead guitar, ostrich guitar
John Cale - electric viola, bass guitar, sound effects
Sterling Morrison - bass guitar, rhythm guitar, lead guitar
Maureen Tucker - drums, percussion
Nico - maracas, tambourine, vocals
*The Velvet Underground & Nico (A Symphony of Sound): director Andy Warhol / producer Andy Warhol / director of photography Paul Morrissey / camera operator Andy Warhol / production Andy Warhol Films / music The Velvet Underground & Nico / original length 67 minute / year 1966 / cast The Velvet Underground & Nico; Ari Boulogne, Gerard Malanga, Billy name, Stephen Shore, Andy Warhol, New York polce agents.
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコのデビュー・アルバムは1967年3月に発表されましたが、ヴェルヴェット出演のアンディー・ウォホール主催の定期的ライヴ・パーティーは1966年1月に始まっており、1966年度のヴェルヴェットのライヴ音源を聴くとデビュー・アルバムに収録される全11曲のヴォーカル曲の大半は早くから出来上がっていたのがわかりますが、たとえば1966年11月4日のオハイオ州コロンバスでのライヴでは、
1. Melody Laughter - 29:25
2. Femme Fatale - 3:01
3. Venus In Furs - 6:04
4. The Black Angel's Death Song - 4:00
*. Lou Says - 1:18 *announcement
5. All Tomorrow's Parties - 6:19
6. I'm Waiting For The Man - 6:11
7. Heroin - 7:15
8. Run Run Run - 10:22
9. The Nothing Song - 30:21
と、デビュー・アルバムに収録されることになる2~8のヴォーカル曲7曲・36分に対して30分あまりのインストルメンタル・インプロヴィゼーション曲がライヴの最初と最後に演奏されているのが注目されます。ヴェルヴェットはセカンド・アルバム『White Light/White Heat』でLPのB面のほとんどを占める18分に及ぶ「Sister Ray」をレパートリーに加え、以降は同曲がライヴで30分以上のインストルメンタル・インプロヴィゼーションを含む曲として定着しますが、「Sister Ray」は一応ヴォーカル・パートも含む曲でした。
コロンバスでのライヴの「Melody Laughter」「The Nothing Song」は'90年代に発掘されるまでそもそも仮題にすぎなかったようですが、ともにセンター・トーナルを持つモード(音列)曲ともワンコードのオスティナート(リフレイン)曲とも取れる、手法の固定しないインストルメンタルの即興曲です。「Sister Ray」は合いの手程度のヴォーカル・パートが入る即興演奏が聴けますが、これがフランク・ザッパ&ザ・マザーズ・オブ・インヴェンジョンのデビュー・アルバム『Freak Out』'66と並んでイギリスのピンク・フロイドの『A Soucerful of Secrets』'68やHapsharsh and The Coloured Coatの『Featuring The Human Host and The Heavy Metal Kids』'68を通って西ドイツの実験派ロックのバンドの数々(Canの『Monster Movie』'69、Amon Duulの『Psychedelic Underground』'69、Amon Duul IIの『Phallus Dei』'69、Faustの『Faust』'70、Tangerine Dreamの『Electronic Meditation』'70、Guru Guruの『UFO』'70、Ash Ra Tempelの『Ash Ra Tempel』'71など)に受け継がれていったのです。
*
(Italian DVD Reissued "The Velvet Underground and Nico: A Symphony of Sound" Liner Cover & Disc Label)
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド自体はニューヨークを拠点に1965年からセッション活動を始めていましたが、プロのバンドとしてのデビューはウォホール主催のパーティーの専属バンドとして採用されてからで、中核メンバーのルー・リードは楽曲出版社契約のフリーのソングライター、ジョン・ケイルは音楽大学の現代音楽専攻、スターリング・モリソンは元々別のバンドでギターを弾いていたリードの友人でした。当時のセッション音源を聴くとドラムレスなのもあり風変わりなフォーク・ロックという感じです。ドラムスのモーリン・タッカーはモリソンの友人の妹でライヴ活動の必要から勧誘されました。ニコはフェリーニの『甘い生活』'60の出演でも知られるモデル出身のボヘミアン女優で、ウォホールがバンドのゲスト・シンガーおよびパフォーマーとして参加させ、ヴェルヴェットのデビュー・アルバムの後ソロ・シンガーとして独立します。本来30分あまりのインプロヴィゼーションを演奏するにはヴェルヴェットのメンバーの楽器演奏力では無謀極まりなく、リードはオーネット・コールマンの『Change of the Century』'60を生涯のフェヴァリット・アルバムに上げていますから'60年代のニューヨークを席巻したフリー・ジャズの演奏水準は十分以上に承知していたでしょう。ヴェルヴェットは表現力においてロック史上屈指の演奏力を誇るバンドでしたが、個々のメンバーを見るなら決してフリー・ジャズを演奏できる水準の音楽性や器用な演奏力は持ちあわせてはいませんでした。
このアンディー・ウォホールの音楽映画『A Symphony of Sound』でヴェルヴェットは60分にもおよぶ即興演奏をくり広げています。頭もなければ尻尾もない、およそ構成など考えない演奏ですがこれはフリー・ジャズでも現代音楽でもないロックン・ロールの発想による即興演奏であって、ここではメンバーはジャズの、またはシリアス・ミュージックのアンサンブルまたはソロイストである必要はなく、リズム・ギターとドラムスの一定のビートに乗ってサウンドを塗り重ねていくだけで演奏を成立させています。モリソンのギターとベースの持ち替えがモリソンの前に立っているニコに隠れてよく見えないのがもどかしく、ワンポイントのカメラが手持ち撮影でパンやズームをくり返すのがかえって煩わしいですが(ちなみにステージで遊んでいる男の子はニコの息子でアラン・ドロンとの私生児、アリ君です)、ヴェルヴェットですら当時は商業的アルバムでは録音を控えていたこうした完全即興のジャム・セッションがウォホールのアート・フィルム作品に残されているのは歴史の空隙を埋めて余りあります。なおフィルムの全長版は67分と記録されていますがセッティングやチューニングから始まり演奏終了後の撤収まで含んで67分になるため冒頭と終了部分をカットした版が数種類出回っており、リンクに引いた54分ヴァージョンが画質・音質も良いプリントのようです。ルー・リードのかっこいいリッケンバッカーのギター、ジョン・ケイルの変態エレクトリック・ヴィオラ、シンバルとスネアとバスドラの最小3点セットで決めるモーリン・タッカーのドラムスにご注目ください。ファッション的にもヴェルヴェットのメンバーは古びないクールなセンスがあったのが映像ではなおのこと印象に残ります。ただし演奏は相当垂れ流しですから美味しい部分だけならハイライト(Abridged)版でどうぞ。
The Velvet Underground and Nico - A Symphony of Sound (Full Movie, 1966) : https://youtu.be/MBruudQ9bgE - 64:17
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ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコ The Velvet Underground and Nico - A Symphony of Sound (Abridged, 1966) : https://youtu.be/_R-Ot18Vm3I - 14:48
Recorded live at Andy Warhol's Factory, January 1966
Photography Directed by Paul Morrissey
Film Directed by Andy Warhol
Music Improvised by The Velvet Underground and Nico
[ The Velvet Underground and Nico ]
Lou Reed - lead guitar, ostrich guitar
John Cale - electric viola, bass guitar, sound effects
Sterling Morrison - bass guitar, rhythm guitar, lead guitar
Maureen Tucker - drums, percussion
Nico - maracas, tambourine, vocals
*The Velvet Underground & Nico (A Symphony of Sound): director Andy Warhol / producer Andy Warhol / director of photography Paul Morrissey / camera operator Andy Warhol / production Andy Warhol Films / music The Velvet Underground & Nico / original length 67 minute / year 1966 / cast The Velvet Underground & Nico; Ari Boulogne, Gerard Malanga, Billy name, Stephen Shore, Andy Warhol, New York polce agents.
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド・アンド・ニコのデビュー・アルバムは1967年3月に発表されましたが、ヴェルヴェット出演のアンディー・ウォホール主催の定期的ライヴ・パーティーは1966年1月に始まっており、1966年度のヴェルヴェットのライヴ音源を聴くとデビュー・アルバムに収録される全11曲のヴォーカル曲の大半は早くから出来上がっていたのがわかりますが、たとえば1966年11月4日のオハイオ州コロンバスでのライヴでは、
1. Melody Laughter - 29:25
2. Femme Fatale - 3:01
3. Venus In Furs - 6:04
4. The Black Angel's Death Song - 4:00
*. Lou Says - 1:18 *announcement
5. All Tomorrow's Parties - 6:19
6. I'm Waiting For The Man - 6:11
7. Heroin - 7:15
8. Run Run Run - 10:22
9. The Nothing Song - 30:21
と、デビュー・アルバムに収録されることになる2~8のヴォーカル曲7曲・36分に対して30分あまりのインストルメンタル・インプロヴィゼーション曲がライヴの最初と最後に演奏されているのが注目されます。ヴェルヴェットはセカンド・アルバム『White Light/White Heat』でLPのB面のほとんどを占める18分に及ぶ「Sister Ray」をレパートリーに加え、以降は同曲がライヴで30分以上のインストルメンタル・インプロヴィゼーションを含む曲として定着しますが、「Sister Ray」は一応ヴォーカル・パートも含む曲でした。
コロンバスでのライヴの「Melody Laughter」「The Nothing Song」は'90年代に発掘されるまでそもそも仮題にすぎなかったようですが、ともにセンター・トーナルを持つモード(音列)曲ともワンコードのオスティナート(リフレイン)曲とも取れる、手法の固定しないインストルメンタルの即興曲です。「Sister Ray」は合いの手程度のヴォーカル・パートが入る即興演奏が聴けますが、これがフランク・ザッパ&ザ・マザーズ・オブ・インヴェンジョンのデビュー・アルバム『Freak Out』'66と並んでイギリスのピンク・フロイドの『A Soucerful of Secrets』'68やHapsharsh and The Coloured Coatの『Featuring The Human Host and The Heavy Metal Kids』'68を通って西ドイツの実験派ロックのバンドの数々(Canの『Monster Movie』'69、Amon Duulの『Psychedelic Underground』'69、Amon Duul IIの『Phallus Dei』'69、Faustの『Faust』'70、Tangerine Dreamの『Electronic Meditation』'70、Guru Guruの『UFO』'70、Ash Ra Tempelの『Ash Ra Tempel』'71など)に受け継がれていったのです。
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(Italian DVD Reissued "The Velvet Underground and Nico: A Symphony of Sound" Liner Cover & Disc Label)
ヴェルヴェット・アンダーグラウンド自体はニューヨークを拠点に1965年からセッション活動を始めていましたが、プロのバンドとしてのデビューはウォホール主催のパーティーの専属バンドとして採用されてからで、中核メンバーのルー・リードは楽曲出版社契約のフリーのソングライター、ジョン・ケイルは音楽大学の現代音楽専攻、スターリング・モリソンは元々別のバンドでギターを弾いていたリードの友人でした。当時のセッション音源を聴くとドラムレスなのもあり風変わりなフォーク・ロックという感じです。ドラムスのモーリン・タッカーはモリソンの友人の妹でライヴ活動の必要から勧誘されました。ニコはフェリーニの『甘い生活』'60の出演でも知られるモデル出身のボヘミアン女優で、ウォホールがバンドのゲスト・シンガーおよびパフォーマーとして参加させ、ヴェルヴェットのデビュー・アルバムの後ソロ・シンガーとして独立します。本来30分あまりのインプロヴィゼーションを演奏するにはヴェルヴェットのメンバーの楽器演奏力では無謀極まりなく、リードはオーネット・コールマンの『Change of the Century』'60を生涯のフェヴァリット・アルバムに上げていますから'60年代のニューヨークを席巻したフリー・ジャズの演奏水準は十分以上に承知していたでしょう。ヴェルヴェットは表現力においてロック史上屈指の演奏力を誇るバンドでしたが、個々のメンバーを見るなら決してフリー・ジャズを演奏できる水準の音楽性や器用な演奏力は持ちあわせてはいませんでした。
このアンディー・ウォホールの音楽映画『A Symphony of Sound』でヴェルヴェットは60分にもおよぶ即興演奏をくり広げています。頭もなければ尻尾もない、およそ構成など考えない演奏ですがこれはフリー・ジャズでも現代音楽でもないロックン・ロールの発想による即興演奏であって、ここではメンバーはジャズの、またはシリアス・ミュージックのアンサンブルまたはソロイストである必要はなく、リズム・ギターとドラムスの一定のビートに乗ってサウンドを塗り重ねていくだけで演奏を成立させています。モリソンのギターとベースの持ち替えがモリソンの前に立っているニコに隠れてよく見えないのがもどかしく、ワンポイントのカメラが手持ち撮影でパンやズームをくり返すのがかえって煩わしいですが(ちなみにステージで遊んでいる男の子はニコの息子でアラン・ドロンとの私生児、アリ君です)、ヴェルヴェットですら当時は商業的アルバムでは録音を控えていたこうした完全即興のジャム・セッションがウォホールのアート・フィルム作品に残されているのは歴史の空隙を埋めて余りあります。なおフィルムの全長版は67分と記録されていますがセッティングやチューニングから始まり演奏終了後の撤収まで含んで67分になるため冒頭と終了部分をカットした版が数種類出回っており、リンクに引いた54分ヴァージョンが画質・音質も良いプリントのようです。ルー・リードのかっこいいリッケンバッカーのギター、ジョン・ケイルの変態エレクトリック・ヴィオラ、シンバルとスネアとバスドラの最小3点セットで決めるモーリン・タッカーのドラムスにご注目ください。ファッション的にもヴェルヴェットのメンバーは古びないクールなセンスがあったのが映像ではなおのこと印象に残ります。ただし演奏は相当垂れ流しですから美味しい部分だけならハイライト(Abridged)版でどうぞ。