'40年代の初期ベルイマン作品はまだ習作の観があり、ヒット実績もありませんが、後年大家となってからの作品では整理されてしまった混沌とした要素やまだ吟味されず生のままで取り入れられた素材が露わになっており、過大な期待を抱かなければ案外入口としてはのちの著名な代表作よりも率直に楽しめるかもしれません。ベルイマンの代表作と言われるものはたいがい構えが大きく、食わず嫌いの人も多ければ先入観が強すぎて鑑賞者に不消化感を抱かせる場合も多い作風で、一部の批評家が引き合いに出す(または関連を否定する)カール・Th・ドライヤーやロベール・ブレッソンのような直截的な訴求力に欠けるきらいがありますが、初期作品はその点で癖の強くない「普通の映画」(ただし同時代スウェーデン流の)として観ることができます。監督デビュー年1946年に『危機』『われらの恋に雨が降る』を発表したベルイマンは翌1947年はアルフ・シューベルイと並ぶ大ヴェテラン監督グスタフ・モランデル(1888-1973)の新作『顔のない女』にモランデルとの合作オリジナル脚本執筆で起用されたので、自己の監督作品は『インド行きの船』1本になりました。翌'48年には再び『闇の中の音楽』『愛欲の港』の2本を監督し、以降年間2本の製作ペースは'50年代まで続いていきます。年間新作劇映画平均60本台の映画小国スウェーデン映画界で新人ベルイマンが年間2本を発表していたのは、才能に期待を寄せられていたのが前提ですが、そのため格別な製作環境を与えられていたというよりも戦後スウェーデン映画界の人材難によるところも大きいように思われます。その機会を最大限に利用して着実に成長していったからこそベルイマンは国際的な監督にまで登り詰めることができたのです。
●7月4日(火)
『インド行きの船』Skepp till India land (スウェーデン/マルムステット・プロ'47)*95min, B/W, Standard
●7月5日(水)
『闇の中の音楽』Musik i morker (スウェーデン/テラフィルム'48)*84min, B/W, Standard
●7月6日(木)
『愛欲の港』Hamnstad (スウェーデン/スヴェンスク・フィルム'48)*97min, B/W, Standard
*[ 原題の表記について ]スウェーデン語の母音のうちaには通常のaの他にauに発音の近いaとaeに近いaの3種類、oには通常のoの他にoeに発音の近い2種類があり、それぞれアクセント記号で表記されます。それらのアクセント記号は機種依存文字でブログの文字規格では再現できず、auやoeなどに置き換えると綴字が変わり検索に不便なので、不正確な表記ですがアクセント記号は割愛しました。ご了承ください。
●7月4日(火)
『インド行きの船』Skepp till India land (スウェーデン/マルムステット・プロ'47)*95min, B/W, Standard
●7月5日(水)
『闇の中の音楽』Musik i morker (スウェーデン/テラフィルム'48)*84min, B/W, Standard
●7月6日(木)
『愛欲の港』Hamnstad (スウェーデン/スヴェンスク・フィルム'48)*97min, B/W, Standard
*[ 原題の表記について ]スウェーデン語の母音のうちaには通常のaの他にauに発音の近いaとaeに近いaの3種類、oには通常のoの他にoeに発音の近い2種類があり、それぞれアクセント記号で表記されます。それらのアクセント記号は機種依存文字でブログの文字規格では再現できず、auやoeなどに置き換えると綴字が変わり検索に不便なので、不正確な表記ですがアクセント記号は割愛しました。ご了承ください。