特に熱心なキューブリック映画のファンでもなければ熱心な映画観客でもないので、今回ご紹介する3作がキューブリックのSF3部作と言われているとは最近初めて知りました。確かに年代的にも連続して製作され、設定は大なり小なり空想的なものですが、作品のカラーはまったく異なります。これら3作はいずれも原案・原作小説から起こされたものですが、『博士の異常な愛情』は近未来に仮想したシリアスな軍事サスペンス小説をシリアスを通り越してブラック・コメディに仕立てた全人類破滅映画、『2001年宇宙の旅』は純SF短編小説を発端部分の原案にキューブリックが作者と長編規模にシナリオ化したもの、『時計じかけのオレンジ』は純文学ジャンルの前衛的近未来ディストピア小説の忠実な映画化、と題材、アプローチ、手法と作風のいずれもが三者三様に異なります。いずれにせよ『スパルタカス』で一流監督の地位に足をかけ、『ロリータ』で前途が危ぶまれたものの『博士の異常な愛情』と『2001年宇宙の旅』はカルト作家にしてヒットメーカーとしてのキューブリックの名声を確立した2作と言ってよく、原作の性格やアプローチに違いはあっても『博士の~』と『時計じかけの~』はきついジョークの効いたブラック・ユーモア作品と括ることができ、『時計じかけ~』以後のキューブリック映画はすべてブラック・ユーモアが基本になっているとも言えるでしょう。あのホラー映画『シャイニング』や『アイズ ワイド シャット』ですら笑いとぎりぎりの線で恐怖が成立しているのです。
(なお例によってデータはダゲレオ出版『キューブリック』'88に拠りました。)
●6月24日(土)
『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb (英/米コロンビア'64)*95min, B/W, Widescreen
●6月25日(日)
『2001年宇宙の旅』2001:A Space Odyssey (米MGM'68)*148min, Technicolor & Metrocolor, Cinerama (Super Panavision 70)
●6月26日(月)
『時計じかけのオレンジ』A Clockwork Orange (英ワーナー・ブラザース'71)*137min, Color, Widescreen (European Vista)
(なお例によってデータはダゲレオ出版『キューブリック』'88に拠りました。)
●6月24日(土)
『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb (英/米コロンビア'64)*95min, B/W, Widescreen
●6月25日(日)
『2001年宇宙の旅』2001:A Space Odyssey (米MGM'68)*148min, Technicolor & Metrocolor, Cinerama (Super Panavision 70)
●6月26日(月)
『時計じかけのオレンジ』A Clockwork Orange (英ワーナー・ブラザース'71)*137min, Color, Widescreen (European Vista)