(1961 Reissud El Saturn "Jazz in Silhouette" LP Front Cover)
Recorded at El Saturn studio, Chicago, March 6, 1959
Released by El Saturn Records LP5786, May 1959
All tracks written by Sun Ra, except where noted
Side A: (originally Side B)
A1. Enlightenment (Hobart Dotson, Ra) - 5:02
A2. Saturn - 3:37
A3. Velvet - 3:18
A4. Ancient Aiethopia - 9:04
Side B: (originally Side A)
B1. Hours After (Ra, Everett Turner) - 3:41
B2. Horoscope - 3:43
B3. Images - 3:48
B4. Blues at Midnight - 11:56
[ Le Sun Ra and His Arkestra]
Sun Ra - piano, celeste, gong
Hobart Dotson - trumpet
Marshall Allen - alto saxophone, flute
James Spaulding - alto saxophone, flute, percussion
John Gilmore - tenor saxophone, percussion
Bo Bailey - trombone
Pat Patrick - baritone saxophone, flute, percussion
Charles Davis - baritone saxophone, percussion
Ronnie Boykins - bass
William Cochran - drums
*
(1961 Reissud El Saturn "Jazz in Silhouette" LP Liner Cover)
サン・ラの場合は50年代の発表作品3枚もすでにアルバム・ジャケットのセンスも相当なものでした。『Jazz in Silhouette』のオリジナル・ジャケットはCDヴァージョンでは一切採用されていないので、サターンからA面とB面を現行の通りに改訂した際に改めたジャケットが公式ジャケットとして標準になっています。この再プレス版公式ジャケットは1961年の再発売から用いられ、タイトルのレイアウトに微妙な違いのある2ヴァージョンがあり、レコード番号も同一だから再発ジャケットの発売順も判明しません。サン・ラの生前にCDジャケット(Evidence盤)に採用された'61年版再発ジャケットを決定版と見なすのが妥当でしょう。初回プレスと再発盤以降ではA面とB面が逆転して収録され、CDも改訂されたA面・B面の順に収録されています。これは相当アルバムの印象を変えるので、各面の完結感が強いため「Enlightenment」から始まり「Ancient Aiethopia」で終わるA面から聴くか、「Hours After」から始まり「Blues at Midnight」で終わるB面から聴くかでアルバム全体の構成まで変わってしまいます。簡単に言うとA面はビッグバンド・サイド、B面はブルース・サイドで、各面ラストに10分前後の大作を持ってきているためなおのこと強い完結感があります。つまり1959年の初回プレスではA面がブルース・サイド、B面がビッグバンド・サイドだったことになり、初めからプレスミスだったのかもしれません。
*
(Original El Saturn "Jazz in Silhouette" LP Various Color Front Cover & Original Side B Label)
本作『Jazz in Silhouette』は地元シカゴの地方紙では発売翌月に話題作として記事が載り、サン・ラ初のヒット・アルバムになっています。ただし地元シカゴのローカルでの話で、全国的にはサン・ラはジャズマンと一部の専門家にしか知られていない存在でした。『Jazz in Silhouette』はアルバム10枚あまりの未発表曲や既発表曲からベスト選曲の上で再録音したアルバムで、チャールズ・ミンガスでいえばやはり未発表曲や既発表曲からベスト選曲・再録音したアルバム『Mingus Ah Um』1959に当たります。偶然ですが同作は『Jazz in Silhouette』が発売された1959年5月に録音されています。ミンガス盤は名盤の誉れ高いアルバムですがサン・ラ盤も満を持した名曲揃いで、ビッグバンド・サイド4曲、ブルース・サイドのトップ曲とラスト曲「Hours After」「Blues at Midnight」など全編ハイライト・ナンバーばかりと言えます。正統的ビッグバンド曲風の「Enlightenment」「Saturn」と典型的なAA'BA'形式のハード・バップ曲「Velvet」が実験的な「Ancient Aiethopia」が並んでも違和感がないのはアーケストラのサウンドに一体感と統一感があるからでしょう。ブルース・サイド中盤2曲は「Velvet」と同じAA'BA'形式でブルースではなく、「Horoscope」はスウィンギーで「Images」はソロ・ピアノのリリカルな前奏から始まってスウィンギーなバンド・サウンドになる名曲ですが、B面全体の起承転結に上手くはまっており、やはり曲が良さが光ります。ブルースでもAA'BA'でも微妙なシンコペーションと意外な代用コードの使用による部分転調を巧みに織り込んで、セロニアス・モンクともミンガスとも似て非なる個性的作風を確立しています。もっとも少し後輩のモンクやミンガスより時期的には遅く、逆影響がないとは言えません。しかしこのレベルまで来たら影響を云々する必要もないでしょう。ただしニューヨークを本拠地にしたモンク、ミンガス、ホレス・シルヴァーらほど注目を集められなかったのは、アーケストラの活動があくまでもシカゴのジャズ・シーンに縄張りを限定していたからで、シカゴのレギュラー・バンドなら10人編成のバンドを維持できましたが激戦区ニューヨークでは10人編成の中規模ビッグバンドの運営は困難であり、それがサン・ラのニューヨーク進出を遅らせたのは間違いありませを。シカゴ在住のままでもニューヨークのレーベルからアルバム発売がされれば全国的注目を集められる可能性はありましたが、当時はニューヨークでもロサンゼルスでも一流ジャズマンが供給過剰なほど溢れていました。アーケストラのジョン・ギルモアにはクリフォード・ジョーダンとの2テナー・アルバムがブルー・ノートにあり(1957年)、やはりアーケストラのアルト奏者ジェームス・スポールディングは60年代のフレディ・ハバード(トランペット)のブルー・ノート作品の常連になります。アーケストラのメンバーは全米第3の大都市シカゴでも生え抜きの凄腕が揃っていました。12分の長丁場があっという間の「Blues at Midnight」などあまりに見事なソロの応酬に笑ってしまうほどですが、何しろトランペット、トロンボーン、5サックス(アルト、テナー、バリトン随時持ち替えでフルート、パーカッション兼任)と管だけで7人もいる上、ベースとドラムスもソロの取れる腕前で、その上サン・ラがエレクトリック・ピアノをチェレスタ風の音色で弾き倒します。『Jazz in Silhouette』はすこぶる良い出来ですが、サン・ラ作品ではもっともハード・バップに近づいたアルバムだから次に他の代表作を聴くと落差に愕然とするかもしれませんし、ジャズは何よりハード・バップという人が聴くと本作は濃厚すぎてもたれます。もしブルー・ノートで制作されたとしてもやはり幻の未発表アルバムになっていたかもしれないと思うと、ここまで歩み寄ってもサン・ラのジャズはまだまだニューヨークのジャズとは相容れないものだったということになります。
Recorded at El Saturn studio, Chicago, March 6, 1959
Released by El Saturn Records LP5786, May 1959
All tracks written by Sun Ra, except where noted
Side A: (originally Side B)
A1. Enlightenment (Hobart Dotson, Ra) - 5:02
A2. Saturn - 3:37
A3. Velvet - 3:18
A4. Ancient Aiethopia - 9:04
Side B: (originally Side A)
B1. Hours After (Ra, Everett Turner) - 3:41
B2. Horoscope - 3:43
B3. Images - 3:48
B4. Blues at Midnight - 11:56
[ Le Sun Ra and His Arkestra]
Sun Ra - piano, celeste, gong
Hobart Dotson - trumpet
Marshall Allen - alto saxophone, flute
James Spaulding - alto saxophone, flute, percussion
John Gilmore - tenor saxophone, percussion
Bo Bailey - trombone
Pat Patrick - baritone saxophone, flute, percussion
Charles Davis - baritone saxophone, percussion
Ronnie Boykins - bass
William Cochran - drums
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(1961 Reissud El Saturn "Jazz in Silhouette" LP Liner Cover)
サン・ラの場合は50年代の発表作品3枚もすでにアルバム・ジャケットのセンスも相当なものでした。『Jazz in Silhouette』のオリジナル・ジャケットはCDヴァージョンでは一切採用されていないので、サターンからA面とB面を現行の通りに改訂した際に改めたジャケットが公式ジャケットとして標準になっています。この再プレス版公式ジャケットは1961年の再発売から用いられ、タイトルのレイアウトに微妙な違いのある2ヴァージョンがあり、レコード番号も同一だから再発ジャケットの発売順も判明しません。サン・ラの生前にCDジャケット(Evidence盤)に採用された'61年版再発ジャケットを決定版と見なすのが妥当でしょう。初回プレスと再発盤以降ではA面とB面が逆転して収録され、CDも改訂されたA面・B面の順に収録されています。これは相当アルバムの印象を変えるので、各面の完結感が強いため「Enlightenment」から始まり「Ancient Aiethopia」で終わるA面から聴くか、「Hours After」から始まり「Blues at Midnight」で終わるB面から聴くかでアルバム全体の構成まで変わってしまいます。簡単に言うとA面はビッグバンド・サイド、B面はブルース・サイドで、各面ラストに10分前後の大作を持ってきているためなおのこと強い完結感があります。つまり1959年の初回プレスではA面がブルース・サイド、B面がビッグバンド・サイドだったことになり、初めからプレスミスだったのかもしれません。
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(Original El Saturn "Jazz in Silhouette" LP Various Color Front Cover & Original Side B Label)
本作『Jazz in Silhouette』は地元シカゴの地方紙では発売翌月に話題作として記事が載り、サン・ラ初のヒット・アルバムになっています。ただし地元シカゴのローカルでの話で、全国的にはサン・ラはジャズマンと一部の専門家にしか知られていない存在でした。『Jazz in Silhouette』はアルバム10枚あまりの未発表曲や既発表曲からベスト選曲の上で再録音したアルバムで、チャールズ・ミンガスでいえばやはり未発表曲や既発表曲からベスト選曲・再録音したアルバム『Mingus Ah Um』1959に当たります。偶然ですが同作は『Jazz in Silhouette』が発売された1959年5月に録音されています。ミンガス盤は名盤の誉れ高いアルバムですがサン・ラ盤も満を持した名曲揃いで、ビッグバンド・サイド4曲、ブルース・サイドのトップ曲とラスト曲「Hours After」「Blues at Midnight」など全編ハイライト・ナンバーばかりと言えます。正統的ビッグバンド曲風の「Enlightenment」「Saturn」と典型的なAA'BA'形式のハード・バップ曲「Velvet」が実験的な「Ancient Aiethopia」が並んでも違和感がないのはアーケストラのサウンドに一体感と統一感があるからでしょう。ブルース・サイド中盤2曲は「Velvet」と同じAA'BA'形式でブルースではなく、「Horoscope」はスウィンギーで「Images」はソロ・ピアノのリリカルな前奏から始まってスウィンギーなバンド・サウンドになる名曲ですが、B面全体の起承転結に上手くはまっており、やはり曲が良さが光ります。ブルースでもAA'BA'でも微妙なシンコペーションと意外な代用コードの使用による部分転調を巧みに織り込んで、セロニアス・モンクともミンガスとも似て非なる個性的作風を確立しています。もっとも少し後輩のモンクやミンガスより時期的には遅く、逆影響がないとは言えません。しかしこのレベルまで来たら影響を云々する必要もないでしょう。ただしニューヨークを本拠地にしたモンク、ミンガス、ホレス・シルヴァーらほど注目を集められなかったのは、アーケストラの活動があくまでもシカゴのジャズ・シーンに縄張りを限定していたからで、シカゴのレギュラー・バンドなら10人編成のバンドを維持できましたが激戦区ニューヨークでは10人編成の中規模ビッグバンドの運営は困難であり、それがサン・ラのニューヨーク進出を遅らせたのは間違いありませを。シカゴ在住のままでもニューヨークのレーベルからアルバム発売がされれば全国的注目を集められる可能性はありましたが、当時はニューヨークでもロサンゼルスでも一流ジャズマンが供給過剰なほど溢れていました。アーケストラのジョン・ギルモアにはクリフォード・ジョーダンとの2テナー・アルバムがブルー・ノートにあり(1957年)、やはりアーケストラのアルト奏者ジェームス・スポールディングは60年代のフレディ・ハバード(トランペット)のブルー・ノート作品の常連になります。アーケストラのメンバーは全米第3の大都市シカゴでも生え抜きの凄腕が揃っていました。12分の長丁場があっという間の「Blues at Midnight」などあまりに見事なソロの応酬に笑ってしまうほどですが、何しろトランペット、トロンボーン、5サックス(アルト、テナー、バリトン随時持ち替えでフルート、パーカッション兼任)と管だけで7人もいる上、ベースとドラムスもソロの取れる腕前で、その上サン・ラがエレクトリック・ピアノをチェレスタ風の音色で弾き倒します。『Jazz in Silhouette』はすこぶる良い出来ですが、サン・ラ作品ではもっともハード・バップに近づいたアルバムだから次に他の代表作を聴くと落差に愕然とするかもしれませんし、ジャズは何よりハード・バップという人が聴くと本作は濃厚すぎてもたれます。もしブルー・ノートで制作されたとしてもやはり幻の未発表アルバムになっていたかもしれないと思うと、ここまで歩み寄ってもサン・ラのジャズはまだまだニューヨークのジャズとは相容れないものだったということになります。