前作『マン・ハント』(米20世紀フォックス'41)の後フリッツ・ラングは監督デビュー前のサミュエル・フラー(1912-1997)原案のロンドン空襲戦争映画『Confirm or Deny』(日本未公開)には企画段階で降板、ジャン・ギャバンのハリウッド・デビュー作『夜霧の港』は製作半ばで降板し、この2作は『化石の森』'36、『マルクス捕物帖』'46などで知られるアーチー・メイヨ(1891-1968)が完成させることになります。企画段階までしか関わらなかった『Confirm or Deny』はともかく『夜霧の港』は実質的には共同監督作とされるもので、こうした例はシュトロハイムの監督で始まり途中で製作会社によって監督が交代させられ、後任者ルパート・ジュリアン単独名義の監督作になった『メリー・ゴー・ラウンド』'23の昔からハリウッドの製作システムではよくあることでした。サミュエル・フラー原案のフリッツ・ラング作品が実現しなかったのはつくづく惜しまれますが、アンソニー・マンの傑作『ウィンチェスター銃'73』'50も先にラングのもとに持ち込まれた企画だったそうで、ジョン・フォードへの企画『マン・ハント』がラングの作品になって良かったのと同様、『ウィンチェスター銃'73』もアンソニー・マン作品に落ち着いて良かったと言えるでしょう。『夜霧の港』は昨年末に日本初ソフト化された珍品(コスミック出版『ジャン・ギャバンの世界』10枚組DVD収録、定価2000円)、また今回ご紹介する『死刑執行人もまた死す』'43、『恐怖省』'44は戦時下に堂々製作されたラング得意のスパイ・サスペンスで、ことに『死刑執行人も~』はラングの最高傑作に上げる評者も多い力作です。
●5月23日(火)
『夜霧の港』Moontide (米20世紀フォックス'42)*95mins, B/W *アーチー・メイヨ名義、ノンクレジット
●5月24日(水)
『死刑執行人もまた死す』Hangmen Also Die! (米ユナイト'43)*135mins, B/W
●5月25日(木)
『恐怖省』Ministry of Fear (米パラマウント'44)*86mins, B/W
●5月23日(火)
『夜霧の港』Moontide (米20世紀フォックス'42)*95mins, B/W *アーチー・メイヨ名義、ノンクレジット
●5月24日(水)
『死刑執行人もまた死す』Hangmen Also Die! (米ユナイト'43)*135mins, B/W
●5月25日(木)
『恐怖省』Ministry of Fear (米パラマウント'44)*86mins, B/W