Image may be NSFW.
Clik here to view.
The Byrds - Fifth Dimension (Columbia, 1966) Full Album (Stereo Version/1996 remix CD reissued with Bonus Tracks) : https://www.youtube.com/playlist?list=PLCRX5lnJmahGcRtc7trbAgHErVRPCFH0o
Recorded at Columbia Studios, Hollywood, CA, January 24 - May 25, 1966
Released by Columbia Records CL 2549 (Mono), CS 9349 (Stereo), July 18, 1966 (September 22, 1966/UK)
Produced by Allen Stanton
(Side 1)
A1. 霧の5次元 5D (Fifth Dimension) (Jim McGuinn) - 2:33
A2. ワイルド・マウンテン・タイム Wild Mountain Thyme (traditional, arranged Jim McGuinn, Chris Hillman, Michael Clarke, David Crosby) - 2:30
A3. ミスター・スペイス・マン Mr. Spaceman (Jim McGuinn) - 2:09
A4. アイ・シー・ユー I See You (Jim McGuinn, David Crosby) - 2:38
A5. ホワッツ・ハプニング What's Happening?!?! (David Crosby) - 2:35
A6. 死んだ少女 I Come and Stand at Every Door (Nazim Hikmet) - 3:03
(Side 2)
B1. 霧の8マイル Eight Miles High (Gene Clark, Jim McGuinn, David Crosby) - 3:34
B2. ヘイ・ジョー Hey Joe (Where You Gonna Go) (Billy Roberts) - 2:17
B3. キャプテン・ソウル Captain Soul (Jim McGuinn, Chris Hillman, Michael Clarke, David Crosby) - 2:53
B4. ジョン・ライリー John Riley (traditional, arranged Jim McGuinn, Chris Hillman, Michael Clarke, David Crosby) - 2:57
B5. ジェット・ソング 2-4-2 Fox Trot (The Lear Jet Song) (Jim McGuinn) - 2:12
(1996 CD reissue bonus tracks)
12. 何故 Why [Single Version] (Jim McGuinn, David Crosby) - 2:59
13. アイ・ノウ・マイ・ライダー I Know My Rider (I Know You Rider) (traditional, arranged Jim McGuinn, Gene Clark, David Crosby) - 2:43
14. サイコドラマ・シティ Psychodrama City (David Crosby) - 3:23
15. 霧の8マイル Eight Miles High [Alternate RCA Version] (Gene Clark, Jim McGuinn, David Crosby) - 3:19
16. 何故 Why [Alternate RCA Version] (Jim McGuinn, David Crosby) - 2:40
17. ジョン・ライリー John Riley [Instrumental] (traditional, arranged Jim McGuinn, Chris Hillman, Michael Clarke, David Crosby) to Promotional The Byrds Interview - 16:53
(Singles Data)
"Eight Miles High" b/w "Why" (Columbia 43578) March 14, 1966 (US #14, UK #24)
"5D (Fifth Dimension)" b/w "Captain Soul" (Columbia 43702) June 13, 1966 (US #44)
"Mr. Spaceman" b/w "What's Happening?!?!" (Columbia 43766) September 6, 1966 (US #36)
[ The Byrds ]
Jim McGuinn - lead guitar, vocals
David Crosby - rhythm guitar, vocals
Chris Hillman - electric bass, vocals
Michael Clarke - drums;
(Additional personnel)
Gene Clark - vocals on tracks B1, 12, 15, and 16; tambourine on track 15.; harmonica on track B3
Van Dyke Parks - organ on track A1
Allen Stanton - string section arrangement (tracks A2, B4)
前回のロック記事でヤードバーズ最大瞬間風速アルバム『Yardbirds (Roger the Engineer)』1966.7.15/UK, 1966.8/US (as "Over Under Sideways Down")を取り上げ「次回はヤードバーズの次作で最終作『Little Games』を」と予告しましたが、アメリカではヤードバーズのアルバムの3日後に発売されたザ・バーズの本作をひさしぶりに聴いてこちらを先にしました。1966年7月時点でビートルズの最新アルバムは『Rubber Soul』1965.12、ストーンズは『Aftermath』1966.4です。ビートルズの最新シングル「Paperback Writer c/w Rain」1966.6とストーンズの最新シングル「Paint It, Black c/w Long Long While (UK), Stupid Girl (US)」1966.5がともに英米No.1ヒットになっていたとはいえ「Over Under Sideways Down」を収めた『Yardbirds (Roger the Engineer)』、「Eight Miles High」を収めた『Fifth Dimension』は『Rubber Soul』と『Aftermath』に追いつき追い越したアルバムになりました。それはビートルズの次作『Revolver』1966.8にも引けをとらず、ストーンズの次作『Between the Buttons』1967.1もその域までは届かなかったのです。そして『Fifth Dimension』は先駆性と楽曲の充実、統一感では『Yardbirds (Roger the Engineer)』よりも勝ったアルバムでした。バーズの斬新で多彩なオリジナル曲とムードの統一、優れたヴォーカル、詩的で知的な歌詞は、アレンジと演奏力こそ革新的ながら作曲はブルースやトラッド、ポップスやロックンロールの下敷きが透けて見える上に統一性に欠け、歌詞など適当でヴォーカルの弱いヤードバーズにはおよびもつかない総合的な実力を見せつけたものでした。バーズには実力伯仲したメンバーの才能の競いあいが生むスリリングなアンサンブルがあり、天才ギタリスト、ジェフ・ベックを音楽的リーダーのサミュエル=スミスがバンドの枠に治めたヤードバーズとはコンセプトに大きな違いがありました。ストーンズの『Between the Buttons』は『Yardbirds (Roger the Engineer)』とキンクスの『Face To Face』1966.11の多様性に追従してバンドの本領からやや(かなり)離れたアルバムになり、ビートルズは『Revolver』をもってしても『Fifth Dimension』のバーズの到達点を撃ち抜けなかったのです。
1966年にバーズと並んだバンドと言えばビートルズ、ヤードバーズの他にはラヴ、ビーチ・ボーイズ、ディラン、フランク・ザッパ&マザーズ、バタフィールド・ブルース・バンド、ブルース・プロジェクトらアメリカのバンド(アーティスト)ばかりでした。キンクス、ザ・フーのアルバムでさえ『Fifth Dimension』の完成度にはおよばないのです。もっともビートルズが次作『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』1967.6を発表するとすべてのバンドがひっくり返りましたが、全米年間アルバムチャートNo.1はジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスのデビュー作『Are You Experienced ?』1967.5でした。『Sgt. Pepper's~』と『Are You Experienced ?』の前ではたち打ちできるバンドはいないので、1967年はロックの新旧交代の年になったのです。しかしジミ1966年12月のデビュー・シングル「Hey Joe」は大胆にアレンジこそされてはいえ、本作で見られる通りもともとバーズのレパートリーでした(バーズ以前にザ・リーヴス、ラヴの録音がありますが、両者ともバーズの前座バンドで、アレンジはバーズ版のコピーです)。 バーズについては、ドアーズのジョン・デンズモア自伝によるとロサンゼルスのトップ・バンドはビーチ・ボーイズが全国区バンドになった後はNo.1がバーズで、次いでラヴだったそうで、ドアーズはラヴからちょうど1年遅れに同じエレクトラ・レコーズからデビューしました。ドアーズ解散後15年あまりを経てミュージシャンを辞め鬱に陥ったデンズモアは精神療法を受けて「バーズのドラマーになりたかったのに!」と号泣したそうです。暗黒大陸じゃがたらの某氏(故・江戸アケミ以外のメンバーです)が急性精神疾患で入院した際「俺はキース・リチャーズだ!」と絶叫し続けていたという話を連想します。
*
(Original Columbia "Fifth Dimension" LP Liner Cover & Side 1 Label)
Image may be NSFW.
Clik here to view.
Image may be NSFW.
Clik here to view.
全11曲入り29分半のオリジナルLP『Fifth Dimension』も素晴らしいものですが、当時イギリスのアルバムはAB面各7曲・全14曲40分が標準だったのに較べていかにも曲が少なく短いアルバムなのはアメリカのレコード協会規定では1枚のアルバムに収録できる著作権の登録限度があったからです。それは1967年にようやく緩和されますが、本作は1966年発売なのでアルバム未収録に終わったシングルB面曲、未発表曲がありました。CDボーナス・トラックに収められた「Why」「I Know My Rider」「Psychodrama City」などがそれで、「Why」は再録音ヴァージョンが次作『Younger Than Yesterday』1967.7に収録されますが「I Know My Rider」「Psychodrama City」は前期バーズ再評価が高まった1987年の未発表曲集『Never Before』まで陽の目を見ませんでした。いずれもアルバム本編未収録になったのが信じがたい佳曲で、もし『Fifth Dimension』がこの3曲も収録された全14曲仕様だったら後発のビートルズの『Revolver』さえもたち打ちできないアルバムになっていたとさえ言えます。『Yardbirds (Roger the Engineer)』が同時発売のアルバム未収録シングル「Happenings Ten Years Time Ago c/w Psycho Daisies」を含む全14曲仕様だったら『Fifth Dimension』に匹敵し得たでしょうか。バーズにはエレキ12弦ギターのラーガ奏法と4声のヴォーカル・ハーモニー、さらにボブ・ディランに触発された詩的な歌詞、東洋文化や社会的関心(A6はトルコの詩人ナジム・ヒクメット[1902-1963]作の広島で原爆死した少女を詠んだ詩によるものです)、伝統的フォークやブルース、ジャズ、ポップス、ロックンロールからの実地的素養などイギリスのバンドに決定的に差をつけた天性のミクスチャー感覚がありました。イギリス、アメリカの多くのバンドがビートルズ、ストーンズと同等にバーズをもっとも進んだロック・バンドとして多大な影響を受けたのも(初期クイーンすらバーズのカヴァー曲をインディー・レーベルからリリースしています)バーズがそれだけの可能性を秘めたバンドだったからです。バーズの全12作あるオリジナル・アルバム(ちなみにヤードバーズは全3作)はビートルズの全13作と並んで1作ごとに金字塔と言えるものですが、まずこの1枚と上げたいのは本作(1966.7)か前作『Turn ! Turn ! Turn !』1965.12、次作『Younger Than Yesterday』1967.7でしょう。これらはビートルズの『Help !』1965.8、『Rubber Soul』1965.12、『Revolver』1966.8、ボブ・ディランの『Bringing It All Back Home』1965.3、『Highway 61 Revisited』1965.8、『Blonde on Blonde』1966.5とともに不朽の生命力を誇るアルバムです。歴代メンバーの半数が故人のためバーズの本当のリユニオンはかないませんが、バーズの全アルバムは生涯くり返し聴くに値するものです。