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盲腸炎入院日記(再掲載・2011年8月8日~22日)

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(この入院日記はメモ用紙に書かれ、つい最近まで書棚に紛れていました。その時に一度載せましたが、無難な内容で再読しても案外面白いので再掲載します。これは2年半に5回-うち4回は精神科入院-していた時期の最後で唯一の精神科以外の入院になりました)。

天候=ずっと晴れ(たぶん)
2011年8月8日(月)
 午後一時頃緊急搬送即入院~13日(土)まで点滴のみ(消炎・鎮痛剤、栄養点滴)、意識なし、昼夜安静で昏睡、意識が戻ると12日(金)の午後だったので驚く。昏睡自体は点滴による麻酔作用。その日の夕方には談話室まで点滴を引っ張って行動許可(尿意もあるため)。談話室のテレビは東京MX-TVが入らないので落胆。詳細部位不明の腸炎が発見されたための入院だが、切除せず鎮静剤で炎症を消炎治療、なので正確には盲腸付近?の腸炎入院になる。
 予約先のかかりつけ医院に一通り電話するが、盆休みに入っていたり、まだ退院予定日がわからないので振り替えしようがない。常用薬は「おくすり手帳」を持参していたので、通院先に確認の上院内で処方される手配がされていた。常用薬の通院先には入院が伝わっている、ということだ。(13日記)

13日(土)夕方に点滴外される。夕食から流動食。『バクマン。』高校野球で休止、他に見たいテレビ番組もなく、まだ点滴の効果からか早く眠る。

14日(日)朝食三分刻みになる。ただしパン粥は味付けもなく脂浮きがしておいしくない。パン粥は外してもらう。談話室の書架から夏目漱石『文鳥・夢十夜』(新潮文庫・表題作他『永日小品』『思い出すことなど』)表題作以外の方が面白い。なぜか入院のたび漱石…。秋本治『集英社ジャンプRemix・こち亀2000』(02年)三冊。夕食五分刻み。主食は全粥になる。

15日(月)全粥、七分刻み。原武史『昭和天皇』(岩波新書08年)。入院期間は二週間と目安を告げられる。炎症が治ってから一週間入院静養ということ。つまりあと一週間。

16日(火)三分粥。H・G・ウェルズ『宇宙戦争』(ハヤカワSF文庫05年)。原書1898年。リメイク映画公開による新訳か。手法はリアリズム小説なので異化効果がすごく新鮮。再読の機会があって良かった。九十九森・さとう輝『江戸前の旬』〈覇王寿司編〉(日本文芸社2010)。病院・刑務所等いわば監禁施設に必ず料理マンガがある皮肉。
 エルヴィス・プレスリー命日(77年)享年42歳、34周年になる。病棟の内線は洋楽ポップスの日、エルヴィス何度もかかる。

17日(水)五分粥、おかずは普通食に近くなる。談話室の掲示板から献立表を写してくる。
・朝=食パン、マーマレード・ジャム、キャベツサラダ、コンソメスープ、フルーツ(桃)缶、牛乳
・昼=五分粥、鮭の塩焼き、ブロッコリのおかか和え、みそしる
・夕=五分粥、ほきの唐揚げチリソースかけ、いり豆腐、キャベツの和え物、みそしる
・読書=マンガのみ。青木雄三『ナニワ金融道』文庫版第四巻(講談社92→99)これも入院の定番。上山しげる『食キング・スペシャル/食一生編』(日本文芸社07)同社には料理マンガ専門誌でもあるのか?

18日(木)入院から11日目。
・朝食=食パン、マーマレード・ジャム、ミートボールのケチャップ煮、コンソメスープ、フルーツ(洋梨缶)、牛乳
・昼食=七分粥、豚肉と野菜の中華風炒め、ひじきの煮付け、ブロッコリサラダ、わかめスープ
・夕食=七分粥、鮭の塩焼き、たけのこのあっさり煮、青葉のおひたし、みそしる
(献立名は献立表による)
 読書=アガサ・クリスティー/田村隆一訳『スタイルズ荘の怪事件』(ハヤカワ・ミステリ文庫82)五回目くらいに読んだはず。中学・高校で三回、2007年夏(獄中)、今回。獄中で読んだ時には精神状態が最悪だったのでかえって悪い印象がついたが、今回読んで感嘆した。シンプルでパーフェクト。この一作だけでも名前を残した人だろう。二転三転する謎と話術の巧さは、処女作にして悪魔的にうまい。
 作・久部緑郎/画・河合単『ラーメン発見伝・激辛ラーメン対決』『同・火の国、熊本ラーメン!!』(08)また料理マンガ…。

19日(金)昏睡治療から目覚めて一週間。
 やっと主食常食(普通食)になる。昼前から台風。売店行きを許される。貧弱。新潮文庫新刊『根津権現裏』もない。仕方なく村上春樹『神の子供たちはみんな踊る』購入。他は実用、自己啓発書の類ばかり。
 カレー調理のいい匂い。
・朝食=ごはん、ふりかけ、納豆(30g)、白菜の和え物、みそしる、牛乳
・昼食=ポークカレー、福神漬け、らっきょう、ツナとカリフラワーのサラダ(ヨーグルト和え)
・夕食=ごはん、鯵の鍋照り風、大根のおかか煮、もやしとハムのマヨネーズ和え、みそしる
 読書=池波正太郎原作/さいとう・たかを『仕掛人梅安・梅安最合傘』『同・梅安起つ』(リイド社02・06)
夕食前にテレビアニメ『ゆけ!アンパンマン!』『元祖天才バカボン』(♪41歳の春だから~、のやつ)、晩に『犬夜叉』。
 読書=小松左京+谷甲州『日本沈没・第二部』(小学館06.8)猛烈につまらない力作で涙をそそる。夕食後から就寝前までに前半読む。
 退院後に購入したい再発CDの候補リストを作る。入院にはアメニティが自費で二週間=7500円かかる。LPは持っているが、CDで買い直したいものが大半。
英=Affinity, Spring, Elius Hulk, Raw Material(1st,2nd), Second Hand "Death May Be Your Santa Claus", Van Der Graaf Generator(1st)
米=John Coltrane Quartet "First Meditations", MC5 "Motor City is Burning""Pure Accuracy"(Box Set), The Stooges(Deluxe Edition), Mouse And Traps, Lost And Found, The Golden Dawn
日=高柳昌行トリオ『ラ・グリマ』、五つの赤い風船『おとぎばなし』、はちみつぱい『センチメンタル通り』、鈴木慶一とザ・ムーンライダーズ『火の玉ボーイ』、P-Model『Perspective』
独=Emtedi, Broselmaschine, Rufus Zuphall, Wind "Morning", Hoelderlin "Traumstadt", Faithful Breath
仏=Ange "Guet Apens", Wapassou(1st), Atoll "Musician Magician", Pulsar "The Stand of the Future"
伊=Celeste, Quella Vecchia Locanda, Dik Dik, Latte E Miele, Alan Sorrenti, Mauro Pelosi
 中古で安く探して予算内でなるべく多く買うこと。

20日(土)
 明日か明後日かその翌日か、まだ退院日がはっきりしない。朝食前体重56kg。ほぼ一週間栄養点滴のみだったからか5kg近く痩せてしまった。
・朝食=バターロール、チョコレートペースト、ほうれん草と玉子のソテー、コンソメスープ、バナナ、コーヒー牛乳
・昼食=ごはん、さばの竜田揚げ、のっぺい風煮物、トマトとキュウリのマヨサラダ、みそしる
・夕食=ごはん、豚肉とキャベツ炒め、がんもと冬瓜の煮物、小松菜の磯和え、清汁
 台風一過、朝から晴れ。テレビ東京9:00~『とっとこハム太郎でちゅ』、9:30~『ジュエルペット・サンシャイン』、そのままサンリオアニメ『プリティーリズム・オーロラドリーム』普段なら観ない。
 一昨年の精神科入院、退院のとき寄贈してきた『新潮世界文学・カミュ』全二冊(生前刊行の全著作収録)を精神科病棟から借り出せないか頼んだが怒られる。怒らなくてもよかろうに。仕方なく新渡戸稲造原著(『武士道』1900、『修養』1911)・竹内均編『いま自分のために何ができるか・自分に甘い人には必ずツケがまわってくる!』(三笠書房知的生き方文庫92)知的な人ならまず手にしないような安いタイトル。これをサラッと読み飛ばしてから『日本沈没・第二部』の後半読む。代作者は立派な仕事をしていると思うがシノプシスを読んでいるような味気なさ。腹部CT検査を挟み、同書を何の感興もなく読了後、東野圭吾『手紙』(集英社文庫03)夕食までに読了。普段本など読まない高校生が書いたような代物。でなければ読者の知的レヴェルを侮辱した小説もどき。
 夕食後。作・天王寺大/画・郷力也『ミナミの帝王スペシャル・白い闇編』(日本文芸社04)、『同・芸人魂編(上)』『同・(下)』(08)「週刊漫画ゴラク」(日本文芸社・毎金)ここの病院の売店には日本文芸社の漫画しか入らないのかもしれない。
『バクマン。』観る。春の入院時に観た辺りの回の再放送。
 談話室に有線コントロールパネル発見、談話室のみ別チャンネルに切り替えられるのでどんなチャンネルがあるか聴いてみる。ジャズではブルーノート盤専門チャンネル、ピアノトリオ専門チャンネルはまだいいとしてビル・エヴァンス専門チャンネルがあったのには驚く。

21日(日)
 明日退院と告げられる。たぶん朝食後、午前9時~10時頃だろう。
・朝食=食パン、マーガリン、オムレツ、コンソメスープ、フルーツ(みかん缶)、牛乳
・昼食=ごはん、タンドリーチキン、かぶのカニかまあんかけ、いんげんのおかか和え、みそしる
・夕食=ごはん、八宝菜、シューマイ、ほうれん草のくるみ和え、みそしる
 朝食が食パンの日は同じ病棟の美人患者(浅田さん)と談話室のトースターで顔を合わせる。明日退院を知ったのはその後の問診だったので(昨日の検査結果が出た)、明日の朝食も食パンのようだが「今日退院します。お大事に」と言うのも唐突だろう。少しは雑談くらいしたかった気もする。
 どんより曇り、外の空気はタートルかジャケットくらい冷え込む(湿度は高い)。
 朝の子供番組三連発を楽しむ。『海賊戦隊ゴーカイジャー』(忍空戦隊シュリケンジャーがゲスト)、『仮面ライダーオーズ』(来週最終回、新番組予告の『仮面ライダーフォーゼ』はねずみ男みたいだった)、『スイートプリキュア』「30分で世界を救うニャ」の回。
・森本梢子『ごくせんセレクションVol.1』(集英社04)おもしろい。
・村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』明日退院なので読む。99年雑誌連載、00年刊だからもう10年前の作品になるのか。
・藤沢周平『花のあと』短編集、74~85年発表。佐江衆一『長きこの夜』連作短編集(07)。どちらの作者もアンソロジーでしか読んだことがない。藤沢周平の勝ち。佐江衆一、現代日本文学の最悪の見本。これなら相対的に東野圭吾の方がまだしもなわけだ。
 サミュエル・ディレイニー『ダルグレン』翻訳出版の報(週刊文春)。
 精神病棟以外の入院は初めてなので煙草が喫えないのがつらかったが、明日は二週間ぶりに一服できる。
 これまでの収監・入院中に阿久悠、アントニオーニ、飯島愛、忌野清志郎、マイケル・ジャクソン、栗本薫(中島梓)、デニス・ホッパー、アラン・シリトーの訃報に接したが、今回の入院期間中では、
・団鬼六
・長門裕之
・原田耕治
・ピーター・フォーク
・ジョー山中
 の訃報を談話室の新聞で知る。
 退屈しのぎには作文ほど元手がかからないヒマつぶしはないので日々日記が克明になっていくのには自分でも呆れる。だがそれも明日の退院までのことになる。

8月22日(月)退院日
・朝食=食パン、ピーナッツペースト、じゃが芋のコンソメ煮、コーンスープ、フルーツ(桃缶)、牛乳
 美人の浅田さんとはおはようございます、お先にどうぞ、というような会話しかしなかった。午前9時に退院。受付の伝票処理、処方薬の受け取りで手間取るが、10時半には帰宅する。昼食は帰りがけ買ってきたハンバーガー、夕食はスーパーで買ってきたもりそば弁当。ちなみに、病院ではこうだったようだ。食事だけは入院中の方がずっといい。
・昼食=ごはん、豆腐のチャンプルー、かぼちゃの含め煮、みそしる、コーヒーゼリー
・夕食=ごはん、ほっけの塩焼き、いんげんと春雨の炒め煮、ツナの酢味噌和え、みそしる

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