Recorded at the Marquee Club in London on 20 March 1964
Released by Columbia Records Columbia SX1677, December 31, 1964
Produced by Giorgio Gomelsky
(Side one)
1. Too Much Monkey Business (Chuck Berry) - 3:52
2. I Got Love If You Want It (James Moore a.k.a. Slim Harpo) - 2:40
3. Smokestack Lightnin'" (Howlin' Wolf) - 5:35
4. Good Morning Little Schoolgirl (Don Level, Bob Love) - 2:42
5. Respectable (O'Kelly Isley, Ronald Isley, Rudolph Isley) - 5:35
(Side two)
1. Five Long Years (Eddie Boyd) - 5:18
2. Pretty Girl (Ellas McDaniel a.k.a. Bo Diddley) - 3:04
3. Louise (John Lee Hooker) - 3:43
4. I'm a Man (E.McDaniel) - 4:33
5. Here 'Tis (E.McDaniel) - 5:10
[ The Yardbirds ]
Eric "Slowhand" Clapton - lead guitar, co-lead vocals on "Good Morning Little Schoolgirl"
Chris Dreja - rhythm guitar
Jim McCarty - drums
Keith Relf - lead vocals (except on "Good Morning Little Schoolgirl"), harmonica, maracas
Paul "Sam" Samwell-Smith - bass guitar, co-lead vocals on "Good Morning Little Schoolgirl"
ロックの中でもいくつかビッグ・バンと言えるアルバムがありますが、エリック・クラプトン在籍時のザ・ヤードバーズのデビュー・アルバムの本作はモダン・ジャズの中でアート・ブレイキー・クインテットのライヴ・アルバム『バードランドの夜』('54年2月録音)に相当する、時流を抜いて新しいスタイルを打ち出したアルバムです。『バードランドの夜』では俊英トランペッター、クリフォード・ブラウンのプレイがバンドを牽引してハード・バップと呼ばれることになる次世代のジャズの主流スタイルを提示しましたが、ヤードバーズは新鋭ギタリスト、エリック・クラプトンの突出した演奏で従来のリード・ギターの概念を拡大したバンドでした。ビートルズがメジャー・デビュー前の皮ジャンパーにリーゼントのファッションから一転して揃いのスーツでデビューしたのはニューヨークのジャズマンのイメージを借りたものとは今ではどちらが先かわからないくらい浸透していますが、ヤードバード、またはバードとはハード・バップの前世代に当たるビ・バップの天才アルトサックス奏者、チャーリー・パーカーのニックネームで、ジャズクラブのバードランドもパーカーに由来します。ヤードバーズははっきりジャズマンのイメージを踏襲したことを表明していたわけです。
ビートルズ、ストーンズ、アニマルズ、キンクスにはやや遅れてデビューしたヤードバーズでしたが、ストーンズやアニマルズと較べてもアメリカのブルースやロックンロールへの素養は劣らない音楽マニアのグループでした。それはカヴァー曲ばかりで固めたこのデビュー・アルバムの選曲にもよく表れていますが、アニマルズのアラン・プライスのオルガンを除けばスター・プレイヤーらしい存在がいなかったイギリスのビート・グループの中からエリック・クラプトンが登場してきた衝撃はものすごかったようです。クラプトンは当時絶頂期のB・B・キングを始めとしてモダン・ブルースのリード・ギター奏法を身につけてデビューしてきましたが、ビート・グループの大半はチャック・ベリー・スタイルのロックンロール・ギターしか知らなかったためクラプトンの登場からモダン・ブルースとビート・グループ・スタイルの折衷が始まり、イギリスならではのブルース・ロックが生まれました。アメリカでも同時期には白人によるブルース・ロックが起こりましたが、黒人ブルースとの距離感やカントリー、フォークなどの複合的影響によってイギリスとアメリカではブルース・ロックと言ってもまるで異なる音楽になったのです。しかしアメリカのミュージシャンにとってもヤードバーズからの逆影響は甚大で、ヤードバーズはクラプトン脱退後にジェフ・ベック、ベック脱退後にジミー・ペイジをリード・ギタリストに、アメリカの若手バンドにとってビートルズ、ストーンズに次いで規範となるバンドであり続けました。
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(Original Columbia "Five Live Yardbirds" LP Liner Cover & Side one Label)
本作でクラプトンがやったことはクラプトンがいなくてもジェフ・ベックがやったと思いますが、ギター・バンドのロック・ギターの概念を一新させたものでした。ここで聴ける淀みなくどこまでも伸びていくフレーズは従来のロックンロールのリズム・リフとリズム・リックの組み合わせからは生まれてこないもので、エレクトリック・ギターによるジャズのリード・ギター奏法の開祖チャーリー・クリスチャンからモダン・ブルースのギタリストに流れ込んでいたものですが、それが白人ロックのストレートなビート感覚に乗って初めて革新性が注目されたので、ブルースのリズム感覚の中ではアンサンブルの裏に埋もれていたのです。それもイギリス人がやらなくてもマイク・ブルームフィールドが始めていましたし、ヤードバーズはバンドとしての総合点はあまり評判のかんばしくないバンドでもあります。ヴォーカルは上手くないしビートはドタバタしているし、ブルースというにはロックだしロックというにはブルースだし。逐一もっともですが、ビートルズがやっとアメリカでブレイクした直後で『A Hard Day's Night』の制作中、ストーンズすらブレイク前にライヴでこれだけ爆発的な演奏をしていたのは驚異的で、クラプトンが一流プレイヤーになるのはヤードバーズの次のブルース・ブレイカーズ加入後というのが定説ですが限界まで追い詰められたような白熱のプレイはプロ・デビューそこそこの本作に勝るものはないんじゃないかと聴いているうちは思えてきます(後年の名演は数限りありませんが)。少なくともクラプトンとヤードバーズが60年代ロックのイノヴェーターだった証拠を示す大名盤がこれです。日本初発売は1972年、『エリック・クラプトン&ヤードバーズ/アット・ザ・マーキー・クラブ』というしょぼい邦題になったのはそのためですが、この音、このジャケット(日本盤はクリーム時代のクラプトンの写真でしたが)は今でこそかっこいいのではないでしょうか。