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ザ・リッター The Litter - ディストーションズ Distortions (Warwick, 1967)

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ザ・リッター The Litter - ディストーションズ Distortions (Warwick, 1967) Full Album : http://youtu.be/GbAmkr3HSIY
Recorded in 1966 at Dove Recording Studios, Minneapolis and Warren Kendrick's Lake Street Studio, Minneapolis.
Released by Warwick Records WM-671-A, December 1967
Produced by Warren Kendrick
(Side One)
A1. Action Woman (W.Kendrick) - 2:32
A2. Whatcha Gonna Do About It (Potter, Samwell) - 2:27
A3. Codine (St. Marie) - 4:30
A4. Somebody Help Me (Edwards) - 1:55
A5. Substitute (P.Townshend) - 2:36
A6. The Mummy (Bomberg, Caplan) - 1:25
(Side Two)
B1. I'm So Glad (S.James) - 3:47
B2. A Legal Matter (P.Townshend) - 2:47
B3. Rack My Mind (C.Dreja, J.Beck, J.McCarty, K.Relf, P.S.Smith) - 3:41
B4. Soul-Searchin' (W.Kendrick) - 2:47
B5. I'm A Man (E. McDaniel) - 4:00
[ The Litter ]
Dan Rinaldi - guitar and vocals
Bill Strandlof - lead guitar
Denny Waite - organ, blues harmonica and lead vocals
Jim Kane - bass guitar
Tom Murray - drums

 サイケデリック・ロックというと何かおどろおどろしくアンダーグラウンドなものと思われがちですし、実際にそういうバンドやアーティストもたくさんいますが、アメリカのサイケデリック・ロックの元締めグレイトフル・デッドなどは一見ただのフォークだったりカントリーだったりするレパートリーも相当おおかったりもして、サイケと言っても単なる時代区分で分類されているだけだったりアシッド・トリップ的なムードがあれば何でもサイケと呼ばれたりします。特に一発屋的バンドに顕著なのはケバいミニスカお姉ちゃんたちがミラーボールの下でゴーゴーを踊り狂っているようなイケイケのロックンロールで、今回ご紹介するザ・リッターのデビュー・アルバムは「アメリカのファズ・ギター・サイケの最高峰」と定評がありますが、英語版ウィキペディアではザ・リッターと共通する音楽性のバンドとして本作でもカヴァーされているヤードバーズ(B3, B5)、ザ・フー(A5, B2)、スモール・フェイセズ(A2, A4)、クリーム(B1)、シャーラタンズ(A3)などと並んで同時代のアメリカ各地、世界各国のバンドが引き合いにされており、ザ・リッターに相当する日本のバンドは「初めて武道館で演奏した日本のロック・バンド」(ホントか?)ザ・スパイダースだそうです。
 英語版ウィキペディアには日本の「Group Sounds」の項目もあるのですが、リッターに近いのはGS第1世代のスパイダースよりも第2世代のザ・テンプターズ、ザ・ゴールデン・カップスやザ・モップス、ザ・ビーバーズらではないでしょうか。リッターは1966年後半~1967年春デビューの第1世代のサイケ・バンドよりデビュー・アルバムの発売が遅れたのです。もっとも早いラヴが1966年3月にアルバム・デビューし、ラヴのセカンドとカウント・ファイヴ、13thフロア・エレヴェイターズのデビュー・アルバムは1966年11月にリリースされています。ザ・ドアーズは1967年1月、エレクトリック・プリューンズは1967年4月にデビュー・アルバムをリリースしますから、1967年12月リリースのリッターのデビュー・アルバムは時期を逃したというほかないでしょう。モビー・グレイプのデビュー・アルバムが1967年6月で、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・クラブ・バンド』と同月だったため完膚なきまでに割を食いました。
(Original Warwick Records "Distortions" LP Liner Cover & Side One Label)

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 リッターはミネアポリスのローカル・バンドで1966年内にはシカゴのワーウィック・レコーズにアルバムの録音を済ませていたようです。アルバムに先立って3枚のシングルが発売されており、すべてデビュー・アルバム収録曲になりました。1967年1月のデビュー・シングルが別レーベルなのはワーウィックへの売り込み前のプライヴェート・プレスだったのでしょう。

"Action Woman" b/w "A Legal Matter" (Scotty 803G-6710) January 1967
"Somebody Help Me" b/w "I'm a Man" (Warick 9445-6711) 1967
"Action Woman" b/w "Whatcha Gonna Do About It" (Warick 6712) 1967

 ワーウィック以前・ワーウィック時代のシングルは上記3枚で、ザ・リッターはアルバム1作ごとにレコード会社を移籍し3枚のアルバムを発表、その後は細々と1972年まで活動しました。1990年代になってCD再発の好評から臨時再結成を繰り返し、再発レーベルArf! Arf!からライヴ盤、新作スタジオ盤もリリースしていましたが、オリジナル・メンバー中リード・ギターのビル・ストランドロフは参加せず、2015年にギター&ヴォーカルのダン・リナルディも逝去したようです。

1. Distortions (Warick WM-671-A) 1967
2. $100 Fine (Hexagon 681-S) 1968
3. Emerge (Probe 4504-S) 1969
4. Live At Mirage 1990 ?(Arf! Arf! AA-079) 1998
5. Re-Emerge (Arf! Arf! AA-080) 1999

 セカンド・アルバムからはメンバーの自作曲が増えますが、ゾンビーズの「She's Not There」を9分のジャムセッション・アレンジにするなどリッターの演奏力では手に余る勘違いがアルバムのバランスを崩しています。ワーウィックは主に黒人音楽のインディー・レーベルでしたからサード・アルバムは大手ABCレコーズ傘下のプローブ・レコーズからのリリースでもあり出世の機会もあったかと思いますが(前年・同年にソフト・マシーンの初期2作も出しています)、リード・ヴォーカルとリード・ギターがメンバー・チェンジしてハード・ロック路線になっています。サウンドの印象はMC5もどきといったところですがリッター本来の嗜好とすると1968年デビューのジェフ・ベック・グループとレッド・ツェッペリンの悪影響でしょう。『Distortions』がほとんどブリティッシュ・ビート・グループのカヴァーからなるアルバムなのは先に指摘しましたが、アルバムの白眉はウォーレン・ケンドリックのオリジナル曲「Action Woman」「Soul-Searchin'」の2曲です。メンバーでもないこの人は何者かというと、アルバムが制作されたミネアポリスのレイク・ストリート・スタジオのオーナーで、このアルバムのプロデューサーにクレジットされている人物です。エレクトリック・プリューンズが半ばデイヴ・ハッシンジャーに作られたバンドだったように、リッターもウォーレン・ケンドリックが発掘してきた学生バンドだったのでしょう。「Action Woman」「Soul-Searchin'」の2曲、ことにバンドが1コードでぶんぶん唸りファズ・ギターが炸裂する「Action Woman」はキラー・チューンですが、ケンドリックスにはこの水準の楽曲をアルバム全曲分書き下ろす才覚はなかったようです。日本の誇るゴールデン・カップスとモップスのデビュー・アルバムは1968年3月、ビーバーズは6月ですが、リッターの本作は正直それらより上とは思えません。

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