はちみつぱい - センチメンタル通り (ベルウッド, 1973) Full Album : http://youtu.be/6SextxngClw
Released by キング・レコード/ベルウッド・レコード OFL-16, November 5, 1973
(Side A)
A1. 塀の上で (words & music : 鈴木慶一) - 6:28
A2. 土手の向こうに (words & music : 鈴木慶一) - 4:26
A3. 僕の倖せ (words : 松本圭司, music & arranged : 渡辺勝) - 6:19
A4. 薬屋さん (words & music : 鈴木慶一) - 3:40
(Side B)
B1. 釣り糸 (words & music : かしぶち哲郎) - 5:20
B2. ヒッチハイク (music & arranged : はちみつぱい) - 3:22
B3. 月夜のドライヴ (words & music : 山本浩美) - 6:12
B4. センチメンタル通り (words & music : 鈴木慶一) - 4:25
B5. 夜は静か通り静か (words & music : 渡辺勝) - 2:55
(Bonus Track)
Tk1. 君と旅行鞄 (words : 渡辺勝・鈴木慶一, music : 松本圭司) - 3:56
Tk2. 酔いどれダンスミュージック (words & music : 鈴木慶一) - 2:39
[ はちみつぱい ]
鈴木慶一 - vocal, piano, vibraphone
武川雅寛 - vocal, violin
駒沢裕城 - vocal, steel-guitar
本田信介 - guitar
和田博巳 - bass
かしぶち哲郎 - drums, vocal
with
渡辺勝 - vocal, piano, guitar, organ
坂田明 - alto saxophone
山本浩美, 大貫妙子, 宮悦子, 吉田美奈子 - chorus
本作は発売以来廃盤になった期間もなく聴き継がれてきた日本の70年代ロックのロングセラー・アルバムで、はっぴいえんどの全3作や大瀧詠一プロデュースのシュガー・ベイブ(山下達郎、大貫妙子在籍)の『SONGS』1975.4と並ぶ非ビート・グループ、非ブルース・ロック、非ハード・ロック系の、強いて言えばアメリカン・ロック系の名作です。
はちみつぱいは本作きりで解散しましたが復活コンサートを望む声はずっと高く、1988年には未発表曲多数を含む70年代のライヴ音源を選りすぐった『はちみつぱいセカンド・アルバム~イン・コンサート』発売後の大きな反響から最初の一時的再結成コンサートが行われて新たなライヴ・アルバムも制作されました。2009年には『セカンド・アルバム~イン・コンサート』のノーカット盤と言うべきCD9枚組のボックスセット『THE FINAL TAPES はちみつぱい LIVE BOX 1972-1974』が発売され、これも大きな話題になりました。
はちみつぱいは当初フォーク・シンガーあがた森魚のバックバンドとして活動を始めました。北海道出身のあがたは自主制作盤を持って上京し工場でアルバイトをしていましたが、パートの女性が「うちの息子も音楽好きで友だちいないから、よかったら会ってやって」と、それが鈴木慶一でした。あがたはURCレコードからデビューが決定し、鈴木慶一は解散コンサートのはっぴいえんどのサポート・メンバーにも起用されます。やがてはちみつぱいはあがたのバックバンド以外の機会でも独立して活動するようになり、日本のグレイトフル・デッドと呼ばれるようになりました。
また、ザ・バンドからの影響も大きいもので、ザ・バンドやグレイトフル・デッドをはっぴいえんど譲り(はっぴいえんどの影響源はバッファロー・スプリングフィールドやモビー・グレイプでしたが)の日本的情緒性をフィルターにしたもので、当時グレイトフル・デッドからの影響が大きかった日本のバンドにはめんたんぴんがいますが、めんたんぴんはデッドと同じくらいストーンズからの影響を公言するだけあってはちみつぱいのような抒情的ムードはありませんでした。またザ・バンドからの影響が強かったバンドに葡萄畑がいますが、セカンド・アルバムでは10c.c.そっくりのモダン・ポップ路線に転向したように本格的な影響ではありませんでした。
9枚組ボックスセットのリリースで判明したのは、はちみつぱいは1972年~1974年のほぼ毎年にメンバーの入れ替わりとレパートリーの入れ替えがあり、活動時期はほぼ3期に分けられるということです。活動期間中唯一のアルバム『センチメンタル通り』1973はちょうど中期に当たるメンバー/レパートリーの録音で、同作以前に初期はちみつぱいの時期があり、グレイトフル・デッド的なサイケデリック・カントリー風インストルメンタル・ジャムを重視していたのは初期はちみつぱいです。中期はザ・バンド的な複数リード・ヴォーカルの強調によって楽曲性やアレンジの密度を高め、後期はちみつぱいはザ・バンド路線を継承しつつ、はちみつぱい解散後の鈴木慶一のソロ『鈴木慶一とムーンライダーズ/火の玉ボーイ』1976.1のアメリカン・ロックとブリティッシュ・ポップを結ぶ音楽性を予告しています(今回のリンク音源のBonus Track「酔いどれダンスミュージック」は『火の玉ボーイ』収録曲の後期はちみつぱいヴァージョンです)。
はちみつぱいがグレイトフル・デッド的でもめんたんぴんと大きく異なるのはデッドのアシッド・ロック性がはちみつぱいにはないことで、鈴木慶一がやはりアシッド・ロック性を排除していたはっぴいえんどの系譜にあることを示しているようです。それを別としても『鈴木慶一とムーンライダーズ/火の玉ボーイ』は『センチメンタル通り』と並ぶ名作で、この後鈴木慶一が正式に結成するバンド、ムーンライダーズとも微妙に異なる、レギュラー・バンドではない一期一会のセッション・メンバーならではの一回性の美しさを備えたアルバムです。次回ご紹介しましょう。
Released by キング・レコード/ベルウッド・レコード OFL-16, November 5, 1973
(Side A)
A1. 塀の上で (words & music : 鈴木慶一) - 6:28
A2. 土手の向こうに (words & music : 鈴木慶一) - 4:26
A3. 僕の倖せ (words : 松本圭司, music & arranged : 渡辺勝) - 6:19
A4. 薬屋さん (words & music : 鈴木慶一) - 3:40
(Side B)
B1. 釣り糸 (words & music : かしぶち哲郎) - 5:20
B2. ヒッチハイク (music & arranged : はちみつぱい) - 3:22
B3. 月夜のドライヴ (words & music : 山本浩美) - 6:12
B4. センチメンタル通り (words & music : 鈴木慶一) - 4:25
B5. 夜は静か通り静か (words & music : 渡辺勝) - 2:55
(Bonus Track)
Tk1. 君と旅行鞄 (words : 渡辺勝・鈴木慶一, music : 松本圭司) - 3:56
Tk2. 酔いどれダンスミュージック (words & music : 鈴木慶一) - 2:39
[ はちみつぱい ]
鈴木慶一 - vocal, piano, vibraphone
武川雅寛 - vocal, violin
駒沢裕城 - vocal, steel-guitar
本田信介 - guitar
和田博巳 - bass
かしぶち哲郎 - drums, vocal
with
渡辺勝 - vocal, piano, guitar, organ
坂田明 - alto saxophone
山本浩美, 大貫妙子, 宮悦子, 吉田美奈子 - chorus
本作は発売以来廃盤になった期間もなく聴き継がれてきた日本の70年代ロックのロングセラー・アルバムで、はっぴいえんどの全3作や大瀧詠一プロデュースのシュガー・ベイブ(山下達郎、大貫妙子在籍)の『SONGS』1975.4と並ぶ非ビート・グループ、非ブルース・ロック、非ハード・ロック系の、強いて言えばアメリカン・ロック系の名作です。
はちみつぱいは本作きりで解散しましたが復活コンサートを望む声はずっと高く、1988年には未発表曲多数を含む70年代のライヴ音源を選りすぐった『はちみつぱいセカンド・アルバム~イン・コンサート』発売後の大きな反響から最初の一時的再結成コンサートが行われて新たなライヴ・アルバムも制作されました。2009年には『セカンド・アルバム~イン・コンサート』のノーカット盤と言うべきCD9枚組のボックスセット『THE FINAL TAPES はちみつぱい LIVE BOX 1972-1974』が発売され、これも大きな話題になりました。
はちみつぱいは当初フォーク・シンガーあがた森魚のバックバンドとして活動を始めました。北海道出身のあがたは自主制作盤を持って上京し工場でアルバイトをしていましたが、パートの女性が「うちの息子も音楽好きで友だちいないから、よかったら会ってやって」と、それが鈴木慶一でした。あがたはURCレコードからデビューが決定し、鈴木慶一は解散コンサートのはっぴいえんどのサポート・メンバーにも起用されます。やがてはちみつぱいはあがたのバックバンド以外の機会でも独立して活動するようになり、日本のグレイトフル・デッドと呼ばれるようになりました。
また、ザ・バンドからの影響も大きいもので、ザ・バンドやグレイトフル・デッドをはっぴいえんど譲り(はっぴいえんどの影響源はバッファロー・スプリングフィールドやモビー・グレイプでしたが)の日本的情緒性をフィルターにしたもので、当時グレイトフル・デッドからの影響が大きかった日本のバンドにはめんたんぴんがいますが、めんたんぴんはデッドと同じくらいストーンズからの影響を公言するだけあってはちみつぱいのような抒情的ムードはありませんでした。またザ・バンドからの影響が強かったバンドに葡萄畑がいますが、セカンド・アルバムでは10c.c.そっくりのモダン・ポップ路線に転向したように本格的な影響ではありませんでした。
9枚組ボックスセットのリリースで判明したのは、はちみつぱいは1972年~1974年のほぼ毎年にメンバーの入れ替わりとレパートリーの入れ替えがあり、活動時期はほぼ3期に分けられるということです。活動期間中唯一のアルバム『センチメンタル通り』1973はちょうど中期に当たるメンバー/レパートリーの録音で、同作以前に初期はちみつぱいの時期があり、グレイトフル・デッド的なサイケデリック・カントリー風インストルメンタル・ジャムを重視していたのは初期はちみつぱいです。中期はザ・バンド的な複数リード・ヴォーカルの強調によって楽曲性やアレンジの密度を高め、後期はちみつぱいはザ・バンド路線を継承しつつ、はちみつぱい解散後の鈴木慶一のソロ『鈴木慶一とムーンライダーズ/火の玉ボーイ』1976.1のアメリカン・ロックとブリティッシュ・ポップを結ぶ音楽性を予告しています(今回のリンク音源のBonus Track「酔いどれダンスミュージック」は『火の玉ボーイ』収録曲の後期はちみつぱいヴァージョンです)。
はちみつぱいがグレイトフル・デッド的でもめんたんぴんと大きく異なるのはデッドのアシッド・ロック性がはちみつぱいにはないことで、鈴木慶一がやはりアシッド・ロック性を排除していたはっぴいえんどの系譜にあることを示しているようです。それを別としても『鈴木慶一とムーンライダーズ/火の玉ボーイ』は『センチメンタル通り』と並ぶ名作で、この後鈴木慶一が正式に結成するバンド、ムーンライダーズとも微妙に異なる、レギュラー・バンドではない一期一会のセッション・メンバーならではの一回性の美しさを備えたアルバムです。次回ご紹介しましょう。