Sun Ra - Cymbals (Troglosound, 2010)
Recorded at Various Studio, N.Y.C. in Late Spring or Early Summer, 1972 or 1973
Released by Troglosound ?Disc Troglosound-2000, 2010
Also Released by Evidence Records as "The Great Lost Sun Ra Albums; Cymbals & Crystal Spears" Evidence 22217-1, 2000
All Composed and Arranged by Sun Ra
(Side A)
A1. Thoughts Under A Dark Blue Light : http://youtu.be/lg5UMMiC5zo - 16:31
A2. Land Of The Day Star : http://youtu.be/VOfsmXdPX-I - 3:57
(Side B)
B1. The World Of The Invisible - 6:51*no links
B2. The Order Of The Pharaonic Jesters : http://youtu.be/epapZ24iym8 - 7:21
B3. The Mystery Of Two : http://youtu.be/18LCN5uyKAk - 7:35
[ Sun Ra & His Arkestra ]
Sun Ra - Erectro Vibraphone [Electronic], Organ, Rocksichord Keyboards (Featuring Solo on B2)
Akh Tal Ebah - Trumpet (Featuring Solo on B3)
Danny Davis - Alto Saxophone (Featuring Solo on A2)
John Gilmore - Tenor Saxophone (Featuring Solo on A1)
Elmoe Omoe - Bass Clarinet (Featuring Solo on B1)
Bass ? Ronnie Boykins
Harry Richards - Drums
Derek Morris - Congas
(Original Evidence "The Great Lost Sun Ra Albums; Cymbals & Crystal Spears" CD Front Cover)
本作の録音時期ははっきりしておらず、2000年にサン・ラのサターン作品の復刻を手がけるエヴィデンス・レーベルから2枚組CD"The Great Lost Sun Ra Albums; Cymbals & Crystal Spears"の1枚として発売されました。『Crystal Spears』とともに1972年から2年間のインパルス!レーベルとの契約期間に発売予定アルバムとして完成したまま未発表になっていたものらしく、録音時期は1972年初夏とも1973年とも推定されています。即時発売されればメジャー・レーベル作品ですから録音場所と日時が(スタジオ代や人件費の経理会計のために)きちんと記録され、明記されたはずですが、未発表に終わったためにデータも失われてしまったのはいかにもサン・ラ作品ならではです。72年初夏とするか73年作品とするかで迷いますが、確定できないのであればこの際早い方を採ることにしました。後になって落とすよりはフライングの方がましです。
内容はお蔵入りアルバムとは思えない、極上とまではいかずとも70年代のサン・ラのスタジオ・アルバムとして十分満足いくものです。本作と『Crystal Spears』がお蔵入りになったのは50年代~60年代のサターン作品の復刻を出しすぎたのとインパルス!の親会社ABCレコーズの経営方針変更のためとされていますが、この水準の作品が2000年まで未発表だったのがサン・ラの底知れないところです。2010年にイタリアのTroglosoundレーベルから限定版のアナログLP再発されますが、LPでの曲順は上記の通りで、2000年のエヴィデンスからのCDではやや曲順が異なっていました。CDですからA/B面の分け目はありませんが、
1. The World Of The Invisible - 6:51
2. Thoughts Under A Dark Blue Light - 16:31
3. The Order Of The Pharaonic Jesters - 7:21
4. The Mystery Of Two - 7:35
5. Land Of The Day Star - 3:57
この曲順だと時間配分も無理はなく、1、2でA面、3~5でB面という構成だったのかな、と思わせます。アナログLP再発では2、5をA面、1、3、4をB面と大胆に組み替えていますが、サン・ラ自身の指定ならともかく曲順変更で大差ないのは、看板テナーのギルモアをフィーチャーしたCD前半のファンキーでアーシーな目玉曲2(LPのA1)の存在感がアルバム全体に効いているからでしょう。
(Original Troglosound "Cymbals" LP Liner Cover & Side A/B Label)
残念ながらB1「The World Of The Invisible」の試聴リンクが引けませんでしたが、本作はトータル42分32秒あり、6分51秒のB1抜きでもお分かりいただける内容です。70年代のサン・ラのアルバムは極端に少ない編成か極端に多い編成を採ることが増えましたが、今回は金管1、木管3(マルチ奏者マーシャル・アレンとバリトンのパット・パトリック不参加)、キーボード、ベース、ドラムス、コンガの4リズムと50年代以来のアーケストラの標準編成に近くなっており、また各曲でフィーチャリング・ソロイスト(だけではありませんが)に的を絞った作りで聴き所をつかみやすいアルバムにしてあります。普段はアンサンブル要員のアカァ・タル・エバァも立派なソロを取っており、デレク・モリスのコンガも効いています。ボイキンスのベースのビッグ・ビートとモリスのコンガ、メンバー全員のタイム感の良さで上手く行っていますが、新任ドラムスのハリー・リチャーズのプレイが所々不安定で、そこは古残メンバーが脇を固めている印象です。
トランペットのエヴァのソロにハード・バップ色が強く、楽曲もハード・バップ的(ただし60年代以降のポスト・バップ的)なリフをテーマとしたものが多いのはメジャーのインパルス!からのリリースを想定してのことでしょうが、まるで未知のブルー・ノート(60年代新主流派)のアルバムを聴いているようでもあります。特にA2やB面の3曲など短めの演奏がハード・バップ的です。8人編成はハード・バップとしては大所帯ですが、いつものアーケストラよりもアンサンブルがすっきりしており、聴き流すと5~6人編成のような隙間と空間を生かしたサウンドなのもこのアルバムの特徴です。アーケストラは小編成の時も大編成の時も厚みとひろがりのある、その代わりバラけた印象のあるアレンジが通例ですが、このアルバムでは締まりがあり焦点の定まった楽曲・アレンジ・演奏を目指して成功しています。『Universe In Blue』のような小編成の特殊な企画ライヴ・アルバムを除くと、サン・ラ・アーケストラのライヴは大編成でドバーッと行くのが基本なので、いかにもスタジオ録音アルバムらしいタイトな作品を意図していたのでしょう。しかし録音後25年以上も未発表のまま眠っていたというのは(サン・ラ沒後発表でもあります)サン・ラ関連の無頓着な多作には改めて感心させられます。
Recorded at Various Studio, N.Y.C. in Late Spring or Early Summer, 1972 or 1973
Released by Troglosound ?Disc Troglosound-2000, 2010
Also Released by Evidence Records as "The Great Lost Sun Ra Albums; Cymbals & Crystal Spears" Evidence 22217-1, 2000
All Composed and Arranged by Sun Ra
(Side A)
A1. Thoughts Under A Dark Blue Light : http://youtu.be/lg5UMMiC5zo - 16:31
A2. Land Of The Day Star : http://youtu.be/VOfsmXdPX-I - 3:57
(Side B)
B1. The World Of The Invisible - 6:51*no links
B2. The Order Of The Pharaonic Jesters : http://youtu.be/epapZ24iym8 - 7:21
B3. The Mystery Of Two : http://youtu.be/18LCN5uyKAk - 7:35
[ Sun Ra & His Arkestra ]
Sun Ra - Erectro Vibraphone [Electronic], Organ, Rocksichord Keyboards (Featuring Solo on B2)
Akh Tal Ebah - Trumpet (Featuring Solo on B3)
Danny Davis - Alto Saxophone (Featuring Solo on A2)
John Gilmore - Tenor Saxophone (Featuring Solo on A1)
Elmoe Omoe - Bass Clarinet (Featuring Solo on B1)
Bass ? Ronnie Boykins
Harry Richards - Drums
Derek Morris - Congas
(Original Evidence "The Great Lost Sun Ra Albums; Cymbals & Crystal Spears" CD Front Cover)
本作の録音時期ははっきりしておらず、2000年にサン・ラのサターン作品の復刻を手がけるエヴィデンス・レーベルから2枚組CD"The Great Lost Sun Ra Albums; Cymbals & Crystal Spears"の1枚として発売されました。『Crystal Spears』とともに1972年から2年間のインパルス!レーベルとの契約期間に発売予定アルバムとして完成したまま未発表になっていたものらしく、録音時期は1972年初夏とも1973年とも推定されています。即時発売されればメジャー・レーベル作品ですから録音場所と日時が(スタジオ代や人件費の経理会計のために)きちんと記録され、明記されたはずですが、未発表に終わったためにデータも失われてしまったのはいかにもサン・ラ作品ならではです。72年初夏とするか73年作品とするかで迷いますが、確定できないのであればこの際早い方を採ることにしました。後になって落とすよりはフライングの方がましです。
内容はお蔵入りアルバムとは思えない、極上とまではいかずとも70年代のサン・ラのスタジオ・アルバムとして十分満足いくものです。本作と『Crystal Spears』がお蔵入りになったのは50年代~60年代のサターン作品の復刻を出しすぎたのとインパルス!の親会社ABCレコーズの経営方針変更のためとされていますが、この水準の作品が2000年まで未発表だったのがサン・ラの底知れないところです。2010年にイタリアのTroglosoundレーベルから限定版のアナログLP再発されますが、LPでの曲順は上記の通りで、2000年のエヴィデンスからのCDではやや曲順が異なっていました。CDですからA/B面の分け目はありませんが、
1. The World Of The Invisible - 6:51
2. Thoughts Under A Dark Blue Light - 16:31
3. The Order Of The Pharaonic Jesters - 7:21
4. The Mystery Of Two - 7:35
5. Land Of The Day Star - 3:57
この曲順だと時間配分も無理はなく、1、2でA面、3~5でB面という構成だったのかな、と思わせます。アナログLP再発では2、5をA面、1、3、4をB面と大胆に組み替えていますが、サン・ラ自身の指定ならともかく曲順変更で大差ないのは、看板テナーのギルモアをフィーチャーしたCD前半のファンキーでアーシーな目玉曲2(LPのA1)の存在感がアルバム全体に効いているからでしょう。
(Original Troglosound "Cymbals" LP Liner Cover & Side A/B Label)
残念ながらB1「The World Of The Invisible」の試聴リンクが引けませんでしたが、本作はトータル42分32秒あり、6分51秒のB1抜きでもお分かりいただける内容です。70年代のサン・ラのアルバムは極端に少ない編成か極端に多い編成を採ることが増えましたが、今回は金管1、木管3(マルチ奏者マーシャル・アレンとバリトンのパット・パトリック不参加)、キーボード、ベース、ドラムス、コンガの4リズムと50年代以来のアーケストラの標準編成に近くなっており、また各曲でフィーチャリング・ソロイスト(だけではありませんが)に的を絞った作りで聴き所をつかみやすいアルバムにしてあります。普段はアンサンブル要員のアカァ・タル・エバァも立派なソロを取っており、デレク・モリスのコンガも効いています。ボイキンスのベースのビッグ・ビートとモリスのコンガ、メンバー全員のタイム感の良さで上手く行っていますが、新任ドラムスのハリー・リチャーズのプレイが所々不安定で、そこは古残メンバーが脇を固めている印象です。
トランペットのエヴァのソロにハード・バップ色が強く、楽曲もハード・バップ的(ただし60年代以降のポスト・バップ的)なリフをテーマとしたものが多いのはメジャーのインパルス!からのリリースを想定してのことでしょうが、まるで未知のブルー・ノート(60年代新主流派)のアルバムを聴いているようでもあります。特にA2やB面の3曲など短めの演奏がハード・バップ的です。8人編成はハード・バップとしては大所帯ですが、いつものアーケストラよりもアンサンブルがすっきりしており、聴き流すと5~6人編成のような隙間と空間を生かしたサウンドなのもこのアルバムの特徴です。アーケストラは小編成の時も大編成の時も厚みとひろがりのある、その代わりバラけた印象のあるアレンジが通例ですが、このアルバムでは締まりがあり焦点の定まった楽曲・アレンジ・演奏を目指して成功しています。『Universe In Blue』のような小編成の特殊な企画ライヴ・アルバムを除くと、サン・ラ・アーケストラのライヴは大編成でドバーッと行くのが基本なので、いかにもスタジオ録音アルバムらしいタイトな作品を意図していたのでしょう。しかし録音後25年以上も未発表のまま眠っていたというのは(サン・ラ沒後発表でもあります)サン・ラ関連の無頓着な多作には改めて感心させられます。