トゥー・マッチ - Too Much (アトランティック, 1971) Full Album : http://youtu.be/Y4aLo3ARGj8
Released by ワーナー・パイオニア株式会社 アトランティック L-6008A, July 25, 1971
Recorded between February to March, 1971
Engendered by Jack Alman
Produced by Juni Rush & Too Much
(Side A)
A1. Grease It Out (Juni Rush, Tutomu Ogawa) - 5:35
A2. Love That Binds Me (Juni Rush) - 6:26
A3. Love Is You (Juni Rush, Tutomu Ogawa) - 6:01
A4. 君の古巣は僕の胸 Reminiscence (Juni Rush) - 6:09
(Side B)
B1. I Shall Be Release (Bob Dylan) - 4:53
B2. Gonna Take You (Juni Rush, Tutomu Ogawa) - 4:34
B3. Song For My Lady (Now I Found) (Juni Rush) - 12:18
[ トゥー・マッチ Too Much ]
ジュニ・ラッシュ Juni Rush - Lead Vocals
小川勉 Tutomu Ogawa - Lead Guitar, Acoustic Guitar
青木正行 Masayuki Aoki - Bass Guitar
小林秀弥 Hideya Kobayashi - Drums, Percussion
with
富田勲 Isao Tomita - Strings Arrangements
ミッキー吉野 Mickie Yoshino - Organ, Piano
(Original Atlantic "Too Much" LP Liner Cover & Lyric Sheet)
以前(8月15日)ご紹介した8/15 ザ・ヘルプフル・ソウル『ソウルの追求』(日本ビクター/ワールド, 1969年4月)のリーダーでリード・ヴォーカル担当だったジュニオ・ナカハラがジュニ・ラッシュと改名し、ヘルプフル・ソウル解散後アメリカ留学を経て帰国後に結成したのがトゥー・マッチです。バンドはライヴ経験もないまま内田裕也氏の紹介でワーナー・パイオニア傘下のアトランティック・レーベルからアルバム・デビューを飾るという破格の登場をしました。1971年のアトランティック・レーベルは日本コロムビアから移籍してきたフラワー・トラヴェリン・バンドのセカンド・アルバムで移籍第1作『SATORI』を4月に、陳信輝(ギター)が加部正義(ベース)、ジョーイ・スミス(ドラムス、ヴォーカル)と組んだスピード・グルー&シンキのデビュー・アルバム『イヴ 前夜』を6月にリリースしており、どれも内田裕也氏の紹介によるものでした。トゥー・マッチのデビュー・アルバムと同時発売のオムニバス・アルバム『ロック・エイジ・コンサート』はフラワー、スピード・グルー~、トゥー・マッチを含む8組の英語詞ハード・ロック系バンドが収められており、この3組以外は同アルバム録り下ろし曲となっています。
陳信輝関連のアルバム同様、本作も欧米のドゥーム・メタル/ストーナー・ロック文脈で再評価されて海外のインディー・レーベルによるCD復刻が長期セールスを上げており、日本国内のリスナーよりも海外リスナーの総数の方が多いでしょう。ジョー山中の生前にフラワー・トラヴェリン・バンドの再結成ツアーが国内外で成功を収めたように、スピード・グルー&シンキやトゥー・マッチも海外公演なら再結成ライヴが成功するかもしれません。もっともフラワーはともかく、スピード・グルー~やトゥー・マッチは国内での知名度が低すぎて、そうした現状では国際的再評価は未だに浸透していないとも言えます。フラワーが例外的に脚光を浴びたとも言えますが、これらアトランティックの国産ハード・ロック・バンドは本格的すぎてアルバム内容はほとんど欧米ロックであり、その点で画期的な作品でしたが以後の日本のロックとも隔絶しているのです。また、アーティスト自身も純粋な欧米ロック指向を続けていくことができませんでした。
(Original Atlantic "Too Much" LP Gatefold Inner Cover & Side A/B Label)
ジョー山中がソウル系ソロ・シンガーになったようにジュニ・ラッシュもトゥー・マッチ解散後唯一のシングルではソウル・ミュージックを指向したものでした。トゥー・マッチのアルバムはボブ・ディラン(ザ・バンド)のB1以外は全曲ジュニ・ラッシュのオリジナル曲(3曲はギターの小川勉との共作)ですが、フラワー・トラヴェリン・バンドよりもブルース・ロック色が強いハード・ロックで、これは同年に発売されたブルース・クリエイションのセカンド・アルバム『悪魔と11人の子供達』がブルース曲で固めたデビュー・アルバムから一転して、フラワー・トラヴェリン・バンドよりもさらにブラック・サバスに傾倒した作風だったこととも対比的です。ブラック・サバスにはリフとリズム・アレンジにも凝った特徴があり、ファスト・ナンバーのみならずヘヴィなミドルテンポ以下の曲でも倍テンポの複合リズムを組み合わせる発想がありました。
トゥー・マッチがフラワーやスピード・グルー~よりもヘヴィでアンダーグラウンド、ただし60年代を引きずっているように響くのは、ミドルテンポ以下の曲(ディラン曲以外全曲短調、A4とB3はキング・クリムゾンの「Epitaph」風バラード)ばかりの上にリズム・アレンジのヴァリエーションに乏しいことです。A1は5拍子のリフから8ビートへの転換が鮮やかなイントロを持ちますが、1曲全体で、どの曲でも同様の工夫がないのが惜しまれます。ギターの音色も全編に渡って地味です。しかし本作の重さと安定感、切れの良さは外国人エンジニアによる抜群にタイトで抜けの良い録音によってフラワーやスピード・グルー~と較べても突出しており、音楽的にはフリーとカクタスの中間に位置する渋いブルース系ハード・ロックですが、後のシーンに青木正行が外道のメンバーになる程度の痕跡しかないのが不思議なほど高い演奏水準にあり、ドラムスとベースだけでもここまでボトムのしっかりしたロックのアルバムは現在の基準でも稀少なものです。本作きりしかアルバムのないバンドですが、唯一作にしか起こらないマジックが起こったのであればそれも仕方のないことだったと思えます。
Released by ワーナー・パイオニア株式会社 アトランティック L-6008A, July 25, 1971
Recorded between February to March, 1971
Engendered by Jack Alman
Produced by Juni Rush & Too Much
(Side A)
A1. Grease It Out (Juni Rush, Tutomu Ogawa) - 5:35
A2. Love That Binds Me (Juni Rush) - 6:26
A3. Love Is You (Juni Rush, Tutomu Ogawa) - 6:01
A4. 君の古巣は僕の胸 Reminiscence (Juni Rush) - 6:09
(Side B)
B1. I Shall Be Release (Bob Dylan) - 4:53
B2. Gonna Take You (Juni Rush, Tutomu Ogawa) - 4:34
B3. Song For My Lady (Now I Found) (Juni Rush) - 12:18
[ トゥー・マッチ Too Much ]
ジュニ・ラッシュ Juni Rush - Lead Vocals
小川勉 Tutomu Ogawa - Lead Guitar, Acoustic Guitar
青木正行 Masayuki Aoki - Bass Guitar
小林秀弥 Hideya Kobayashi - Drums, Percussion
with
富田勲 Isao Tomita - Strings Arrangements
ミッキー吉野 Mickie Yoshino - Organ, Piano
(Original Atlantic "Too Much" LP Liner Cover & Lyric Sheet)
以前(8月15日)ご紹介した8/15 ザ・ヘルプフル・ソウル『ソウルの追求』(日本ビクター/ワールド, 1969年4月)のリーダーでリード・ヴォーカル担当だったジュニオ・ナカハラがジュニ・ラッシュと改名し、ヘルプフル・ソウル解散後アメリカ留学を経て帰国後に結成したのがトゥー・マッチです。バンドはライヴ経験もないまま内田裕也氏の紹介でワーナー・パイオニア傘下のアトランティック・レーベルからアルバム・デビューを飾るという破格の登場をしました。1971年のアトランティック・レーベルは日本コロムビアから移籍してきたフラワー・トラヴェリン・バンドのセカンド・アルバムで移籍第1作『SATORI』を4月に、陳信輝(ギター)が加部正義(ベース)、ジョーイ・スミス(ドラムス、ヴォーカル)と組んだスピード・グルー&シンキのデビュー・アルバム『イヴ 前夜』を6月にリリースしており、どれも内田裕也氏の紹介によるものでした。トゥー・マッチのデビュー・アルバムと同時発売のオムニバス・アルバム『ロック・エイジ・コンサート』はフラワー、スピード・グルー~、トゥー・マッチを含む8組の英語詞ハード・ロック系バンドが収められており、この3組以外は同アルバム録り下ろし曲となっています。
陳信輝関連のアルバム同様、本作も欧米のドゥーム・メタル/ストーナー・ロック文脈で再評価されて海外のインディー・レーベルによるCD復刻が長期セールスを上げており、日本国内のリスナーよりも海外リスナーの総数の方が多いでしょう。ジョー山中の生前にフラワー・トラヴェリン・バンドの再結成ツアーが国内外で成功を収めたように、スピード・グルー&シンキやトゥー・マッチも海外公演なら再結成ライヴが成功するかもしれません。もっともフラワーはともかく、スピード・グルー~やトゥー・マッチは国内での知名度が低すぎて、そうした現状では国際的再評価は未だに浸透していないとも言えます。フラワーが例外的に脚光を浴びたとも言えますが、これらアトランティックの国産ハード・ロック・バンドは本格的すぎてアルバム内容はほとんど欧米ロックであり、その点で画期的な作品でしたが以後の日本のロックとも隔絶しているのです。また、アーティスト自身も純粋な欧米ロック指向を続けていくことができませんでした。
(Original Atlantic "Too Much" LP Gatefold Inner Cover & Side A/B Label)
ジョー山中がソウル系ソロ・シンガーになったようにジュニ・ラッシュもトゥー・マッチ解散後唯一のシングルではソウル・ミュージックを指向したものでした。トゥー・マッチのアルバムはボブ・ディラン(ザ・バンド)のB1以外は全曲ジュニ・ラッシュのオリジナル曲(3曲はギターの小川勉との共作)ですが、フラワー・トラヴェリン・バンドよりもブルース・ロック色が強いハード・ロックで、これは同年に発売されたブルース・クリエイションのセカンド・アルバム『悪魔と11人の子供達』がブルース曲で固めたデビュー・アルバムから一転して、フラワー・トラヴェリン・バンドよりもさらにブラック・サバスに傾倒した作風だったこととも対比的です。ブラック・サバスにはリフとリズム・アレンジにも凝った特徴があり、ファスト・ナンバーのみならずヘヴィなミドルテンポ以下の曲でも倍テンポの複合リズムを組み合わせる発想がありました。
トゥー・マッチがフラワーやスピード・グルー~よりもヘヴィでアンダーグラウンド、ただし60年代を引きずっているように響くのは、ミドルテンポ以下の曲(ディラン曲以外全曲短調、A4とB3はキング・クリムゾンの「Epitaph」風バラード)ばかりの上にリズム・アレンジのヴァリエーションに乏しいことです。A1は5拍子のリフから8ビートへの転換が鮮やかなイントロを持ちますが、1曲全体で、どの曲でも同様の工夫がないのが惜しまれます。ギターの音色も全編に渡って地味です。しかし本作の重さと安定感、切れの良さは外国人エンジニアによる抜群にタイトで抜けの良い録音によってフラワーやスピード・グルー~と較べても突出しており、音楽的にはフリーとカクタスの中間に位置する渋いブルース系ハード・ロックですが、後のシーンに青木正行が外道のメンバーになる程度の痕跡しかないのが不思議なほど高い演奏水準にあり、ドラムスとベースだけでもここまでボトムのしっかりしたロックのアルバムは現在の基準でも稀少なものです。本作きりしかアルバムのないバンドですが、唯一作にしか起こらないマジックが起こったのであればそれも仕方のないことだったと思えます。