Recorded by Tommy Hunter at the Choreographer's Workshop, New York (the Arkestra's rehearsal space) in 1962, 1962-1963.
Released by El Saturn Records Saturn LP-2066, 1963
All songs by Sun Ra
(Side A) :
A1. Circe - 2:34
A2. The Nile - 4:51
A3. Brazilian Sun - 3:50
A4. We Travel The Spaceways - 3:21
(Side B) :
B1. Calling Planet Earth - 5:30
B2. Dancing Shadows - 5:56
B3. The Rainmaker - 4:33
B4. When Sun Comes Out - 4:54
[ Sun Ra and his Myth Science Arkestra ]
Sun Ra - Piano, Electric Celeste, Percussion
Walter Miller - Trumpet
John Gilmore - Tenor Sax, Drums, Percussion, Percussion
Teddy Nance, Bernard Pettaway - Trombone
Marshall Allen - Flute, Alto Saxophone, Percussion
Pat Patrick - Baritone Saxophone, Bongos, Drums on A4
Danny Davis - Alto Sax on B4
Ronnie Boykins - Bass
Clifford Jarvis - Drums
Lex Humphries - Drums on B1
Tommy Hunter - Recording, Gong, Drums, Tape Effects
Theda Barbara - Vocals
Ensemble vocals
今回も堂々とお勧めできる。1962年~1963年録音の本作『When Sun Comes Out』は傑作連発期到来を告げる1961年~1962年録音の前々作『Art Forms of Dimensions Tomorrow』、1962年録音の前作『Secrets of the Sun』からもさらにテンションの高い、圧倒的なパワーがみなぎる名盤で、録音順18作目にして未発表作品ばかりだったサン・ラにとっても、完成即発売したアルバムでは『Jazz by Sun Ra』1957、『Super-Sonic Jazz』1957、『Jazz in Silhouette』1959、『The Futuristic Sounds of Sun Ra』1961に次ぐ第5作になった勝負作でもある。『Art Forms~』や『Secrets of~』を差し置いて『When Sun Comes Out』まで熟成を待ったサン・ラのすごみがわかる。
もっとも勝負で勝って商売ではそれほどの成果が得られなかったのは仕方のない面もある。まだサン・ラ・アーケストラがニューヨークに進出して満2年、アーケストラとしてのライヴ活動はほとんど停滞し、メンバーたちは優秀なミュージシャンたちだったから生活費の捻出だけでも他のバンドと掛け持ちせざるを得ず、また音楽以外のアルバイトで食いつながなければならなかった。サン・ラは不服だったが、最優先をアーケストラとすることでバンド外活動を許している。ニューヨーク進出後は規模を縮小したとはいえ、10人弱のグループに全員十分なギャラがまわるには相当な興行活動が必要なのだが、ニューヨーク進出後のアーケストラは発売未定のアルバム制作だけのスタジオ・リハーサルバンドになっていた。よくこの時期に空中分解しなかったと思うが、ノーギャラどころか持ち出しでもこの親分についていこう、というカリスマがサン・ラにはあったのだ。
(Original El Saturn "When Sun Comes Out" LP Liner Cover)
本作『When Sun Comes Out』でこれまでとちょっと違うのは、アーケストラの花形ソロイストはテナーのジョン・ギルモアだった。アルバムのほとんどのホーン・ソロをギルモアが吹いている場合もあった。本作ではギルモアのソロらしいソロがなく、マーシャル・アレン(アルトサックス、フルート)かパット・パトリック、新人のダニー・デイヴィス(アルトサックス)がフィーチャーされている。古参メンバーのパトリックやアレンもビッグバンド要員で他のバンドでアルバイトしていたのだが、ギルモアはメイン・ソロイストとして他のアーティストのアルバムに積極的にレコーディング参加していた。そこらへんでリハーサル参加が足りず、本番録音での出番も削られたのではないか。なのでギルモアのテナーに存在感がないのが唯一の不満と言えば言えるが、アレンやパトリックが埋め合わせて余りあるので後から気がつく程度の不在でしかない。
(Original El Saturn "When Sun Comes Out" LP Side A & Side B Label)
B面に移ると、メンバーのチャットから始まるB1「Calling Planet Earth」はA面にはなかったアグレッシヴなフリージャズで、サン・ラのピアノが進行を仕切っているがソロイストにフィーチャーされたパット・パトリックはバリトンサックスの限界を越えるプレイ、全体的にはパトリックとこの曲のみ参加のレックス・ハンフリーズの独壇場になっている。続くB2「Dancing Shadows」は特定のモード(特殊音階技法)に限定しないモード・ジャズと言えるか(4ビートだし)。ホーン陣は良いのだが、ピアノがオフ気味なのが惜しい。とも思うとすかさず変態4ビート曲のB3「The Rainmaker」がすぐ出てくる。今回のレコーディングから加わった17歳のアルト奏者ダニー・デイヴィスとともに活力を吹き込んだのが22歳のドラマー、クリフォード・ジャーヴィスで、ブルー・ノートのフレディ・ハバードやジャッキー・マクリーン作品でも冴えていたが主流派4ビートをやって4ビートに収まらない。B4「When Sun Comes Out」はパトリックがドラムスを兼ねてツイン・ドラム、手の空いている人間はパーカスで、あんまり怖くないおばけ屋敷のような曲想にアレンとデイヴィスの兄弟子・弟弟子のアルトが気持ち良く吹いている。CDではボーナス・トラックに3分半ほどの「Dimensions of Time」がボーナス収録され、今回のアルバムでほとんど出番のなかったジョン・ギルモアのバスクラリネットとパーカッションのデュオ演奏になっている。これはなくてもいいのでリンクにも引いていない。本作はギルモアがメイン・ソロイストでないだけでも異色作なのだが、それ以上にバンドの一体感と勢いで圧倒される。サン・ラの音楽に馴染めない人にもこれは説得力があるだろう。筆者の好みでは『Art Forms~』や『Secrets of~』、この後の『When Angels~』や『Cosmic Tones~』の方が好きだが、サン・ラ堂々の公式発売第5作という事実には敬意を表さないではいられない。この辺のアルバムは黙って聴いて、それから話が始まるというものだろう。