Released by Prestige Records, New Jazz NJ 8276, May 1963
Reissued as The Kenny Burrell Quintet with John Coltrane (PR 7532, 1968)
Recorded at Van Gelder Studio, Hackensack, March 7, 1958
(Side one)
A1. Freight Trane (Tommy Flanagan) - 7:18
A2. I Never Knew (Ted Fio Rito, Gus Kahn) - 7:04
A3. Lyresto (Kenny Burrell) - 5:41
(Side two)
B1. Why Was I Born? (Oscar Hammerstein II, Jerome Kern) - 3:12
B2. Big Paul (Tommy Flanagan) - 14:05
[ Personnel ]
Kenny Burrell - guitar
John Coltrane - tenor saxophone
Tommy Flanagan - piano
Paul Chambers - bass
Jimmy Cobb - drums
ジョン・コルトレーン(テナーサックス/1926-1967)は前回までも触れた通り自己名義のアルバムだけでも45作、参加アルバムや発掘音源を含めるとその5倍ものアルバムが残されているのだが、生前に故人が発売を了解していたスタジオ録音・ライヴ録音アルバムはほぼ100枚といったところになる。ロック・アーティストでこれだけ多作だったのはフランク・ザッパくらいだが、ザッパは25歳でデビュー作を発表し享年は50歳、対してコルトレーンのデビュー作は30歳で享年40歳になり、マイルス・デイヴィスのバンド・メンバーに抜擢され本格的なレコーディング・キャリアを始めたのもせいぜい28歳だから、ザッパとコルトレーンでは活動期間が倍ほど違う。そしてコルトレーンのディスコグラフィーを見ていると、コラボレーション・アルバムがけっこう多いのが目を惹く。発掘音源(代表的かつ重要なものでは、1957年と1958年のセロニアス・モンクとのライヴ)は除いて、コルトレーン自身が生前公式アルバムとしたもので、他アーティストのアルバムでコルトレーンがメイン・フィーチャリング・ソロイストに起用されたもの(ジャムセッション作含む)、また他アーティストとのコラボレーション作品を録音順にリストにしてみた。
1. Paul Chambers - Chambers' Music (Jazz West, 1956.3)
2. Elmo Hope - Informal Jazz (Prestige, 1956.5)
3. Sonny Rollins - Tenor Madness (Prestige, 1956.5/Jam Session, title track only)
4. Various - Tenor Conclave (Prestige, 1956.9/Jam Sessions)
5. Paul Chambers - Whims of Chambers (Blue Note, 1956.9)
6. Tadd Dameron with John Coltrane - Mating Call (Prestige, 1956.11)
7. Various - Interplay For Two Trumpet and Two Tenors (Prestige, 1957.3/Jam Sessions)
8. Red Garland with John Coltrane - Dig It! (Prestige, 1957.3)
9. Johnny Griffin - A Blowing Session (Blue Note, 1957.4/Jam Sessions)
10. Tomny Flanagan - The Cats (Prestige-New Jazz, 1957.4/Jam Sessions)
11. Mal Waldron - Mal 2 (Prestige, 1957.4,5)
12. Mal Waldron - The Dealers (Prestige, 1957.4/Jam Sessions)
13. John Coltrane - Dakar (Prestige, 1957.4/Jam Sessions)
14. John Coltrane and Paul Quinichette - Cattin' (Prestige, 1957.5/Jam Sessions)
15. Various - Blues For Tomorrow (Riverside, 1957.6/Jam Session, one track only)
16. Thelonious Monk - Monk's Music (Riverside, 1957.6/Jam Sessions)
17. Sonny Clark - Sonny's Crib (Blue Note, 1957.9)
18. Frank Wess and John Coltrane - Wheelin' & Deelin' (Prestige, 1957.9/Jam Sessions)
19. Various - Winner's Circle (Bethlehem, 1957.10/Jam Sessions, four tracks only)
20. Red Garland - All Mornin' Long (Prestige, 1957.11/Jam Sessions)
21. Red Garland - Soul Junction (Prestige, 1957.11/Jam Sessions)
22. Red Garland with John Coltrane - High Pressure (Prestige, 1957.11/Jam Sessions)
23. Ray Draper Quintet featuring John Coltrane (Prestige/New Jazz, 1957.12)
24. Art Blakey Orchestra - Art Blakey's Big Band (Bethlehem, 1957.12)
25. Gene Amons - Groove Blues (Prestige, 1958.1, three tracks only)
26. Gene Amons All Stars - The Big Sound (Prestige, 1958.1, one track only)
27. Kenny Burrell and John Coltrane (Prestige/New Jazz, 1958.3)
28. Wilbur Harden Quintet - Mainstream 1958 (Savoy, 1958.3)
29. Wilbur Harden - Tanganyika Strut (Savoy, 1958.5,6)
30. Michel Legrand Orchestra - Legrand Jazz (Columbia, 1958.6, three tracks only)
31. Wilbur Harden - Jazz Way Out (Savoy, 1958.6)
32. George Russell - New York N.Y. (Decca, 1958.9, one track only)
33. Cecil Taylor - Hard Drivin' Jazz (United Artists, 1958, reissued as John Coltrane - Coltrane Time)
34. Ray Draper Quintet - A Tuba Jazz (1958.11)
35. Milt Jackson and John Coltrane - Bags and Trane (Atlantic, 1959.1)
36. Cannonball Adderley Quintet in Chicago (Mercury, 1959.2)
37. John Coltrane and Don Cherry - The Avant-Garde (Atlantic, 1960.6,7)
38. Miles Davis - Someday My Prince Will Come (Columbia, 1961.3, two tracks only)
39. John Coltrane (with Orchestra) - Africa Brass (Impulse!, 1961.5,6)
40. Duke Ellington and John Coltrane (Impulse!, 1962.9)
41. John Coltrane and Johnny Hartman (Impulse!, 1963.3)
42. John Coltrane - Ascension (Impulse!, 1965. 6/Jam Sessions
43. John Coltrane - Om (Impulse!, 1965.10/Jam Sessions)
44. John Coltrane (featuring Juno Lewis) - Kuru Se Mama (Impulse!, 1965.10)
45. John Coltrane (duet with Rashied Ali) - Interstellar Space (Impulse!, 1967.2)
(Original Prestige/New Jazz "Kenny Burrell and John Coltrane" LP Liner Notes)
1. Dizzy Gillespie Orchestra - Capitol Recordings (Capitol, 1949-1950, not included Coltrane's solo)
2. Dizzy Gillespie Sextet - School Days (Regent/Savoy, 1951.2, two tracks only)
3. Dizzy Gillespie Quintet - The Champ (Savoy, 1951.2, two tracks only)
4. Earl Bostic and His Alto Sax (King, 1952.4,8, eight tracks only)
5. Johnny Hodges Orchestra - Used To Be Duke (Norgram, 1954.7)
6. Miles : The New Miles Davis Quintet (Prestige, 1955.11)
7. Relaxin' with the Miles Davis Quintet (Prestige, 1956.5,10)
8. Workin' with the Miles Davis Quintet (Prestige, 1956.5,10)
9. Steamin' with the Miles Davis Quintet (Prestige, 1956.5,10)
10. Cookin' with the Miles Davis Quintet (Prestige, 1956.10)
11. Miles Davis and the Modern Jazz Giants (Prestige, 1956.10, one track only)
12. Miles Davis - 'Round About Midnight (Columbia, 1955.10, 1956.6, 1956.9)
13. Thelonious Monk - Thelonious Himself (Riverside, 1957.4, one track only)
14. Thelonious Monk with John Coltrane (Riverside, 1957.7, new three tracks only)
15. Miles Davis - Milestone (Columbia, 1958.4)
16. Miles Davis - Jazz Track (Columbia, 1958.5, three tracks only)
17. Miles Davis at Newport 1958 (Columbia, 1958.7)
18. Miles Davis - Kind of Blue (Columbia, 1959.3,4)
これで『Soultrane』のご紹介でリストにしたコルトレーン自身の名義のアルバム(遺族公認による正式リリースの発掘音源含む)、一部重複するがコルトレーンのセッション・ゲスト参加アルバムと共作アルバム、またバンドリーダーとして独立するまでに在籍してきたバンドのアルバムを上げたので、これがコルトレーンの全アルバム(プライヴェート録音やラジオ放送音源を除く)と見做すこてができる。マイルスのバンドに加入するまでの5枚は資料的価値としても、以降の12年間でコルトレーンはほとんど強迫的なまでに急進的なジャズマンであり続けた。その姿勢はメイン・ソロイストとしてのフィーチャリング・ゲスト作品、コラボレーション作品でも変わらなかったわけで、コルトレーンはそれだけ腕前を買われていたということでもあるし、ほとんどの場合はその期待に応えた。また、黒人ジャズ自体が非常な多産を許した時代だったという背景もある。プレスティッジ・レーベルはレッド・ガーランド(1923-1984)、マル・ウォルドロン(1925-2002)、トミー・フラナガン(1930-2001)らといったピアニストをハウス・バンドのリーダーにして片っ端からジャムセッション・アルバムを制作しており、プレスティッジほどは粗製濫造ではなかったリヴァーサイド、ブルー・ノートでも専属のセッション・ピアニスト中心にメンバーの組み合わせを変えて新作の企画を立てていたことでも当時もっとも効率的にインディーズのジャズ・レーベルを運営していく方法だった。今日のように1作ごとに周到なプロモーションがされ、ツアーを連動させるようになったのは1970年代以降のメジャー・レーベルによるもので、とにかく契約期間中に大量の録音をストックして小出しにリリースし、リリース済み作品のプロモーションを兼ねる。そんなやり方で名作佳作が続出したのは奇跡的で、40~60年代のジャズにはそれができた。だから奇跡が起こらなくなった時にジャズは存亡の危機に立たされたのだが、コルトレーンの急逝はちょうどそんな節目に当たっていたとも言える。
(Original Prestige/New Jazz "Kenny Burrell and John Coltrane" LP Side 1 & Side 2 Label)
コルトレーンに続くケニー・バレルのソロは落ち着いたもので、バレルはチャーリー・クリスチャン派のバップ・ギターを出発点にジャズ・ギタリストとしてはブルース色が強いが、端正で軽やかなブルース感覚にブルース・ギタリストではないジャズ・ギターならではの洒脱さがある。コルトレーンもリズム&ブルースを経由してきてはいるが、バレルのようにブルースとバップを上手く調和させたスタイルというより、ブルースとしてもバップとしても過剰なものを同時に表現しようと苦心していたのがプレスティッジ時代でも1958年には目立ってくる。この年、マイルス・デイヴィスのバンドに復帰したコルトレーンは凄腕アルトサックス奏者キャノンボール・アダレイとバンドメイトになり、マイルスもアルバム『Milestones』1958.3でコルトレーンとアダレイから画期的な名演を引き出す。マイルスのバンドはライヴで忙しいレギュラー・バンドだったから1958年のコルトレーンはマイルス・セクステットに雇われながらスケジュールの空きをプレスティッジやサヴォイの録音に当てていたので、マイルスのバンドで演っている音楽的水準にインディーズの制約の中で挑む無理をすることになった。本作など『Milestones』録音3日後の録音になる。コルトレーン参加のマイルス・デイヴィスのアルバムがコルトレーンにとってコルトレーン自身のアルバムと同等かそれ以上の重要性を持つ、とはそういう意味でもある。
(Reissued "The Kenny Burrell Quintet With John Coltrane" LP Front and Liner Cover)
だが20代のジャズマンだった彼らには1951年と1958年では大きな変化があって当然で、コルトレーンやバレルほど自分のスタイルに磨きをかけてきたならなおのことになる。フラナガンもデトロイトからニューヨーク進出後の『Kenny Burrell Vol.2』(ブルー・ノート1956.3)以来本作でまだ満2年目にして参加アルバム36枚目、と引っ張りだこの辣腕ぶりを発揮していた。チェンバースはプレスティッジ専属ベーシストでマイルス・セクステットの同僚でもあり、ジミー・コブ(1929-)はマイルスのバンドでバックレ癖に問題があったフィリー・ジョー・ジョーンズの代わりにライヴをこなしているうちに、ちょうどこのアルバムの録音翌月からフィリー・ジョーに代わる正式ドラマーになっている。プレスティッジのセッション・ドラマーはアート・テイラーの起用が多いのだが良くも悪くも堅実で、このアルバムを聴くとコブで良かったなあ、としみじみ思わせる。天才フィリー・ジョーの後任に抜擢されただけのセンスの良さに気づかされる。
(Reissued "The Kenny Burrell Quintet With John Coltrane" LP Side 1 & Side 2 Label)
コルトレーンとバレルは両者とも良い演奏をしているが、抜群の安定感のあるバレルに対してコルトレーンが勢い余ったプレイを見せるのが玉にきず、といったところか。後のミルト・ジャクソンとの『Bags & Trane』1959.1ほどは成功していない。もっともセシル・テイラーの『Hard Drivin' Jazz』1958.10、ドン・チェリーとの『The Avant-Garde』1960.6,7ほど無理なアルバムにはならなかった。そこはトミー・フラナガンの手腕によるところが大きい。プレスティッジのハウス・ピアニストとしてレッド・ガーランド、マル・ウォルドロンらも優れたジャズマンだったが、ソロイストそれぞれの個性を引き出すよりはガーランドはいつもガーランドだったし、ウォルドロンはいつもウォルドロンだった。フラナガンはソロイストのバックでは最小限にリズムを刻み、ピアノのソロでも分厚いコードやアルペジオは避けてベースとドラムスの躍動感を生かした効果的なシングル・ラインのソロを弾いた。アルバム全体では佳作止まり、ギターとテナーのデュオ「Why Was I Born?」もケミストリーというほどのものは生んでいない。コルトレーン唯一のギタリストとの本格的コラボレーションと思うと物足りないが、実態はバレルのリーダー作と思うとこんなものかな、という気もする。