はひふへほー、と小人のひとりが笑いました、どうせおれたち小人なんか力まかせではねのけられる、と油断してたに違いまい。それが慢心てやつさ、とハンマーを打ち合わせる音が聞こえ、だけど地面に張りつけにされたら、さすがにちょっとやそっとの力じゃ、身動きひとつとれないぜ。
さあお嬢さんはどうするのかな、と別の小人が嬉しそうに言いました、かなりにっちもさっちもいかない事態だね、おれたちにとっては形勢逆転というべきか、別に最初から勝ち目は決まっていたようなものだがね。アリスは頭に血が上り、この人でなし、ゲス野郎、人間の屑と反射的にわめき出すところでしたが、どう言われても小人たちにはまるでこたえないのはわかりきっています。そんなことは私のような未来のレディが口にすることじゃないわ。アリスが品性をかなぐり捨てたら、それこそ小人たちの思うつぼです。
それでおれたちはどうする?と別の小人が言いました。ざわ、と小人たちの間に当惑した雰囲気が走るのが、あお向けに張りつけになったアリスにも感じとれました。どうやら小人たちは、アリスを身動きとれなくした目的までは決めていなかったようでした。
きっとこいつらばかなんだわ、とアリスは勘ぐりました、張りつけにしたのは小人がでかい獲物を見つけた時の本能で、いわばそれ自体が目的で、張りつけにしたその後のことまで考えてはいないのにちがいない。だったらなるべく無傷で助かる方法もあるかもしれないわ、とアリスはすばやく狡知をめぐらせました。狡知とはずるがしこい手段を考えることで、立派なレディのたしなみのひとつとして大人になるまでに身につけなければなりません。
そりゃあさ、と別の小人が困った様子で言いました、おれたちゃ小人なんだから、小人らしいことをしなきゃあなあ。
やっぱそうきたか、とアリスは内心ほくそ笑んで、あんたたち小人らしいことって何だか知ってるの?小人たちはてんでんばらばらな声を上げました。アリスは面白くなってきました。わけがわからずぐちゃぐちゃになっている集団ほど誘導しやすいものはないからです。ほら全然わかっていないじゃない、とアリスは挑発しました。またもや混乱してキーキー仲間割れする小人たち。
小人らしいってことは、人間の嫌がることをすることよ。
あーそうかっ!とばかな小人は素直に引っかかりました。で、何すりゃいいんだ?
女体盛りとかどう?とアリス。
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新・NAGISAの国のアリス(48)
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