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Channel: 人生は野菜スープ(または毎晩午前0時更新の男)
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桜の花が咲くまでに

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 これは何でしょうか、と白々しく訊くまでもないが、もちろん台になっている写真のことではない。写真は『Billie Holiday The Complete Masters 1933-59』(2011, Universal Music Classics & Jazz France)という15枚組CDボックスの箱の表紙で、ビリー・ホリデイ(1915-1959)の……そういえば昨年はビリー生誕100年だったのに、同年生まれのフランク・シナトラに較べて何もなかったな、それは置いといて、この15枚組CDボックスはビリー生涯の公式スタジオ録音322曲を原盤権をすべてクリアし最新リマスター・完全収録した唯一のセットなのだが、それより散らかっているプラスチックのチップはといえば、昨年末のごみ収集以来3月末までにた貯まった食パンの袋の留め具なのだった。もちろんすぐに捨ててしまった時もあるが、最低でも17斤の食パンの留め具があるからには20斤は食べたに違いない。

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 特に保管しておこうと思って取っていたわけではないが、ひとり暮らしとなると食パン1斤を一度に食べることはまずない。8枚切りだったら2枚ずつとか、多くても1食で4枚食べるのがせいぜいだから、留め具で残りを袋に封じておくことになる。するとうっかり捨ててしまっていた時のために予備が必要になる。他のもの、たとえば輪ゴムとか洗濯ばさみでもいいようで、輪ゴムは案外着脱が面倒だし、洗濯ばさみは洗濯して足りなくなったら困るではないか。食パンの留め具の代わりには食パンの留め具がいちばん都合いい。

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 そんなわけで食べきった食パンの留め具も何となく台所の一角に貯めているうちに、今年も桜の季節がやってきた。住んでいるのが私鉄の駅近くで、線路沿いの小径に桜並木があり、私鉄をまたぐ歩道橋の上からだと見晴らしがいい。駅前までの用事でちょっと外の空気を吸って……2010年の春はこの桜は見なかった、ちょうど3月始めから3か月間入院していて、院内の患者遠足で入院先の病院近所の桜を見たのだった。それから1年間は人生でなかったことにしたい1年間になったが、そんなことがいち個人の身には起こっても毎年桜は咲く。このブログを始めたのは2011年5月だからそろそろ満5年になるが、そんなことは関係なく桜は咲く。

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 昨年末にはまとめて捨てたはずだからこの食パンの留め具の数が今年になって桜が咲くまでに食べた食パンの数だ。数回捨てた分があるとして3か月で約20斤、これは多いのか少ないのかよくわからない。朝食は必ず食パン、という食習慣でもない。入獄は1回、入院は5回したが(うちもっとも最近の2011年夏の入院は急性盲腸炎だったので、サンプルにはならない)、留置場はパン食は一切ない(仕出し弁当しか出ない)。拘置所もパンを食べた覚えがないし、麺類が出た記憶もない。もっとも拘置所ごとに食事は全然違うらしい。精神病院は4回・3軒しか知らないが、パンや麺類をよく出す病院もあればたまに出す病院もあり、ほとんど出ない病院もあった。季節にもよるのかもしれない。そんな風に比較したくなるのも、最後の重篤入院から満5年経った今でも在宅入院のような生活感覚なのかもしれない。

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