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Recorded in 1966 to 1967
Released by Epic Records BN26304, June 1967
(Side one)
A1. Egyptian Gardens (Solomon Feldthouse) - 3:08
A2. If the Night (Chris Darrow) - 1:51
A3. Hesitation Blues (Charlie Poole) - 2:27
A4. Please (Feldthouse, Mark Freedman) - 3:18
A5. Keep Your Mind Open (Darrow) - 1:56
(Side two)
B1. Pulsating Dream (Darrow, Feldthouse, David Lindley) - 2:16
B2. Oh Death (Dock Boggs) - 3:25
B3. Come on In (Traditional, arranged by David Lindley) - 2:07
B4. Why Try (Lindley) - 3:39
B5. Minnie the Moocher (Cab Calloway, Clarence Gaskill, Irving Mills) - 2:15
total time; 26:32
[ Kaleidoscope ]
David Perry Lindley - banjo, fiddle, mandolin, guitar, harp guitar, 7-string banjo
David Solomon Feldthouse - vocals,? saz, bouzouki, resonator guitar, veena, goblet drum, dulcimer, fiddle, 12-string guitar
Christopher Lloyd Darrow - bass, banjo, mandolin, fiddle, autoharp, harmonica, clarinet
Fenrus Epp (Chester Crill) - violin, viola, bass, piano, organ, harmonica
John Vidican - percussion
1967年6月といえばビートルズ『Sgt. Pepper's Lonely Club Band』の英米発売月になる。歴史とはよくできているもので、ビートルズの活動期間は第二次大戦後のベビーブーム世代(日本で言う「団塊の世代」)のティーン~成人期に当たり、資本主義世界の消費文化が爆発的に増大した時期だった。同作は英米合わせて1,000万枚近いセールスを上げる驚異的な販売実績を記録したが、当時のヒット・アルバムの基準は1万枚台、記録的なヒット作ですら5万枚~10万枚が目安だった。ビートルズはレコード購買層が増大した時期にもっともアルバムが求められたアーティストだった。『Sgt. Pepper's~』はビートルズのアルバムが初めて全世界統一規格で発売されたもので、前作『Revolver』1966.8まではビートルズさえも各国(大別すれば14曲入りイギリス盤、12曲入りアメリカ盤の2系統になる)で収録内容、ジャケット・デザイン(『Revolver』の場合は裏ジャケット)が異なっていた。『Revolver』までビートルズのアルバムはイギリスでは半年ごと、アメリカでは年間3枚の発売だったが、『Revolver』の後は初めて10か月あまりの間隔が空き、コンサート活動休業宣言もあって新作への期待がかつてないほど高まっていた。
この調子で書いていくと『Sgt. Pepper's~』の話題で終始してしまうが、早い話『Sgt. Pepper's~』はビートルズほどの業績があったから実現できた実験ポップスのロック・アルバムであり、圧倒的に多数の支持層による商業的・批評的成功によってポピュラー音楽のアルバム制作の概念を一変させた分水嶺的作品になった。『Sgt. Pepper's~』が直接的影響を受けた先駆的アルバムとしてボブ・ディラン『Blonde on Blonde』1966.5、ビーチ・ボーイズ『Pet Sounds』1966.5、フランク・ザッパ&ザ・マザーズ『Freak Out!』1966.8が上げられ、ザッパ&マザーズの第2作『Absolutely Free』1967.5はより徹底したコンセプト・アルバムで発売前にサンプル盤によって『Sgt. Pepper's~』の最終的な構成に影響を与えた、とも言われる。またジミ・ヘンドリックスのデビュー・アルバム(1967.5)は年間チャートでは『Sgt. Pepper's~』を上回る年間No.1ヒット・アルバムになった。ザ・バーズ、ラヴ、ジェファソン・エアプレイン、グレイトフル・デッド、バッファロー・スプリングフィールド、ドアーズ、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドら新世代の尖鋭的アンダーグラウンド・ロックのデビュー作は『Sgt. Pepper's~』に先行していたが、その段階ではビートルズのポピラリティとは比肩すべもなかった。『Sgt. Pepper's~』とデビュー作を同月発売したのはモビー・グレイプとカレイドスコープ(同名バンドが同時期にイギリスとアルゼンチンに存在するが、無関係)がいる。前記のアーティストたちはこぞって『Sgt. Pepper's~』へのアンサー・アルバムを制作することで『Sgt. Pepper's~』を乗り越える方向性を模索するが、これも成功作もあればバンドの首を絞めることになった失敗作までさまざまだった。
(Original Epic "Side Trip" LP Liner Cover)
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おそらくトータルなバンド・サウンドのアイディアと画期的な楽曲ではビートルズ、ロックのシンガー・ソングライター、パフォーマーとして言葉の洪水で圧巻したボブ・ディラン(ミック・ジャガーのバンドとしてのローリング・ストーンズでもいいが)と、エレクトリック・ギターを肉声表現の域まで操れる発想を実現したジミ・ヘンドリックスの3アーティストが1966年~1967年以降のロックを決定し、それは現代でもロックのベーシックなスタイルといえるものだろう。クラフトワークがビートルズ以降唯一のポップ・ミュージックの改革と呼ばれることがあるが、クラフトワークが付け加えたものはあるにせよクラフトワークがビートルズを覆したとは言えない。また、具体的にアルバム『Sgt. Pepper's~』が制作されなくても、前作『Revolver』の延長線上にロックが進んでいけば結果は同様だったろうとも思え、象徴的アルバムとして『Sgt. Pepper's~』が現れたにすぎないとも言える。だが、『Sgt. Pepper's~』とは関係なく現れ、『Sgt. Pepper's~』前後のロック状況とは何の関わりもなく存在したアルバム、バンドもある。長い前置きになったが、それが『Sgt. Pepper's~』と同月発売のカレイドスコープのデビュー作『Side Trip』1967.6で、少数の批評家の注意を喚起しただけでほとんど反響はなく、セールスも冴えなかった。それでもメジャーのEpicから『Side Trips 』1967、『A Beacon from Mars』1968)、『Incredible! Kaleidoscope』1969、『Bernice』1970の4作を発表し、一時的再結成してインディーズから『When Scopes Collide』1976、『Greetings from Kartoonistan... (We Ain't Dead Yet)』1991が発表されてもいる。
(Original Epic "Side Trip" LP Side 1 Label)
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このアルバムでは3曲がカヴァーで、1916年のクラシック・ジャズで後の「ブルースの父」W.C.ハンディの改作ヴァージョンがより著名なサイド1の3、1920年代後半成立で1938年に国会図書館の記録録音があるカントリー・ブルースがサイド2の2(これはカレイドスコープがカヴァーしたことでクラシック・ブルースとの評価が定着した)、さらにアルバム最終曲はアメリカ人なら知らない人はいない"Hi De Hi De Hi De Hi!"で有名な「Minnie the Moocher」で、キャブ・キャロウェイ1931年の初録音以来1980年の映画『Blues Brothers』でも使われているほどポピュラーなノヴェルティー・ソングであり、およそ尋常なロック・バンド、フォーク・ロック・バンド、カレイドスコープのような尖鋭的サイケデリアのバンドがレパートリーにするような曲ではない。イギリスのクリームが「I'm So Glad」や「Crossroad」を大真面目にやっていたのに、カレイドスコープは呑気に「Hesitation Blues」や「Minnie the Moocher」をやっていた。クリームのブルース解釈はハード・ロックの基礎になったがカレイドスコープのアプローチは『Sgt. Pepper's』直撃真っ最中のシーンではまったく孤立したものだった。オリジナル曲を聴くなら『Side Trip』は楽曲ではアコースティック版『Revolver』に近いサイケデリック・ロック作品ではある。全編26分強、表裏とも1色刷りのジャケット等このアルバムは当初から廉価盤として作られたと思われる節もある。だが何より、このアルバムは『Sgt. Pepper's~』ともディランともストーンズともジミ・ヘンドリックスとも無関係な方向にあり得たロックの可能性を示し、見かけ以上に思いがけない独自性を潜めていた絶滅種として、未だにその真価を十分認められてはいない。