泣きべそをかきながらもしぶしぶサルとイヌは、元の燕尾服とワンピースに着替えるため、せっかくせしめた他人の服を脱ぎ始めました。田舎の夜道ですから通りかかる人もおらず、助けを求めるすべもありません。
そうか、手配中の不審者とはあなたたちだったのか、とカッパ。要するに、自分たちの服を着た身替わり死体が必要なわけですね。シェーッ、とサルとイヌは飛び上がりました。うすうす気づいてはいたけれど、カッパがそれを言うのは挑発もはなはだしいことです。
あーでも、とカッパは残念そうにイヌの方を向いて、こいつは身替わりになりませんよ、ついてますもん、アレが。ね?そうですそうです、私これでもついてるんです、とイヌもワンピースのすそを持ち上げました。
それからこいつは、とサルの方を向き、こいつはこれでもついていないんです。サルは一瞬傷ついた気分が表情に表れてしまいましたが、すぐにごまかし、そそそうなんです、私ついていないんです。ほーら、身替わりにするのは無理ですよお。別を当たった方が……。
しかしもうお前たちは知ってしまった、とウサギ。僕たちバカだから大丈夫でーす、と必死にアピールする3匹。
でも使えるわ、と少女。撃ち殺した後でついてる方からアレを切りとって、ついてない方につければいいのよ。
それはあんまりじゃないですか、とサル、愛もないのにチョン切っちゃうなんて。
愛があればいいの?と少女。
いや……と言葉に詰まるサル、てか僕がついていないというのは嘘です。でもこいつが(とイヌを見て)ついているのは本当ですから、さっきの話だとアレが1本あまります。
つべこべ言わずにさっさと来るんだ!とウサギが怒鳴ると、威嚇されてずっとお腹がゴロゴロしていた3匹はとっさに一気に脱糞すると、手づかみでウンコをウサギと少女に投げつけました。うわっ、何をするかっ!
これは一見汚い手口ですが、糞便の投擲は前近代化社会では世界中で普通に行われていた攻撃法です。ひりたての生ウンコを投げつけられて(熟成したウンコも嫌ですが)ひるまない相手はめったにいません。
3匹は脱兎のごとく、そのうちサルとイヌは半裸のままで逃げ出しました。激しい銃声が聞こえると、3匹はいつの間にか警官隊に包囲されているのに気づきました。3匹は起こったことを正直に話しましたが司直は信用せず、所持品によって3匹は本国へ強制送還されることになったのです。
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真・NAGISAの国のアリス(26)
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