モップス Mops - モップス 1969-1973 (リバティ, 1973)

モップス Mops - モップス 1969-1973 (リバティ, 1973) Full Album : https://www.youtube.com/playlist?list=PLSLBUgCqrMZTfjHonLMpUOk8iHEjdaNzv
発売・リバティ(東芝音楽工業) Liberty LTP-9076, 1973年6月5日
(A面)
1. 晴れ 時々 にわか雨 (阿久悠作詞・星勝作曲) - 3:27
2. 傘がない (井上陽水作詞・作曲) - 4:46
3. 永久運動 (喰始作詞・星勝作曲) - 3:52
4. 消えない想い (阿久悠作詞・村井邦彦作曲) - 3:36
5. たどりついたらいつも雨ふり (吉田拓郎作詞・作曲) - 3:26
(B面)
1. 朝まで待てない (阿久悠作詞・村井邦彦作曲) - 2:59
2. 歌いたい魂 (スズキミキハル、及川恒平作詞・星勝作曲) - 4:02
3. すずきひろみつの気楽に行こう (マイク真木作詞・作曲) - 2:42
4. 御意見無用 (いいじゃないか) (鈴木博三、喰始作詞・星勝作曲) - 3:22
5. 何処へ (小谷夏作詞・星勝作曲) - 5:37
6. 今日の終りに(エンド・テーマ) (スズキミキハル作詞・星勝作曲) - 1:25
[ モップス ]
鈴木博三 - リーダー、リードヴォーカル、パーカッション
星勝 - ギター、ヴォーカル
三幸太郎 - ベース、ヴォーカル
スズキミキハル - ドラムス、ヴォーカル

　モップスとしては最後のスタジオ録音のフルアルバムになる。モップスのアルバム紹介も今回の第5回で最後だから、全アルバムのリストを再掲載しておきたい。このリストの9は純粋なベスト盤になるが、デビュー作のザ・モップス名義の1はビクターエンターテインメント株式会社、前述の9を除く2～10はユニバーサルミュージック合同会社から、2014年4月に星勝監修で一斉にアルバム未収録シングル、オムニバス盤収録曲などをボーナス・トラックにしてリマスター再発された。こういうのは、品切れ廃盤になる前に買っておかないと後で泣きを見る。再発から満2年の今年4月で廃盤扱いか重版受け付け可か決まるだろう。かなりの枚数が海外のマニアに流れているとも思われる。それにしても、東芝からのアルバムがユニバーサルとは何だか変な感じがする。

[ モップス (ザ・モップス) 全アルバム ]
1. サイケデリック・サウンド・イン・ジャパン (1968年4月発売)日本ビクター/Victor
2. ロックンロール・ジャム'70 (ライヴ/1970年4月5日発売・A面のみ)東芝音楽工業/Express→5のリマスター盤ボーナス・トラックに全曲収録
3. ロックン・ロール'70 (1970年6月5日発売)東芝音楽工業/Liberty
4. 御意見無用(いいじゃないか) (1971年5月5日発売)東芝音楽工業/Liberty
5. 雷舞(らいぶ) (ライヴ/1971年10月5日発売)東芝音楽工業/Liberty
6. 雨/モップス'72 (1972年5月5日発売)東芝音楽工業/Liberty
7. モップスと16人の仲間 (1972年7月5日発売)東芝音楽工業/Liberty
8. モップス1969～1973 (1973年6月5日発売)東芝音楽工業/Liberty
9. ラブ・ジェネレーション/モップス・ゴールデン・ディスク (ベスト・アルバム/1973年10月25日発売)東芝音楽工業/Liberty→未CD化
10. EXIT (解散コンサート・ライヴ＋スタジオ録音/1974年7月5日発売)東芝音楽工業/Liberty
(Original Toshiba-Liberty "雨/モップス'72" LP Front Cover)

　6の『雨/モップス'72』はアルバム未収録シングル曲6曲に新録音4曲を足したものだった。7の『モップスと16人の仲間』を挟んだこの『モップス1969～1973』は『雨/モップス'72』と同様シングル曲に新録音を足したものだが、『雨/モップス'72』はオリジナル・アルバムとされてこれまでも再発されてきたのに、『モップス1969～1973』はベスト盤扱いされて新規編集のベスト盤ごとに曲単位でまちまちに再収録されてきたのだった。ではどれだけ既発シングルが占めるかというと、『雨/モップス'72』にすでに6曲が収録されていて、それとのダブりは71年1月のシングルA面だったB4「御意見無用(いいじゃないか)」しかない。
　A1は73年3月のシングルA面で、やはりシングルA面でヒット(オリコン26位)したA5(『モップスと16人の仲間』にも収録)をメンバー自作曲で焼き直してみたような作品。B3は鈴木ヒロミツ本人出演のテレビCMの曲で73年1月のシングルA面と、つまり全11曲中シングル曲はどれもA面曲だったA1, A5, B3, B4の4曲しかない。星勝がディレクターを勤めた井上陽水の「傘がない」のモップス・ヴァージョンも、新作オリジナル曲A3, B1, B5(世界歌謡祭入賞曲), B6はいずれも星勝のリード・ヴォーカル曲だが、このアルバムが初出になる。また、ビクターからのデビュー曲のB1「朝まで待てない」はセルフ・カヴァーでリズムの強化が頼もしく、やはりデビュー・アルバム収録曲の阿久悠作詞・村井邦彦作曲の提供曲A4「消えない想い」(ヴォーカルは三幸太郎？)のアコースティック・アレンジとともに、いわゆるGS勢の中で異端者ジャックスともっとも近かったのが一見典型的GSのテンプターズだったり、モップスのこの2曲や「ブラインド・バード」だったのを実感させる。硬派のゴールデン・カップスやダイナマイツは外部作家提供の日本語シングル曲なんてロックではないと一切ステージでは演奏しなかったそうだが、テンプターズは日本語のメンバー自作オリジナル曲中心だったし、ジャックスなどは全曲自作曲だった。モップスのセルフ・カヴァーも日本語ロックへの取り組みに自信のあふれたものだった。
(Remasterd 2014 Universal "モップス1969～1973" CD Front Cover)

　モップスの解散は今度は正真正銘の、新録音を含まない2枚組ベスト・アルバム『ラブ・ジェネレーション/モップス・ゴールデン・ディスク』の発売された1973年10月には決まっていたらしい。鈴木ヒロミツのタレント活動と星勝の音楽ディレクター(今日で言うプロデューサーに相当する)活動の多忙のためで、星勝は井上陽水の『断絶』72.5、『センチメンタル』72.12、『もどり道』73.7のアレンジ/ディレクターを勤め、73年12月発売で日本初のミリオンセラー・アルバムとなる『氷の世界』の発表を控えており、アレンジャー/ディレクターとしての依頼が殺到していた。鈴木ヒロミツの俳優・タレント活動もモップスの音楽活動を圧倒していたが、鈴木ヒロミツと星勝の間にバンドのリーダーシップをめぐる意思の相違もあり、またマネジメントからはメンバーの個別活動を急かされており、バンドとしてはまだ続けられる状態でありながら解散するのは不本意だったらしい。ともあれモップスは1974年4月に解散コンサートを開いて解散した。
　ラスト・アルバム『EXIT』はA面が解散コンサートのライヴ録音から「イントロダクション」とカヴァーしてきた洋楽・モップスの歴代代表曲のメドレーからなる「モップス・ヒストリー」、B面は10分近いスタジオ録音のプログレッシヴ・ロック・オリジナル曲「わらの言葉」と「モップス・ヒストリー」の続きとなる。プロデューサーは中立的な立場のメンバーが当たる、という合意でスズキミキハルが担当した。演奏よりもMCが多いようなメドレーで、映像つきでドキュメンタリーならともかく音だけでは少々きついアルバムだが、全曲スタジオ録音でラスト・アルバムを作れなかったのは事実上解散状態では仕方ない。英語詞ロックでは『御意見無用(いいじゃないか)』、日本語ロックでは『雨/モップス'72』を残し、さかのぼっては『サイケデリック・サウンド・イン・ジャパン』がある。星勝が手がけた井上陽水のような抜群なシンガー・ソングライターはモップスのメンバーにはいなかったが、それでも1974年まで現役感を保ったままアルバム10枚をオリジナル・メンバーで(第2作で1人抜けたが)残せたバンドはモップスが唯一だった。どうしてモップスだけが生き残ったのか、たぶん本人たちにもわからなかったに違いない。
　? (Original Toshiba-Liberty "EXIT" LP Front Cover)

モップス Mops - モップス・ヒストリー Mops History (from the Album "Exit" Liberty, 1974) : https://youtu.be/0SnEXOIaUno - 19:13
from album "EXIT" A2「モップス・ヒストリー」(19:13)
a. ウォーク・ドント・ラン / Walk Don't Run
b. 朝日のあたる家 / House of the Rising Sun
c. サンフランシスコ・ナイト / San Franciscan Night
d. 好きさ、好きさ、好きさ / I Love You
e. サムボディ・トゥ・ラヴ / Somebody to Love
f. 朝まで待てない
g. パープル・ヘイズ / Purple Haze
h. 御意見無用 (いいじゃないか)
i. たどりついたらいつも雨ふり