ノックの音に気づいてドジソン先生がドアを開けると、そこに立っていたのは小さなエディスでした。こんばんわ、と小さなエディスは言いました。
私そんなの知らないわ、とエディスは言いました。いいから黙ってなさい、とロリーナは妹をたしなめました。先生、それから?
ドジソン先生はきみは少し小さすぎるみたいだね、と言い、ほら、お菓子を持ってお帰り。小さなエディスはうなずくと、チョコビのトロピカルフルーツ味を選んでドジソン先生に見せました。おや、そんなお菓子があったのかい。ドジソン先生はエディスにチョコビを渡すと、持ってお帰り、と言いました。
それからドジソン先生が作りかけだった数学の問題に戻ると、また遠慮がちなノックの音がしました。どうしてチャイムを鳴らさないんだろう、とドジソン先生は思いました。うちのチャイムのボタンは、そんなに鳴らしづらいところについているのだろうか。ですがその理由はドジソン先生には思いもよらないことでした。なぜなら部屋の主であるドジソン先生本人は、自分の借りている部屋に入るのにチャイムを鳴らすことはなかったからです。
よくわからないわ、とアリスは言いました。だって先生は理由がわかったんでしょう?そうでなければチャイムのことなんか話題にするわけないもの。
いいから口を挟まないで、と姉のロリーナは妹をたしなめました。先生のお話にはまだ続きがあるのよ。ちゃんと聞いていればわかるわ。アリスは不服で、妹のエディスとせっせっせでもしたい気分でしたが、それも子供じみているので止めました。ドジソン先生は意にも介さない様子でお話を続けました。
誰もがチャイムを鳴らさずドアをノックしたわけは、チャイムが酒臭かったからです、とドジソン先生は言いました。酒臭いチャイム?とロリーナは訊き返しそうになりましたが、お話の腰を折っては駄目と妹たちに注意してきた手前、口を挟むわけにはいきません。
ドジソン先生がドアを開けると、立っていたのは大きなロリーナでした。こんばんは、とロリーナは言いました。
妹のアリスとエディスはロリーナのこわばった顔を見つめました。ドジソン先生はロリーナに真面目な口調で、きみは少し大きすぎるみたいだね、何か果物を持ってお帰り、と言いました。いりません、とロリーナ。そうかい、それなら手ぶらでお帰り。
それから再びノックの音がしました。ドジソン先生は大根を構えました。
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新・NAGISAの国のアリス(3)
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