Disc 1(Side A & B) also previously released as "Limited Edition" (United Artirts, 1974)
All songs written and composed by Can.
(Side A)
1. Gomorrha (December 73) : https://youtu.be/PUEJvkZWYq0 - 5:41
2. Doko E (August 73) : https://youtu.be/6rdSD_GYKms - 2:26 (15:12~)
3. LH 702 (Nairobi/Munchen) (March 72) : https://youtu.be/RYDJlQE7fas - 2:11
4. I'm Too Leise (March 72) : https://youtu.be/0allD9Byt0I - 5:10
5. Musette (January 70) : https://youtu.be/2eoIsu07Wdg - 2:08
6. Blue Bag (Inside Paper) (October 70) : https://youtu.be/4gfnA2Z4Jr0 - 1:16
(Side B)
1. E.F.S. No. 27 (December 70) : https://youtu.be/HEf_OU4t-KQ - 1:47
2. TV Spot (April 71) : https://youtu.be/hP1kcFBAtpg - 3:02
3. E.F.S. No. 7 (September 68) : https://youtu.be/TzVQkBIadQY - 1:05
4. The Empress and the Ukraine King (January 69) : https://youtu.be/jrK8RGNYljw - 4:40
5. E.F.S. No. 10 (January 69) : https://youtu.be/JGnwQzIFFpg - 2:01
6. Mother Upduff (May 69) : https://youtu.be/aVOtu3j1FxI - 4:28
7. E.F.S. No. 36 (May 74) : https://youtu.be/zf6LiTmFpYg - 1:55
(Side C)
1. Cutaway (March 69) : https://youtu.be/UWLLcrqJkWU - 18:49
2. Connection (March 69) : https://youtu.be/p9IvTeIqjJI - 2:20
(Side D)
1. Fall of Another Year (August 69) : https://youtu.be/EIKOpfuFcd0 - 3:20
2. E.F.S. No. 8 (November 68) : https://youtu.be/qilB-wOrF7g - 1:37
3. Transcendental Express (July 75) : https://youtu.be/81pyWHej9H4 - 4:37
4. Ibis (September 74) : https://youtu.be/LGDJgf2qb_4 - 9:19
[ Personnel ]
Holger Czukay - bass guitar, tape effects
Michael Karoli - guitar, violin, shehnai on track A3
Jaki Liebezeit - drums, percussion, winds on tracks A4, B3, B5, D1
Irmin Schmidt - keyboards, synthesizer, schizophone on track B4
Damo Suzuki - vocals on tracks A2, A4, A6, B1, B2
Malcolm Mooney - vocals on tracks B4, B6, C2, D1
(Original United Artists "Limited Edition" LP Front Cover)
となると、入門編としてはあまりに多彩な楽曲が詰め込まれているので、せめて2、3枚レギュラー・アルバムを聴いてからでないとバンドについてまとまったイメージがつかめず、このアウトテイク集の面白さも単なる散漫さと聴こえてしまうかもしれない。曲ごとに録音年月の記載があるが、カンは1968年5月結成、夏からマルコム・ムーニーがヴォーカルで参加し、69年いっぱいで脱退する。70年初頭からダモ鈴木をヴォーカルに迎え、ダモは74年8月いっぱいで脱退。以後は創立メンバー4人で活動する。ヴォーカル入りのクレジットのある曲が全19曲中9曲しかないが、実際はインスト曲でもマルコムやダモの声が聴こえる。C1は記載通りの録音時期として前半ではマルコムの声が聴こえるが、後半はダモのヴォーカリゼーションになるからクレジットを鵜呑みにできない。ちなみにC1は『Soon Over Babaluma』収録曲「Dizzy Dizzy」の最初期テイクだろう。D4はCDではアルバムを1CDに収めるために5:00に短縮されているが、やはり同曲の別テイクになる。他にもA4を始めとしてヴァイオリンが聴こえる曲があり、これはミヒャエル・カローリが弾いていると思われる。
(Original Harvest "Unlimited Edition" Liner Cover)
ダモ時代のアルバムにもコンパクトな名曲はいくつも上げられるが、アレンジ面で決定ヴァージョンができた時点で名曲化したとも言えて、アウトテイク段階ではまだ焦点が定まっていない印象をここでのテイクからは受ける。顕著なのは、アルバム収録の2分26秒ヴァージョンのリンクが引けなかったA2だろう。これは先に36分36秒の未編集テイクをご紹介したが、今回引いたリンクの15:12~の2:26秒がアルバムに抜粋収録されている。「公害の町です、どこへ逃げましょう~」と歌いだしているところからで、確かにこの部分を抜粋したセンスは鋭い。この曲は軽いレゲエから始まり、抜粋箇所前後でリズム・パターンが変化して、後半はヘヴィ・ロックに展開していく。丁寧に編集して展開をすべて圧縮してもアルバム片面、18分近い長さになると思われ、だがそれほどの曲ではないと判断されたか、どっちみち録音後すぐにダモが脱退してしまったのでレギュラー・アルバム採用曲の候補にしようがなかった。この曲は公害と水俣病、漁業汚染問題を日本語で歌っているが、読経から能楽(もどき)に変化するB1では日本語で「いつも~のように~えるえすでぃ~」と歌っている。どちらも当時日本のレコード・レーベルでは歌えなかった内容だろう。
(Original United Artists "Limited Edition" LP Liner Cover)
そうしたカンの発想がよくわかるのも『Unlimited Edition』の面白さになっており、アルバムの半分は未発表曲のうちの完成品、もう半分は素材集というバランスもとれている。カンが後に発表したアウトテイク集/未発表録音には『Delay 1968』1981、『Can Live』1999、『The Lost Tapes』2012があるが、バンド解散後のリリースでもあり、マルコム時代に絞った『Delay 1968』はまだしも『Can Live』も『The Lost Tapes』もコンセプトの稀薄な寄せ集めにすぎる。寄せ集めではあるにせよ、バンド存続中のリリースだった『Unlimited Edition』は寄せ集めの意図が明快な、しっかりとしたコンセプトを持った作品になっている。2枚組アルバムとしての発売は『Landed』1975の後になったが、『Soon Over Babaluma』に続く第7作として、カン黄金時代の掉尾を飾るだけの内容を備えている。このアルバムがあるとないとでは、初期~中期のカンの全体像はだいぶ変わってしまうと思われる。