時々、前々から考えてたんだけどさ、とパトロール中の連絡地点に集合すると、カレーパンマンが空中であぐらをかきながら言いました、おれたちってどうしていつもジャムおじさんの言いなりにならなきゃいけないわけ?言いなり?アンパンマンはまったくそんなことは考えたことがなかったのでびっくりしました。カレーパンマンはたまに羽目を外す時はありますが、正義の味方の仲間どうし気持は通じあっていたはずです。アンパンマンは困惑し、だってジャムおじさんはぼくたちを作った人で、ジャムおじさんが教えてくれることは正義に乗っ取ったことばかりじゃないか。ぼくたちは言いなりなんじゃなくて、ジャムおじさんと同じ正義を守ろうとしているんだよ。
そこなんだな、とカレーパンマン、しょくぱんまんはどう思う?どう思うというと?正義と、ジャムおじさんと、おれたちとジャムおじさんの関係についてさ。しょくぱんまんはう、っと詰まりました。しょくぱんまんはプライドが高いので他人には同意しか求めないのですが、温厚な性格なので他人から同意を求められると反論できないのです。
カレーパンマンがジャムおじさんと自分たちの間には正義に対するスタンスにおいて明らかに溝がある、と言おうとしている、それを問いかけのかたちでアンパンマンやしょくぱんまんから引き出して同意させようとしているのはわかりますが、この場合もっとも無難に済ませるにはカレーパンマンの問いを適当に受け流して、問いかけ自体をあやふやにするのがいちばんでしょう。カレーパンマンは起源はインドですが性格は江戸っ子気質なので、三歩歩けば忘れるというか、宵越しの金は持たないというか、要するに深追いはしないのが男の美学と心得ているような面があります。
誰に似たんだろう、としょくぱんまんは思いました。少なくともアンパンマンには似ていない。しょくぱんまんはトースト山で生まれましたが、アンパンマンとカレーパンマンはジャムおじさんが作ったんだから兄弟そのもので、しかしそれを言うならメロンパンナちゃんやクリームパンダちゃんもいる。いや、問題はカレーパンマンの性格形成ではなくて、としょくぱんまんは問題に立ち返りました。
どうしてだい?としょくぱんまんは軽く受けました。ジャムおじさんは前からあんな人だし、それで困ったことなんてないじゃないか。なら訊くけどさ、とカレーパンマン、性感ていったい何なんだよ?
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蜜猟奇譚・夜ノアンパンマン(17)
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