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Eric Dolphy - Conversations (Fred Miles, 1963)

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Eric Dolphy - Conversations (Fred Miles, 1963) Full Album : https://www.youtube.com/playlist?list=PLZ_Li2NMzH0xtz3LOx88aCW57D_xWY3UQ
Recorded in NYC, July 1, 1963(B2), NYC, July 3, 1963(A1,A2,B1)
Released Fred Miles, FM308, 1963(Private Press) Re-Released Vee-Jay VJLP 2503 "The Eric Dolphy Memorial Album" 1964

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(Side A)
1. Jitterbug Waltz (Waller,Manners,Green) - 7:17
2. Music Matador (Lasha,Simmons) - 9:35
(Side B)
1. Love Me (Young,Washington) - 3:22
2. Alone Together (Dietz,Schwart) - 13:36
[Personnel]
Eric Dolphy - alto saxophone (B1), bass clarinet (A2,B2), flute (A1,B2)
Woody Shaw - trumpet (A1)
Prince Lasha - flute (A2)
Clifford Jordan - soprano saxophone (A2)
Sonny Simmons - alto saxophone (A2)
Bobby Hutcherson - vibraphone (A1)
Eddie Khan - bass (A1)
Richard Davis - bass (A2,B2)
J.C. Moses - drums (A1)
Charles Moffett - drums (A2)  

 プレスティッジからの『アウトワード・バウンド』1960、『アウト・ゼア』1960、『ファー・クライ』1961、『アット・ファイヴ・スポットVol.1』1962が生前にリリースされたエリック・ドルフィーの全アルバムで、プレスティッジが権利を持つ1960年~1961年録音の残り7枚、アラン・ダグラス・プロダクションが買い取った2枚(63年録音)はお蔵入りとなったが、それらはドルフィーが急逝(64年6月)する4か月前にブルー・ノート・レーベルで制作され、結果的に没後発表になり大反響を呼んだ渾身の力作で大傑作『アウト・トゥ・ランチ』1964の成功に便乗して次々と没後発表された、というのが一応は概括と言ってよい。だがプレスティッジから没後発表された全3枚の『イン・ヨーロッパ』のうち1枚分はデンマークのデビュー社から1962年にひっそりとリリースされており、内容的にドルフィーの自主制作アルバムをアラン・ダグラスが買い取ったと見られるアルバム2枚分のマスター・テープから1枚分は『カンヴァセーションズ』1963としてフレッド・マイルス・レーベルから限定少部数プレスされ短期間発売されていたらしい。
 フレッド・マイルス盤は個人名のレーベルだから限りなくプライヴェート・プレスに近いリリースだったようで、プレスと流通はシカゴの黒人音楽レーベルのヴィー・ジェイに委託されていた。ヴィー・ジェイは1963年にイギリスの新人白人バンドのファースト・アルバムの配給契約を結んでいたが、マイナー・レーベルのプロモーション力では全然売れなかった。翌1964年、イギリスでの大ブレークにアメリカでも大手キャピタル・レーベルがセカンド・アルバム以降の配給に乗り出し、ヴィー・ジェイは1964年いっぱいはファースト・アルバムとシングルの発売権があったのでレーベル始まって以来の大儲けになる。そのイギリスの新人バンドがザ・ビートルズだった。

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 (Original Vee-Jay "The Eric Dolphy Memorial Album" LP Liner Cover)
 ドルフィーは急逝して『アウト・トゥ・ランチ』が発表されるとすぐに「ダウン・ビート」誌のジャズの殿堂入りにノミネートされたので(64年度の殿堂入り受賞者になる。生前の不遇を知るヨーロッパのジャズ・ジャーナリズムからは手のひらを返したようなアメリカ本国での評価にブーイングが上がった)、プレスティッジからはお蔵入りライヴ盤の連続リリース、ヴィー・ジェイからもフレッド・マイルス盤が豪華ゲートフォールド・ジャケットで新装改題発売されることになった。1964年度ダウンビート・マガジン「ジャズの殿堂」ノミネート、『ジ・エリック・ドルフィー・メモリアル・アルバム』がそれで、ビートルズ景気があったからこそヴィー・ジェイでは異例な豪華ジャケット仕様にできたのだろう。ドルフィーの急逝とビートルズの全米ブレークが1964年という同年になったのは、歴史的な転換を感じないではいられない。仕組んだようによくできている。

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 (Original Vee-Jay "The Eric Dolphy Memorial Album" LP Gatefold inner sleeve)
 ゲートフォールド・ジャケットだから見開きの内側にライナー・ノーツと各種楽器を演奏するドルフィーのポートレート写真が散りばめてある。ドルフィーの名声と人気が確立したためヴィー・ジェイ盤は好セールスを記録し、『ジ・エリック・ドルフィー・メモリアル・アルバム』は各国盤と再発盤が途切れないロングセラー・アルバムになった。マニアのためにフレッド・マイルス盤『カンヴァセーションズ』仕様でヴィー・ジェイから再プレスされることもあった。だがドルフィー生前には『カンヴァセーションズ』はマニアがリリースした(アラン・ダグラスから権利を買ったか、ダグラス・プロダクション関係者かと思われる)自主制作アルバムでしかなく、ジャズ・ジャーナリズムはおろかドルフィーさえも発売を知らなかったかもしれないアルバムだったと思われる。

 そういう経緯で発売されたアルバムだからどこまでドルフィー自身の編集によるものか確実なことは言えないが、『カンヴァセーションズ』は後にアラン・ダグラス・プロダクションから発売される『アイアン・マン』とともに、アルバム2枚分の同一セッションから選曲・編集されたアルバムだった。『カンヴァセーションズ』と『アイアン・マン』に曲の重複はない。『カンヴァセーションズ』のB面はB1『ラヴ・ミー』、B2『アローン・トゥゲザー』だが、『メモリアル・アルバム』ではB1『アローン・トゥゲザー』、B2『ラヴ・ミー』となっている。この無伴奏ソロとベースとのデュオによるB面は1987年になってドルフィーのプライヴェート録音から編集された発掘アルバム『アザー・アスペクツ』(ブルー・ノート、録音1960~1962)から発展したものだった。
 この『カンヴァセーションズ』『アイアン・マン』セッションの全容は最近ようやく日付とメンバーが特定された。それでもドラムス入りの曲はJ.C.モーゼスかチャールズ・モフェットか特定できないという説もあるらしく、63年7月1日のリチャード・デイヴィスとのデュオ録音、7月3日の若手ミュージシャンとの大人数録音(編成は曲ごとに異なる)に分かれているのは確かだが、マスター・テープのマトリックス番号がないため曲の録音順は特定できない。2枚のアルバムに収録された以外に未発表曲があるか(おそらくない)、没テイクはあったか(さすがに没テイクはあったが、破棄されたと思われる)、その辺も確実なことは言えない。
[Eric Dolphy / Conversations & Iron Man Sessions]
(First Session)
1. Alone Together
2. Come Sunday (Printed as Some Sunday)
3. Ode To Charlie Parker (Printed as Ode To C.P.)
Eric Dolphy (bass clarinet, flute)
Richard Davis (bass)
NYC, July 1, 1963
(Second Session)
1. Jitterbug Waltz
2. Music Matador
3. Love Me (Eric Dolphy only)
4. Burning Spear
5. Iron Man
6. Mandrake
Eric Dolphy (alto saxophone, bass clarinet, flute)
Woody Shaw (trumpet - expect 1, 2, 3)
Prince Lasha (flute -2, 4)
Clifford Jordan (soprano saxophone -2, 4)
Sonny Simmons (alto saxophone -2, 4)
Bobby Hutcherson (vibraphone -1, 4, 5, 6)
Eddie Khan (bass -1, 4, 5, 6)
Richard Davis (bass -2, 4, 5, 6)
J.C. Moses (drums -1, 4, 5, 6)
Charles Moffett (drums -2)
NYC, July 3, 1963

 7月1日セッションの1、7月3日セッションの1~3が『カンヴァセーションズ』、7月1日セッションの2と3、7月3日セッションの4~6が『アイアン・マン』に収録されている。3日セッションは編成が入り組んでいるので大編成のものからメンバーを引き算していけば(または小編成から足し算していけば)録音順が割り出せそうだが、微妙に矛盾が生じてすっきり断定できない。ジョーダンやデイヴィスは親友、他の若手メンバーは全員ドルフィーを尊敬する新人ばかりなので、7月3日セッションでは自分の出番のない曲でも全員がスタジオに残っていたと思われる。この人数では全員揃ったリハーサルはできなかっただろうし、メンバーから適材適所を考えても実際スタジオ入りしてワンコーラス合わせると編成の変更を考え直す場合もあっただろう。無伴奏アルトサックス・ソロの『ラヴ・ミー』など7月1日のデュオ・セッションで収録すれば良いものだが、仲間に囲まれて録音したかったのだろうと微笑ましく思う。
 後に大成するウディ・ショウやクリフォード・ジョーダン、当時ジャッキー・マクリーンのバンドに在籍したトニー・ウィリアムズとともに『アウト・トゥ・ランチ』のキー・パーソンとなるボビー・ハッチャーソンやドルフィーとの最多共演ベーシスト(チャールズ・ミンガス除く)リチャード・デイヴィス、当時の尖鋭ジャズ・シーンを担ったエディ・カーン(やはり当時ジャッキー・マクリーンのバンドに在籍し、4月に『ワン・ステップ・ビヨンド』を録音したばかりだった)やJ.C.モーゼスと較べて、ソニー・シモンズとプリンス・ラシャの2アルトサックス奏者(フルート持ち替え)は知名度が低いが、この二人はロサンゼルス時代のドルフィーの後輩で、2アルト・コンビでニューヨークに進出してきたばかりだった。単独作も共同作品もあるが、意欲的な姿勢は買えるが出来は異色作を出ない(特にラシャ)きらいがある。シモンズの単独作はESP盤、コンビ作はコンテンポラリー盤がCD再発されている。当時アメリカ留学中だった渡辺貞夫(フルートも吹く)の自伝では、アメリカでもひどいジャズマンがいる、という例にプリンス・ラシャとジュセッピ・ローガンを名指しで上げている。渡辺さんはドルフィーの演奏は聴く機会がなかったようだが、氏ほど当時すでにスタイルを確立していたプレイヤーならドルフィーの演奏を「ひどい」と評しても仕方ない気がする。ラシャやローガンではサックス学習中の学生プレイヤーでも「ヘタクソ」呼ばわりしそうだが、ラシャの『ザ・クライ!』1962やローガンの『ジュセッピ・ローガン・カルテット』1964は発売50年以上経っても聴かれているのだ。

 発売順に『カンヴァセーションズ』から取り上げたが、これは本来『アイアン・マン』と2枚組で聴くべきアルバムとも言える。2in1CDにしても1枚のCDに余裕で入るので、パブリック・ドメイン作品になってからはパブリック・ドメイン専門再発レーベルからカップリング発売もされている。ドルフィー自身による曲順の指定が残っていれば良かった。おそらくキャッチーな曲(演奏はともかく、全曲スタンダード)から先に『カンヴァセーションズ』が編まれ、残りが『アイアン・マン』になった。一応後日発売予定の『アイアン・マン』分を考慮してか、『カンヴァセーションズ』も7月1日セッションと7月3日セッションからバランス良く選曲したものになっている。  
 結果、今日の評価では『アイアン・マン』五つ星、『カンヴァセーションズ』四つ星というのがほぼ確定しており、全5曲中ドルフィーのオリジナルが3曲あり、大編成で攻撃的な曲とメランコリックなデュオ曲の釣り合いのとれた『アイアン・マン』に較べて、スタンダード曲の無伴奏アルトサックスとデュオ曲がB面全面、さらに能天気なファッツ・ウォーラーのワルツ曲とシモンズ&ラシャのカリプソ風オリジナルでドルフィーのアルバムでもこれほど陽気なA面はない『カンヴァセーションズ』は分が悪い。おそらく楽しい曲からアルバム化した結果こうなったとも見えるし、ドルフィー自身の選曲にしろフレッド・マイルス選曲にしろA面とB面の対照を狙ったのなら成功している。ただしドルフィーの音楽の本流は『アイアン・マン』収録曲にあり、評価の差はそこに由来するが、この2作のセッションはピアノレス編成によって成功しており、ヴィブラフォンのハッチャーソン入りの曲は『アウト・トゥ・ランチ』を予告するものだった。

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