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Channel: 人生は野菜スープ(または毎晩午前0時更新の男)
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Sandrose - Sandrose (Polydor, 1972)

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Sandrose - Sandrose (Polydor, 1972) : https://www.youtube.com/playlist?list=PLHSHXXAAXeBkR4Q8gMRTGkILoKwxGrNGM
Original Released Polydor-2480 137 (UK, 1972)/ Polydor 2393 030 (France, 1972)
(Side A)
A1. Vision (J.P. Alarcen, B. Christopher) - 5:22
A2. Never Good At Sayin' Good-Bye (B. Christopher, H. Garella) - 3:05
A3. Underground Session (Chorea) (J.P. Alarcen) - 11:05
(Side B)
B1. Old Dom Is Dead (J.P. Alarcen, C. Watson, C. Puterflam) - 4:38
B2. To Take Him Away (J.P. Alarcen, B. Christopher) - 7:02
B3. Summer Is Yonder (J.P. Alarcen, B. Christopher, J. Cockenpot) - 4:46
B4. Metakara (H. Garella) - 3:22
B5. Fraulein Kommen Sie Schlaffen Mit Mir (H. Garella) - 0:32
[Personnel]
Rose Podwojny - Vocals
Jean-Pierre Alarcen - Guitar
Henri Garella - Organ, Mellotron
Christian Clairefond - Bass
Michel Jullien - Drums, Percussion

 このアルバムは大手レーベルのポリドールから英仏同時発売されている。1972年同年発売だが、僅差でイギリス発売が先になった。最初から国際マーケットを狙った作品なのは、クレジット、英語タイトル、英語歌詞で統一されていることからもわかる。力量ある女性ヴォーカルをフロントにすえたプログレッシヴ・ロック風味のハードなオルガン・ロックというスタイルは、イギリスではジュリー・トリスコール&トリニティ、ジュリアンズ・トリートメント、アフィニティ、ルネッサンス、キャタピラーなどの先例があり、ヨーロッパ勢でもサヴェイジ・ローズ、アース&ファイア、フランピー、ジョイ・アンリミテッドなどが成功をおさめていた。だが流行は短期間で終わり、サンドローズのデビュー作は優れたフランス産ブリティッシュ・ロックを指向して内容的には優れたものになったものの、前述の女性ヴォーカル・バンドでも生き残ったのはアース&ファイアとサヴェイジ・ローズ、ルネッサンスくらいだった。タイミングが悪かったというより、70年、せめて71年にデビューしていても前記のバンドは1~2作を残して72年には解散してしまっていたのだから、サンドローズも72年という遅れたデビューではデビュー作1作きりのバンドになることが目に見えていた。
 ルネッサンスにしても女性ヴォーカリストを含めてメンバーを一新し、事実上の同名別バンドとして再デビューしてからようやく商業的成功をおさめた。デンマークのサヴェイジ・ローズ、オランダのアース&ファイアはドメスティックな活動で国民的人気になり、インターナショナル指向の時期は短期間で見切りをつけて長寿バンドになる。70年前後に女性ヴォーカルのオルガン・ロックがちょっとしたブームで、作品的にはどれもなかなか優れたものだったのは記憶される価値があり、今聴いて再評価されるべき要素など大してないが、時代性を考慮すればそれほど古臭くもなく完成度も高いアルバムが残されている。サンドローズ唯一のアルバムはその好サンプルと言えるものだろう。

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 (Original Polydor "Sandrose" LP Liner Cover)
 サンドローズは女性ヴォーカリストのローズをフィーチャーしたエデン・ローズが前身バンドで、エデン・ローズは60年代のビート・グループ然としたバンドだったが、ギターのジャン・ピエール・アラーセンとキーボードのアンリ・ガルラをサウンド面でのリーダーに70年代スタイルのプログレッシヴ・ロックとハード・ロックのスタイルを取り入れ、当時画期的な大手ポリドールからの英米同時デビューを果たした。フランスのロック史では国外レーベルからデビューした初のバンドはピュルサー『ポーレン』(英キングダム・レーベル)というのが定説だが、契約はフランス本国とはいえメジャー・レーベルで英仏同時発売ならサンドローズの方が早い。80年代の再発売後はこのアルバムは日本ではフランスのロックでは10指に入るほど高い人気を獲得した。それも納得のいく出来のアルバムで、まず全曲日本人好みのマイナー・キーのオリジナル曲ばかり。ギターとオルガンのトーン、メロトロンのふんだんな使用はキング・クリムゾンとジェネシスの影響が強く、良くも悪くもブルースやサイケからは完全に切れた70年代スタイルになっている。
 ヴォーカルは熱唱だが癖がなく個性は弱い。ベースとドラムスも堅実な腕前で、ドラムスは初期クリムゾンを研究しているだろう。ギターとキーボードはセンスもテクもあり、バンドとしてはピュルサーやモナ・リザより上手く、アトールやアンジュに劣らない。曲が粒揃いでアレンジが綿密、かつ器楽アンサンブル・パートもたっぷり展開しているため、決して力量がないわけではない女性ヴォーカルがサウンドに埋没してしまったきらいはある。

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 (Original Polydor "Sandrose" LP Liner Cover Personnel Credits)
 出来もいいから長年の愛聴に耐えるし、今後もフランスの70年代ロックの定番として聴き継がれていく作品だと思うが、当時の女性ヴォーカル・オルガン・ロックのアルバムではジュリアンズ・トリートメント『タイム・ビフォー・ジス』(英70)、キャロル・グライムス&デリヴァリー『フールズ・ミーティング』(英70)、ジョイ・アンリミテッド『バタフライ』(独71)、アース&ファイア『アムステルダムの少年兵』(蘭72)ほど時代性も込みでリスナーの心をとらえるアルバムとまでは言えない。それは演奏力ではピュルサーやモナ・リザ以上だが、プロとしてはギリギリのテクニックでオリジナリティに勝負を賭けているピュルサーらにバンドとしての存在感ではかなわないのと同じで、女性ヴォーカルのオルガン・ロックとして見てもそつのなさ、インターナショナルな仕上がりでは上等だがイマジネーションの広がりには意外に乏しいと言える。
 それが結局サンドローズのオリジナリティの稀薄さにもなっていて、前記の女性ヴォーカル・バンドは洗練の度合いではサンドローズよりだいぶ古臭い。そういう面で時代性を反映している。楽器の音色の好みからヴォーカルの癖までいかにも古い時代のロックという感じがする。オリジナル曲の曲調も今どきのバンドはこんなダサい曲は書かない、というようなものだが、ジュリアンズ・トリートメントもアース&ファイアもそこがいいのだ。感動の焦点がはっきりしている。作り手の感動が素直に聴き手を感動させるのは、その感動が自己陶酔的なものではないからだろう。サンドローズの洗練されたサウンドも自己陶酔的な感動からは生まれてこないものだが、サウンドの完成度と引き換えに決定的な感動を相殺している。名作にもかかわらず1作きりのバンドに終わったのも、そのせいではないかと思えてくる。

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