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Catherine Ribeiro + Alpes - Ame Debout (Philips, 1971)

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Catherine Ribeiro + Alpes - Ame Debout (Philips, 1971) Full Album : https://www.youtube.com/playlist?list=PLC09F574D67B54BAC
Released Philips 6325 180, 1971
Tous les textes sont ecrits par Catherine Ribeiro et mis en musique par Patrice Moullet
(Face A)
1. Ame debout - 7:54
2. Diborowska - 3:39
3. Alpes 1 - 5:46
4. Alpes 2 - 6:22
(Face B)
1. Alpilles - 1:25
2. Aria populaire - 2:09
3. Le Kleenex, le Drap de lit et l'Etendard - 3:28
4. Dingue - 4:36
[Musiciens]
Catherine Ribeiro : chant
Patrice Moullet : cosmophone, guitare acoustique
Claude Thiebault : percussions (percuphone)
Patrice Lemoine : orgue

 ゴダール作品などで女優として知られたカトリーヌ・リベロ(1941~)は60年代初頭からポップスのシングルを出し、やがてフォーク・ロック歌手になっていたが、本格的にロック・バンドを組んでアルバム・デビューしたのは1969年の"Catherine Ribeiro + 2Bis"(LP Festival FLDX487)で、マグマやアンジュよりも早く、ゴングとともに英米ロックの模倣を抜け出し独自のスタイルを打ち出した新しい世代のフレンチ・ロック・バンドの先駆に数えられる。翌1970 にはバンドはアルプと改名してCatherine Ribeiro + Alpes名義で"N.2"を発表(LP Festival FLDX531)。リベロの出産休暇を挟んで第3作"Ame Debout"からバンドはメジャーのフィリップスに移籍し、フィリップスまたはフィリップス傘下フォンタナから1981年の第9作"La Deboussole"までフランスのロック界でゴング、マグマ、アンジュと並ぶ大物として活動した。
 アルプ解散以後のリベロは本格的に伝統的なシャンソン歌手に転身した。シャンソン歌手への転向は成功し、2005年には若手メンバーをバックに久しぶりのアルプ再現コンサートを開き大きな話題を呼び、大盛況とともにライヴ盤も出たが、歌の巧みさはともかく70年代の声の艶や張りは望むべくもなく、若手メンバーもソリッドな現代的サウンドでアルプのレパートリーを再演しており、実演なら感動できたかもしれないが音だけ聴くにはつらいライヴ・アルバムになった。だがそれほどアルプ時代のリベロは伝説化しているということでもある。

 本国で、また英米欧でもユーロ圏の70年代ロックの最重要バンドとされているリベロ&アルプだが、日本ではフレンチ・ロックから5組、または10組を選んでも見過ごされてしまうかもしれない。まず作品の入手が難しい。9作中5作が90年代初頭にフランスのみでCD化されたがほとんど日本に輸入されず、すぐ廃盤になった。2004年にはフランスで4枚組のヒストリー・ボックスが出たが、海外業者による受注取り寄せでしかでまわらなかった。2012年には廃盤CDのうち第2作~第5作が4枚組セットで再発売されたが、日本の輸入盤ショップでは初回入荷分以上の追加オーダーをせず瞬く間に品切れ状態になり、これらはみな90年代の旧規格CD同様即座に法外なプレミアがついた。聴いてみたくても手軽にCDが手に入らないのでは真価を知りようもない。
 ゴング、マグマ、アンジュ、エルドン、タイ・フォン、ピュルサー、アトール、ワパスーらと並べても、ミステリアスな存在感ではエマニュエル・ブーズくらいしか肩を並べるミュージシャンはいないかもしれない。デビューの早さ、アルバムの質の高さ・オリジナリティと作品数、活動期間を総合して見ればリベロ&アルプはフランスのロック・バンドではゴング、マグマ、アンジュと同等か、評価によってはそれ以上の存在とも言える。カトリーヌ・リベロ + アルプのアルバム・リストは以下のようになる。

1969 : Catherine Ribeiro + 2bis (LP Festival FLDX487)
1970 : Catherine Ribeiro + Alpes - N.2 (LP Festival FLDX531)
1971 : Ame debout (LP Philips 6325 180), (CD Mantra 642 091)
1972 : Paix (LP Philips 9101 037), (CD Mantra 642 078)
1974 : Le Rat debile et l'Homme des champs (LP Philips 9101 003), (CD Mantra 642 084)
1975 : Libertes ? (LP Fontana 9101 501), (CD Mantra 642 083)
1977 : Le Temps de l'autre (LP Philips 9101 155)
1979 : Passions (LP Philips 9101 270)
1980 : La Deboussole (LP Philips 6313 096), (CD Mantra 642 088)
2004 : Libertes ? (Long Box 4 CD Mercury 982 36569)
2007 : Catherine Ribeiro chante Ribeiro Alpes - Live integral (double CD Nocturne NTCD 437)
2012 : Catherine Ribeiro + Alpes 4 Albums Originaux : fondamentaux "Catherine Ribeiro + Alpes - N.2", "Ame Debout", "Paix", "Le Rat debile et l'Homme des champs". 4CD en coffret chez Mercury Records 279 506-0


 2004年の4枚組ヒストリー・ボックスと2012年のオリジナル・アルバム復刻4枚セットでほぼリベロ + アルプの全貌と、ポップス/フォーク・ロック歌手時代・シャンソン歌手時代の活動は追えるが、フランスのニコ(1938~1988)と呼ばれることもあるように、この『Ame Debout』1971の作風はニコの『マーブル・インデックス』1969や『デザート・ショワ』1970の作風に近い。だがリベロ + アルプの第1作『Catherine Ribeiro + 2Bis』が1969年、第2作『N.2』が1970年だから偶然の類似で、共通するのはポルトガル移民出自のリベロ、東欧国籍でドイツ生まれのニコのジプシー性だろう。ただしニコの音楽がリズムから推進性をほとんど排除しているのに対し、リベロ + アルプはもっと大胆なグルーヴ感を持っており、たまたま産休明けでリズム面では静的な『Ame Debout』を紹介することになってしまったが最高傑作と名高い次作『Paix』1972では再び『N.2』以来の躍動的なリズム・アレンジに戻り、74年の『Le Rat debile et l'Homme des champs』と75年『Libertes ?』の2作は完成度の高さ・サウンドの充実では『Paix』をしのぐ。
 B1がインスト、B2がアルプの音楽的リーダー、パトリス・ムーレが歌っているが、フランスのロックはイタリア同様ヴォーカルの比重が高い。当時ドイツや日本のロックでは英語詞のものが多く、インストルメンタルのものも多かったが、歌曲大国イタリアやフランスでは基本的に自国語で歌うのがロックでも本流になった。アンジュの影響力がゴングやマグマより段違いに高いのはその点にあり、リベロ + アルプが高い人気を保ったのもそこにある。サウンド面で最高の達成を示したのが『Le Rat debile et l'Homme des champs』と『Libertes ?』の2作と思え、特に後者は同年発表の新人アトール、ピュルサーのデビュー作とは貫禄の違いを見せつける傑作だが、実績に反してCDの廃盤状態が長いのはどういうことだろうか。
 アルプの特異なサウンドを特徴づける謎の楽器パーキュフォンとコズモフォンについては、長くなるので次回リベロ + アルプのアルバムをご紹介する時に解説いたします。他のロックのアルバムでは聴けない変な音が鳴り続けている、それがパーキュフォンとコズモフォンです。

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