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Channel: 人生は野菜スープ(または毎晩午前0時更新の男)
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Hawkwind - PXR5 (Charisma, 1979)

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Hawkwind - PXR5 (Charisma, 1979) Full Album : https://www.youtube.com/playlist?list=PLWfGw2maX1M7sl2-Ot2bdREA0jTi7FONR
Recorded live at 29 Sep.1977 (tracks B1,B2), recorded live at 5 Oct.1977 (track A3), Jan.1978 (tracks A1, A2, B3), Jun.1978 (tracks A4, A5)
Released 15 June 1979, Charisma, CDS4016, UK vinyl/UK#59
(Side A)
1. "Death Trap" (Robert Calvert, Dave Brock) - 3:51
2. "Jack of Shadows" (Calvert, Simon House, Adrian Shaw) - 3:28
3. "Uncle Sam's on Mars" (Calvert, Brock, House, Simon King) - 5:44
4. "Infinity" (Calvert, Brock) - 4:17
5. "Life Form" (Brock) - 1:44
(Side B)
1. "Robot" (Calvert, Brock) - 8:14
2. "High Rise" (Calvert, House) - 4:36
3. "PXR5" (Brock) - 5:39
(Remaster CD bonus tracks)
1. "Jack of Shadows" [live studio version] - 3:40
2. "We Like to Be Frightened" - 2:46
3. "High Rise" [live studio version] - 4:43
4. "Robot" [first studio version] - 9:24
5. "Jack of Shadows" [Adrian Shaw vocal version] - 3:54
6. "High Rise" [alternate vocal mix] - 4:37
7. "PXR5" [alternate intro mix] - 5:40
8. "Quark, Strangeness and Charm" [live 1978] - 2:38
[Personnel]
Robert Calvert - vocals (tracks A1-3,B1,B2)
Dave Brock - guitar, keyboards, vocals (tracks A4,B3)
Adrian Shaw - bass guitar (tracks A2,A3,B1-3)
Simon House - violin, keyboards (tracks A2,A3,B1-3)
Simon King - drums (except A5)

 事実上解散状態だったホークウィンドがカリズマ・レーベルとの契約満了のために『クウォーク、ストレンジネス&チャーム』1977とホークローズ名義の『25年間』1978の間に録音していた未発表曲を手直ししてまとめたアルバム。メンバーは『クウォーク~』と同じで、アルバム制作の途中でサイド・プロジェクトのホークローズが本格化したため未完成・未発表に終わっていたアルバムと思ってもいい。ヴォーカリストで作詞家のロバート・カルヴァートは『25年間』とそれに続くツアーでバンドを脱退しているから、カルヴァートの置き土産曲をリーダーのデイヴ・ブロック(ギター、ヴォーカル)がデイヴィッド・ボウイーのバンドから出戻りのサイモン・ハウス(キーボード、ヴァイオリン)の協力で仕上げたアルバムとも言える。ブロックがヴォーカルのA4、B3、特にブロック単独曲のB3は全面的に再録音された可能性もあるが、カルヴァートのヴォーカル曲 A1、A2、A3、B1、B2はライヴ録音のA3、B1、B2を含み、ベーシック・トラックは最初の録音のままと思われる。
 そんな経緯からは落ち穂拾い的アルバムかと思ってしまうし、ろくにプロモーションもなかったのか全英チャート59位とこれまでの最下位に終わったアルバムだが、これがいいのだ。カリズマからの初作『アスタウディング・サウンズ、アメイジング・ミュージック』1976よりずっと良く、会心作『クウォーク~』に匹敵する。ホークローズのアルバムはストレートなロック色が強い好作で、何より曲が良かったが、『PXR5』は曲の良さでは『クウォーク~』や『25年間』を上回りすらする。

 ホークローズのアルバムでは採用されなかったのは新生ホークウィンドのレトロ・フューチャー路線からホークローズではさらにストリート感を強調したかったからだと思われるが、短いインストA5以外のヴォーカル曲A1~4、B面の全3曲はどれも捨て曲がない。各面ともカルヴァートのヴォーカル曲を先に固めて、A4とB3でブロックのヴォーカル曲を持ってくるのも統一感を生んでいる。A4はスペース・フォーク曲、B3は間奏部分で思いきりハードな変拍子プログレになる曲で、カルヴァートのヴォーカル曲はどれもいいのだがブロックのヴォーカル曲で各面を締めるのが効果的になっている。アナログ時代のアーティストはアルバム構成が上手かった、と今さらながら思わされる。ていねいなアルバム制作というイメージから遠いホークウィンドにしてこの完成度なのだ。
 A面冒頭の『デス・トラップ』は旧メンバーの時点ですでにホークローズのひな型が出来上がっていたのがわかるアグレッシヴな曲で、ホークローズほどソリッドではない分音に重みもある。これは続く『ジャック・オブ・シャドウズ』(ロジャー・ゼラズニイのSF小説『影のジャック』に歌詞のヒントを得たもの)でも言えて、ホークローズの演奏ではもっと軽くなっていただろう。だが風刺的歌詞の『アンクル・サムズ・オン・マーズ』ではスペーシーかつ軽妙なアレンジが聴けて、旧メンバーで完成度の高いテイクが録れた曲はあえてホークローズのアルバムから外していたのかもしれない。カルヴァートの作詞だが、ブロックのヴォーカル曲A4とA面最後のインストA5はアルバムの構成上再録音されたと考えた方が良さそうだ。

 アルバム『PXR5』を佳作たらしめているのはB面の3曲で、特にB1『ロボット』とB2『ハイ・ライズ』はホークウィンド史上でもカルヴァート時代の名曲と言える。『ロボット』はアイザック・アシモフのロボット三原則を歌詞のテーマにし、ディストピア的なレトロ・フューチャー感をサウンド化してこの路線最高の達成を見せる。『ハイ・ライズ』はJ・G・バラードの同名ディストピア小説(荒廃した高層建築都市)をヒントにした歌詞で、カルヴァートの歌詞も"Human zoo, Suicide machine! "とわかりやすく冴えている。2曲ともカルヴァートのヴォーカルはホークウィンド在籍時最高のパフォーマンスで、ここまでやったらノン・ミュージシャンのゲスト参加の域を越えている。『ハイ・ライズ』はサイモン・ハウスの作曲やバンドのコーラスも良く、ホークウィンドもやればできるじゃん、という気がしてくる。
 アルバム最後を飾るアルバム・タイトル曲でブロックのヴォーカル、単独曲の『PXR5』は一言で言えばダサさ一歩手前のハード・プログレ曲で、間奏部の変拍子リフで大暴れするサイモン・ハウスのヴァイオリンが光るが、逆説的に言えばそのダサさギリギリの野暮ったさが当時のアメリカのプログレ・ハード勢(カンサス、スティクス、ボストン、ジャーニーなどなど)とホークウィンドを隔てているのだ。ホークウィンドだって時代につれてサウンドの変遷があるが、売らんかな的に変節したのではなかった。やっているうちにこうなった、という自然さがあり、その策略性のなさがダサさすれすれだったというだけだろう。そして次作ではホークウィンドはまたまたメンバーチェンジを敢行、心機一転チャート15位のヒット・アルバムをものすることになる。

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