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Channel: 人生は野菜スープ(または毎晩午前0時更新の男)
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ピーナッツ畑でつかまえて(73)

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 闇夜のカラスは写真に写らない。ルーシーの弟たちに対する感情は基本的にはだいたいそのようなものでした。ルーシーの暗い人生観では、あらゆる感情が闇夜の黒一色に紛れてしまうのです。それはルーシーの根底にある不信、敵意、狂気そして救いがたい暗さが攻撃性になって横暴な暴走に走ったものでした。
 そして嵐の吹く暗い夜でした。ウッドストックは顔を上げると、いつもの無表情で続きをうながしました。どこまで行ったっけ、と尊大なビーグル犬はふふん、という仕草をしました。ウッドストックは仲間同士とこのビーグル犬にしかわからない、ガラスをひっかくような音声で、かいつまんで説明しました。概略そういうことですよ、とひとしきりキーキー鳴くと、ふたたびビーグル犬とヌケサク鳥の周囲は沈黙に包まれました。その沈黙は沈思におちいらせるよりも、むしろ活発な思考を沈み込ませるようなものでした。何もするな、とその沈黙は語りかけてくるのでした、何も考えるな。
 自害して果てたスヌーピーの遺骸は、日ごとに生前のおもかげを失っていきました。かんかん照りの荒野、しかも夜間は極寒の乾燥地帯では、遺骸の腐敗は進まず、ミイラ化だけが進んで行きました。まず体表面の筋肉が干からび、いわゆる骨と皮の状態になり、それから次第に全身の毛並みが抜けてしまうと、風に吹かれて飛んで行きました。
 スヌーピーの遺骸は毛をむしった調理用のチキンのようになりました。生前のスヌーピーがチキン呼ばわりされたら、自分がチキンなら相手はピッグだと罵り返したでしょう。しかし今のスヌーピーはもはやチキンですらありません。さらに言えばスヌーピーですらなく、遺骸というただの物質です。そこにはかつてスヌーピーというビーグル犬のパーソナリティ(犬をパーソンと呼べるとすれば)が宿っていました。そこにはかつてスヌーピーというビーグル犬のパーソナリティが宿っていました。
 いたのかな?そういうことでいいでしょう、とウッドストックは無言でタイプを打ちました。つまりスヌーピーがパーソナリティを持つビーグル犬でなければ、ウッドストックもまたパーソナリティを持つヌケサク鳥ではあり得ないからです。宿っていました、とウッドストックはもう一度、その箇所を暗誦しました。
 頼もしい秘書に、ビーグル犬は感謝の視線を投げかけようとしました。しかしそこにはすでにウッドストックの姿はありませんでした。

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