年も明けたことだし、大した数を観ているわけではないが、昨2014年度に劇場公開、またはテレビ放映されたアニメ作品からこれは面白い、お薦めできます、といえるものを選んでみた。2013年度は『魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』『ドキドキプリキュア!』ですんなり決まったのと同様に、実際は選んだとも言えないようなもので、『映画クレヨンしんちゃん』の質の高さは定評があるし(ジブリ作品はおろか『ドラえもん』や『ポケモン』『プリキュア』以上に実績と観客からの信頼がある)、『たまこラブストーリー』は京都アニメーション作品『けいおん!』で初監督にしてメガ・ヒットを飛ばした若手女性監督初のアニメ・オリジナルとして十分期待に応えたものだった。劇場公開作品からではこの2作がまず入るだろう。男女全年齢対象なのも好ましい。
・『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』4月19日(土)東宝系公開(通算22作)
「全国329スクリーンで公開され、2014年4月19、20日の2日間の動員29万4,599人、興収3億3,893万200円をあげ、観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第3位となった。これは興行収入13.0億円という好成績を上げた『バカうまっ!B級グルメサバイバル!!』(2013年)の興行対比150.4%にも及ぶ。公開3週目には興行収入10億円を突破した。更に、公開30日目には興行収入15億5404万5700円を記録し、『嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001年)の15億円、『嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!』(2007年)の15.5億円を超え歴代3位にランクインした。さらに公開73日間での累計で観客動員数151万2418人、興行収入17億9074万円を記録し、最終興行収入は18億2000万円だった。
この回の興行成績は、ロボットもの人気の根強さと裾野の広さが裏付けられるものとなった。また、ぴあの調査による初日満足度ランキングでは満足度92.3を獲得し第2位となっている。また、第18回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で優秀賞を受賞。文化庁メディア芸術祭での受賞は『嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』(2002年)以来12年ぶりとなる。審査委員である森本晃司は贈賞理由として『脚本を担当している中島かずきの構成が実に素晴らしく、エンターテインメントの大切な要素が生かされていると感じる』としている。」(ウィキペディアより)
しんちゃん映画では、原恵一監督時代の作品、特に『モーレツ!オトナ帝国の逆襲』と『アッパレ!戦国大合戦』は日本アニメ史上に残る金字塔と名高い。最新作という話題性もあるが、『逆襲のロボとーちゃん』はそれらに並ぶ名作という評価が早くも定着しつつある。来年度の作品の期待値が上がって大変だろう。
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・『たまこラブストーリー』4月26日(土)松竹系公開
「『たまこマーケット』は京都アニメーションの制作による日本のテレビアニメ、およびそのノベライズ作品。テレビアニメは2013年1月より3月まで放送された。全12話。2014年にはアニメ映画による続編『たまこラブストーリー』が公開された。」
「『けいおん!』の監督の山田尚子による完全オリジナルアニメ作品。同じくシリーズ構成に吉田玲子、キャラクターデザインに堀口悠紀子と、『けいおん!』のスタッフが名を連ねている。」
「全国24スクリーンの小規模公開であったが、公開初週の土日2日間成績では動員2万263人、興収3168万8700円で、全国映画動員ランキング(興行通信社調べ)で11位にランクインするなど健闘した。
本作は第18回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で新人賞を受賞した。」(ウィキペディアより)
『けいおん!』のメガ・ヒットに較べれば地味な高校生の恋愛を丁寧に描いた作品だが、作劇術やきめ細かなキャラクター造型では着実に進展が見られる。『けいおん!』がまぐれ当たりのヒット作ではなかった実力が感じられ、淡々とした作風ながら繰り返し観るごとに良さが沁みてくるような作品だろう。山田監督は劇場公開作品は『映画けいおん!』に続く二作目だが、『逆襲のロボとーちゃん』と並んで文化庁芸術祭アニメーション部門を優秀賞で獲得する資格は十分あったのではないか。
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単発テレビ放映作品では、西尾維新原作・シャフト制作=新房昭之総監督(『魔法少女まどか☆マギカ』)の『物語』シリーズは2009年の『化物語』以来『偽物語』『猫物語(黒)』「セカンドシーズン」連作とテレビ放映されてきたが、「セカンドシーズン」の掉尾を飾る『花物語』はシリーズでもシリアスな独立性の強い、全シリーズ中屈指の傑作と高い評価を得た。2014年大晦日には「ファイナルシーズン」三部作の開始となる『憑物語』が一挙放映されたが、定本と言うべきソフト(ディスク)化は2月~3月になるので、今後放映されるファイナルシーズンの続編と併せて2015年度の作品に繰り下げたい。『憑物語』についてはちかぢかテレビ視聴レビューを書きます。
・『花物語』8月16日(土)TOKYO MX-TV他にて全5話一挙放映
「〈物語〉シリーズ セカンドシーズン
2013年7月より同年12月(一部2014年1月)にかけてTOKYO MXほかにて放送された。全26話(総集編3話を含む)。『花物語』のみ2014年8月16日に全5話が一挙放送。」
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2014年最高の作品と推奨したいのは、2013年~2014年の2クールにまたがって完結したテレビ放映作品で、アニメ専門誌『New Type』でTV部門年間作品賞を獲得した人気作『キルラキル』になる。エヴァンゲリオン以来のロボットアニメで新たな革新性を評価された『天元突破グレンラガン』のスタッフによるものだ。タイトルやディスク・パッケージのヴィジュアルではどんな内容か見当もつかないが、学園番長バトルマンガの定石を借りて少女番長をの抗争を描き、戦闘服に変型するセーラー服(人格があり、生きている素材で作られている知的生命体)に仕組まれたSF設定が次第に惑星侵略レヴェルのスケールと明らかになるとんでもないアイディアが軸になっている。戦闘服モードになるとこの服は着用者の鮮血をエネルギー源とする物騒な代物なのだ。たぶんこの説明では何がなんやらだが、徹底して異常なインパクトを追求した結果超怒級で爽快なエンターテインメント作品に成功している。スケバンバトルで今後この作品を超えるものを作り出すのは難しいだろう。難を上げると、アイディアとしては理詰めなのを映像表現で強引に押し通した観があり、同じ手は今後利かないような作風でもあることかもしれない。ネタバレになるので触れないが、発想自体はこれ以上繰り返すと二番せんじになりかねないパターンを踏襲している。ただし秀逸なひねりによってこの作品は類型性を感じさせず、2014年度テレビ放映アニメの傑作になっており、長く記憶される作品になるだろう。また、この作品は放送コードぎりぎりの過激な内容がアニメならではの表現によってエンターテインメント作品として成立しており、その意味でもアニメ史に残る価値がある。
・『キルラキル』2013年10月4日(金)~2014年3月28日(金)TBS-TV他にて全24話放映
「[受賞歴]
・Newtype×マチ★アソビ アニメアワード2014
・キャラクターデザイン賞:すしお
・脚本賞:中島かずき
・サウンド賞
・作品賞(TV部門)」(ウィキペディアより)
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以上、はなはだ簡単ながら2014年日本アニメのベスト3+No.1を選んでみた。ヒット実績・作品評価ともに、これだけあれば2014年度のアニメ界はなかなかの成果を上げたと言えるだろう。いずれもすでにディスク化されているから、サイトで予告動画などをご覧いただくなりレンタル店ででも手に取っていただきたい。『たまこラブストーリー』はともかく、面妖な吸引力がたちこめているのは間違いない。
*
最後に文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の2014年度分全体を上げておこう。受賞作中のうち大半は商業作品ではないアート・ムーヴィーだから、商業作品の受賞はかえって異彩を放っているのだ。脚本家の中島かずきさんは『逆襲のロボとーちゃん』と『キルラキル』でダブル受賞になる。興味をお持ちの方はウィキペディアで「文化庁メディア芸術祭アニメーション部門」を調べると、1997年度からの全受賞作を知ることができます。
[文化庁メディア芸術祭アニメーション部門第18回(2014年)]
・大賞
The Wound(短編)
・優秀賞
クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん(劇場公開・長編)
ジョバンニの島(劇場公開・長編)
PADRE(短編)
The Sense of touch(短編)
・新人賞
コップの中の子牛(短編)
たまこラブストーリー(劇場公開・長編)
Man on the chair(短編)
[審査委員会推薦作品]
・長編(劇場公開、TV、OVA)
キルラキル、残響のテロル、ピンポン、蟲師 続章、ブルー 初めての空へ、STAND BY ME ドラえもん、The Stressful Adventures of Boxhead & Roundhead
・短編
想い雲、境界線、森の伝説 第二楽章、Between Times、Blue Eyes - in HARBOR TALE -、Boles、Canis、Decorations、Goodbye Rabbit, Hop Hop、Poker、Portrait、Rainy Days、Something Important、The Swallow、Waiter、Zepo
・『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』4月19日(土)東宝系公開(通算22作)
「全国329スクリーンで公開され、2014年4月19、20日の2日間の動員29万4,599人、興収3億3,893万200円をあげ、観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第3位となった。これは興行収入13.0億円という好成績を上げた『バカうまっ!B級グルメサバイバル!!』(2013年)の興行対比150.4%にも及ぶ。公開3週目には興行収入10億円を突破した。更に、公開30日目には興行収入15億5404万5700円を記録し、『嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001年)の15億円、『嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!』(2007年)の15.5億円を超え歴代3位にランクインした。さらに公開73日間での累計で観客動員数151万2418人、興行収入17億9074万円を記録し、最終興行収入は18億2000万円だった。
この回の興行成績は、ロボットもの人気の根強さと裾野の広さが裏付けられるものとなった。また、ぴあの調査による初日満足度ランキングでは満足度92.3を獲得し第2位となっている。また、第18回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で優秀賞を受賞。文化庁メディア芸術祭での受賞は『嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』(2002年)以来12年ぶりとなる。審査委員である森本晃司は贈賞理由として『脚本を担当している中島かずきの構成が実に素晴らしく、エンターテインメントの大切な要素が生かされていると感じる』としている。」(ウィキペディアより)
しんちゃん映画では、原恵一監督時代の作品、特に『モーレツ!オトナ帝国の逆襲』と『アッパレ!戦国大合戦』は日本アニメ史上に残る金字塔と名高い。最新作という話題性もあるが、『逆襲のロボとーちゃん』はそれらに並ぶ名作という評価が早くも定着しつつある。来年度の作品の期待値が上がって大変だろう。
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・『たまこラブストーリー』4月26日(土)松竹系公開
「『たまこマーケット』は京都アニメーションの制作による日本のテレビアニメ、およびそのノベライズ作品。テレビアニメは2013年1月より3月まで放送された。全12話。2014年にはアニメ映画による続編『たまこラブストーリー』が公開された。」
「『けいおん!』の監督の山田尚子による完全オリジナルアニメ作品。同じくシリーズ構成に吉田玲子、キャラクターデザインに堀口悠紀子と、『けいおん!』のスタッフが名を連ねている。」
「全国24スクリーンの小規模公開であったが、公開初週の土日2日間成績では動員2万263人、興収3168万8700円で、全国映画動員ランキング(興行通信社調べ)で11位にランクインするなど健闘した。
本作は第18回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で新人賞を受賞した。」(ウィキペディアより)
『けいおん!』のメガ・ヒットに較べれば地味な高校生の恋愛を丁寧に描いた作品だが、作劇術やきめ細かなキャラクター造型では着実に進展が見られる。『けいおん!』がまぐれ当たりのヒット作ではなかった実力が感じられ、淡々とした作風ながら繰り返し観るごとに良さが沁みてくるような作品だろう。山田監督は劇場公開作品は『映画けいおん!』に続く二作目だが、『逆襲のロボとーちゃん』と並んで文化庁芸術祭アニメーション部門を優秀賞で獲得する資格は十分あったのではないか。
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単発テレビ放映作品では、西尾維新原作・シャフト制作=新房昭之総監督(『魔法少女まどか☆マギカ』)の『物語』シリーズは2009年の『化物語』以来『偽物語』『猫物語(黒)』「セカンドシーズン」連作とテレビ放映されてきたが、「セカンドシーズン」の掉尾を飾る『花物語』はシリーズでもシリアスな独立性の強い、全シリーズ中屈指の傑作と高い評価を得た。2014年大晦日には「ファイナルシーズン」三部作の開始となる『憑物語』が一挙放映されたが、定本と言うべきソフト(ディスク)化は2月~3月になるので、今後放映されるファイナルシーズンの続編と併せて2015年度の作品に繰り下げたい。『憑物語』についてはちかぢかテレビ視聴レビューを書きます。
・『花物語』8月16日(土)TOKYO MX-TV他にて全5話一挙放映
「〈物語〉シリーズ セカンドシーズン
2013年7月より同年12月(一部2014年1月)にかけてTOKYO MXほかにて放送された。全26話(総集編3話を含む)。『花物語』のみ2014年8月16日に全5話が一挙放送。」
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2014年最高の作品と推奨したいのは、2013年~2014年の2クールにまたがって完結したテレビ放映作品で、アニメ専門誌『New Type』でTV部門年間作品賞を獲得した人気作『キルラキル』になる。エヴァンゲリオン以来のロボットアニメで新たな革新性を評価された『天元突破グレンラガン』のスタッフによるものだ。タイトルやディスク・パッケージのヴィジュアルではどんな内容か見当もつかないが、学園番長バトルマンガの定石を借りて少女番長をの抗争を描き、戦闘服に変型するセーラー服(人格があり、生きている素材で作られている知的生命体)に仕組まれたSF設定が次第に惑星侵略レヴェルのスケールと明らかになるとんでもないアイディアが軸になっている。戦闘服モードになるとこの服は着用者の鮮血をエネルギー源とする物騒な代物なのだ。たぶんこの説明では何がなんやらだが、徹底して異常なインパクトを追求した結果超怒級で爽快なエンターテインメント作品に成功している。スケバンバトルで今後この作品を超えるものを作り出すのは難しいだろう。難を上げると、アイディアとしては理詰めなのを映像表現で強引に押し通した観があり、同じ手は今後利かないような作風でもあることかもしれない。ネタバレになるので触れないが、発想自体はこれ以上繰り返すと二番せんじになりかねないパターンを踏襲している。ただし秀逸なひねりによってこの作品は類型性を感じさせず、2014年度テレビ放映アニメの傑作になっており、長く記憶される作品になるだろう。また、この作品は放送コードぎりぎりの過激な内容がアニメならではの表現によってエンターテインメント作品として成立しており、その意味でもアニメ史に残る価値がある。
・『キルラキル』2013年10月4日(金)~2014年3月28日(金)TBS-TV他にて全24話放映
「[受賞歴]
・Newtype×マチ★アソビ アニメアワード2014
・キャラクターデザイン賞:すしお
・脚本賞:中島かずき
・サウンド賞
・作品賞(TV部門)」(ウィキペディアより)
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以上、はなはだ簡単ながら2014年日本アニメのベスト3+No.1を選んでみた。ヒット実績・作品評価ともに、これだけあれば2014年度のアニメ界はなかなかの成果を上げたと言えるだろう。いずれもすでにディスク化されているから、サイトで予告動画などをご覧いただくなりレンタル店ででも手に取っていただきたい。『たまこラブストーリー』はともかく、面妖な吸引力がたちこめているのは間違いない。
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最後に文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の2014年度分全体を上げておこう。受賞作中のうち大半は商業作品ではないアート・ムーヴィーだから、商業作品の受賞はかえって異彩を放っているのだ。脚本家の中島かずきさんは『逆襲のロボとーちゃん』と『キルラキル』でダブル受賞になる。興味をお持ちの方はウィキペディアで「文化庁メディア芸術祭アニメーション部門」を調べると、1997年度からの全受賞作を知ることができます。
[文化庁メディア芸術祭アニメーション部門第18回(2014年)]
・大賞
The Wound(短編)
・優秀賞
クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん(劇場公開・長編)
ジョバンニの島(劇場公開・長編)
PADRE(短編)
The Sense of touch(短編)
・新人賞
コップの中の子牛(短編)
たまこラブストーリー(劇場公開・長編)
Man on the chair(短編)
[審査委員会推薦作品]
・長編(劇場公開、TV、OVA)
キルラキル、残響のテロル、ピンポン、蟲師 続章、ブルー 初めての空へ、STAND BY ME ドラえもん、The Stressful Adventures of Boxhead & Roundhead
・短編
想い雲、境界線、森の伝説 第二楽章、Between Times、Blue Eyes - in HARBOR TALE -、Boles、Canis、Decorations、Goodbye Rabbit, Hop Hop、Poker、Portrait、Rainy Days、Something Important、The Swallow、Waiter、Zepo